著者 : 宮部みゆき
化け猫、河童、そして山姥ーー狂気に塗れた苦界を生き抜く女と、化生の者どもが織りなす怪奇譚。江戸は神田三島町にある三島屋の次男坊富次郎は、変わり百物語の二代目聞き手。飼い主の恨みを晴らす化け猫、命懸けで悪党壊滅に挑む河童、懺悔を泣き叫ぶ山姥が登場する客人の身の上話を聞いている。一方、兄・伊一郎の秘密の恋人が出奔。伊一郎の縁談を巡って、三島屋は大騒動に巻き込まれてしまう……。
万作・おたま夫婦が継いだ千吉親分の文庫屋が、放火により火事になったーー。 下手人は、台所女中のお染だというが、親分の家でお染に世話になった北一は信じられず、その疑いを晴らすべく奔走する。 さらに、焼け出された人たちが過ごす仮住まいでも事件が起きていた……。 そんななか迎えた新しい年。北一は、ある事をきっかけに、三十年近く前に起きた、貸本屋・村田屋治兵衛の妻殺害事件の真相を明らかにしようと決意する。もちろん、湯屋の釜焚きをしている相棒・喜多次の協力は欠かせない。二人は、この難事件を解決することができるのか。 「ぼんくら」シリーズ(講談社文庫)の人気キャラクター「おでこ」も、二人を助けてくれる存在として登場。 岡っ引き見習いの北一と、謎多き相棒・喜多次の「きたきた」コンビによる物語で、著者が「作家生活三十五年、集大成のシリーズ」と位置付ける時代ミステリー第三弾!
行く当てのない女達のため土から生まれた不動明王。悲劇に見舞われた少女の執念が生んだ家族を守る人形。描きたいものを自在に描ける不思議な筆。そして、人ならざる者たちの里で育った者が語る物語。 恐ろしくも暖かい百物語に心を動かされ、富次郎は決意を固める──。
宮部みゆきが深い洞察力と鑑賞力で12の俳句から紡ぎだした玉手箱。社会派からホラー、SFに至るまで、あらゆるジャンルに足跡を残してきた宮部文学の新たなる挑戦! 1. 枯れ向日葵呼んで振り向く奴がいる 2. 鋏利し庭の鶏頭刎ね尽くす 3. プレゼントコートマフラームートンブーツ 4. 散ることは実るためなり桃の花 5. 異国より訪れし婿墓洗う 6. 月隠るついさっきまで人だった 7. 窓際のゴーヤカーテン実は二つ 8. 山降りる旅駅ごとに花ひらき 9. 薄闇や苔むす墓石に蜥蜴の子 10. 薔薇落つる丑三つの刻誰ぞいぬ 11. 冬晴れの遠出の先の野辺送り 12. 同じ飯同じ菜を食ふ春日和
江戸は神田三島町にある袋物屋の三島屋は、風変わりな百物語をしていることで知られている。 語り手一人に聞き手も一人、話はけっして外には漏らさず、「語って語り捨て、聞いて聞き捨て」これが三島屋の変わり百物語の趣向である。 従姉妹のおちかから聞き手を受け継いだ三島屋の「小旦那」こと富次郎は、おちかの出産を控える中で障りがあってはならないと、しばらく百物語をお休みすることに決める。 休止前の最後の語り手は、商人風の老人と目の見えない彼の妻だった。老人はかつて暮らした村でおきた「ひとでなし」にまつわる顛末を語りだすーー。
江戸で噂の、「持つ者は子宝に恵まれる」という宝船の絵。しかし、赤子を失ったある家の宝船の絵から、なぜか弁財天が消えたという。 時を置かずして、北一もよく知る弁当屋の一家三人が殺される。現場で怪しげな女を目撃した北一は、検視の与力・栗山の命を受け、事件の真相に迫っていく。 本書は、江戸深川の富勘長屋に住み、小物を入れる文庫を売りつつ岡っ引き修業に励む北一が、風呂屋の釜焚きなのに、なぜかめっぽう強い相棒・喜多次の力を借りながら、不可解な事件を解決していく物語。 北一の文庫づくりを手伝っているのは、欅屋敷の「若」や用人の青海新兵衛、そして末三じいさん。岡っ引き見習いとしての北一を応援しているのが、亡き千吉親分のおかみさんや大親分の政五郎、政五郎の元配下で昔の事件のことをくまなく記憶している通称「おでこ」たちだ。 北一応援団とともに謎解き×怪異×人情が愉しめる、著者渾身の大人気シリーズ第二弾!
「はじめて」は、いつも痛くて、少し優しい。 日本エンターテインメントの最前線&最高峰! 日本を代表する4人の直木賞作家と、“小説を音楽にするユニット”YOASOBIが奇跡のコラボレーション! 小説のテーマは、「はじめて〇〇したときに読む物語」。 これらの小説を原作としたYOASOBIの楽曲が、2022年中に順次配信リリースされます。 「『私だけの所有者』--はじめて人を好きになったときに読む物語」(島本理生) 「『ユーレイ』--はじめて家出したときに読む物語」(辻村深月) 「『色違いのトランプ』--はじめて容疑者になったときに読む物語」(宮部みゆき) 「『ヒカリノタネ』--はじめて告白したときに読む物語」(森絵都) ※文字をやや大きくし、漢字にはルビを多めにふっています。 それぞれの作家のファンはもちろん、全ての世代の方々に楽しんで頂ける、「はじめての」読書にもお勧めしたい小説集になりました。 ■YOASOBIからのメッセージ 4作品全て本当に面白くて、読み終えた時、全作品、計4回「めちゃくちゃ面白かった!」と声に出し、原稿の前で拍手をしました。「はじめての」という一つのテーマから生まれた4つの色とりどりな物語が、それぞれ違うゴールへと向かう様に心が震えました。 (YOASOBI composer Ayase) はじめて読んだ物語なのに、私の奥底に眠っている記憶が呼び起こされるような体験でした。 4つの物語、4つの世界と出会って生まれたこの感動を、まっすぐに歌に乗せられたらと思います。 (YOASOBI vocal ikura) ■作家からのメッセージ 初めての挑戦をたくさん詰め込んだら、むしろ自分の原点とも言うべき、好きな人との物語になりました。恋よりも強い絆で結ばれた「私だけの所有者」にこの短編で出会ってください。 (島本理生) 人は誰でも、その出会いの前と後で人生が変わってしまうような一生モノの出会いの経験があると思います。その一夜を通じて、前の自分にはもう戻れなくなるような、そんなはじめての家出を書きました。この小説もまた、読む前と読んだ後で誰かの何かが変わると信じて、送り出します。 (辻村深月) いつも物語をつくる時は、そのイメージに合った音楽を探すようにしています。ぴったりな音楽が見つかれば、その音楽が私を正しい方向に導いてくれるからです。今回はまず物語が先にあり、そこから音楽が誕生するという企画で、私にはまったく新しい経験に、胸が高鳴っています。 (宮部みゆき) 「はじめての」というお題をいただき、私もはじめての設定にトライしてみました。時空を超える片思いーーこの物語が、読者の皆さんの過去に灯る大事な瞬間とつながってくれますように。 (森 絵都)
江戸は神田の三島屋で行われている変わり百物語。美丈夫の勤番武士は国元の不思議な〈火消し〉の話を、団子屋の屋台を営む娘は母親の念を、そして鯔背な老人は木賃宿に泊まったお化けについて、富次郎に語り捨てる。
可愛らしくもときに怖ろしい、江戸の猫が勢揃い! 守り神としての猫、事件を目撃する猫……いま読んでおきたい女性時代作家が描く珠玉のアンソロジー お店の守り神である木彫りの猫がなくなり、その行方を捜す「猫神さま」(西條奈加)、長屋で一番偉い猫の“サバ”が、夫婦の揉め事を解決する「包丁騒動」(田牧大和)、臆病な火消しの男へ按摩が与えた猫頭巾に込められた恐るべき謎「だるま猫」(宮部みゆき)など、愛らしくも摩訶不思議な存在である江戸の猫にまつわる短編六作を収録。 令和を代表する女性時代作家の共演による珠玉のアンソロジー。
おいしくも切ない味がする、江戸の料理をめしあがれ 蕪汁、桜餅、鮎の塩焼き……いま話題の女性時代作家による絶品アンソロジー 岡っ引きの茂七が、謎めいた稲荷屋台の親父が出す料理をきっかけに事件の真相に迫る「お勢殺し」(宮部みゆき)、菓子屋の跡取り息子なのに、菓子作りが下手な栄吉の葛藤と成長を描いた「餡子は甘いか」(畠中恵)、風邪で寝込んだお勝が本当に食べたかったものとは何かを探る「鮎売り」(坂井希久子)など、江戸の料理や菓子をめぐる短編六作を収録した、思わずお腹がすいてくる時代小説アンソロジー。
大人気<三島屋変調百物語>シリーズ最新刊 江戸は神田の袋物屋・三島屋で続く、一風変わった百物語。 これまで聞き手を務めてきた三島屋主人・伊兵衛の姪のおちかが、めでたく嫁にいき、次なる聞き手は伊兵衛の次男・富次郎に。 気さくで気がよく旨いもの好き、跡取りではないから「小旦那」と自称する富次郎。 おちかが聞き手だったころ、ふとした縁の導きがあって三島屋に入り、百物語の守り役となったお勝。富次郎が幼いころから三島屋に奉公してきた古参の女中、おしま。 この三人で語り手を迎え、新たな変わり百物語の幕が開く。 再会した友が語り始める一家離散の恐ろしい運命(第一話「泣きぼくろ」) 村の女たちが<絶景の丘>に登ってはならぬ理由(第二話「姑の墓」) 妻子を失った走り飛脚が道中めぐりあう怪異(第三話「同行二人」) 異形の屋敷に迷い込んだ者たちを待つ運命(第四話「黒武御神火御殿」) 「語って語り捨て、聞いて聞き捨て」 怖ろしさに凍りつく。愛おしさに心ふるえる。極めつきの怪異と不思議ーー 宮部みゆきのライフワーク、新章突入!
ごめんくださいまし──。宝永七年の初夏、下野北見藩・元作事方組頭の家に声が響いた。応対した各務多紀は、女が連れていた赤子に驚愕する。それは藩内で権勢をほしいままにする御用人頭・伊東成孝の嫡男であった。なぜ、一介の上士に過ぎない父が頼られたのか。藩中枢で何が起きているのか。一夜の出来事はやがて、北関東の小国を揺るがす大事件へと発展していく。作家生活三十周年記念作。
主君・北見重興の押込。下野二万石の小国は、藩主の強制隠居という激震に見舞われた。居城から別邸・五香苑へと移った重興は、元家老の石野織部や主治医にも真実を語らず、座敷牢に籠り、時に少年のように、時に女郎のように振る舞って、周囲を困惑させた。彼は名君主たる人物だったのか。あるいは、非道な殺人者だったのか。謎が深まる中、各務多紀との出会いが、重興の心に変化をもたらす。
ざまをみろ。父を殺したとき、そして、刺客を討ち取ったとき、北見重興が発した言葉。元藩主とは思えぬその言動に、どんな因果が秘められていたのか……。名君と仰がれた今望侯の狂気。根絶やしにされた出土村。城下から相次いで失踪した子ども達。すべての謎は、重興の覚醒とともに真実へと導かれる。ミステリー。サスペンス。そして、歴史。あらゆる技巧が凝らされた「物語の到達点」。
江戸の「シャーロック」半七親分から逃れる術なし。彼は江戸時代における隠れたシャアロック・ホームズであった──。雪達磨の中から発見された死体。通行人を無差別に殺し続ける“槍突き”。江戸の難事件に立ち向かうは、神田三河町に居を構える岡っ引・半七。殺人、怪異、怪談。彼の推理はすべての不可思議に真実の光を当てる。今なお古びない捕物帳の嚆矢にして、和製探偵小説の幕開け。全六十九編の中から宮部みゆきが選んだ傑作集。
ちょっぴり怖い、だからおもしろい。 これぞエンタメ!! 前代未聞の「ミステリー短編バトンつなぎ」 「宮辻薬東宮」(みやつじやくとうぐう) 宮部みゆきさんお書き下ろし短編を辻村深月さんが読み、短編を書き下ろす。その辻村さんの短編を薬丸岳さんが読み、書き下ろし……今をときめく超人気作家たちが“つないだ”ミステリーアンソロジー。 「人・で・なし」宮部みゆき 「ママ・はは」辻村深月 「わたし・わたし」薬丸岳 「スマホが・ほ・し・い」東山彰良 「夢・を・殺す」宮内悠介
元警察犬のマサは、蓮見家の一員となり、長女で探偵事務所調査員・加代ちゃんのお供役の用心犬を務めている。ある晩、高校野球界のスーパースター・諸岡克彦が殺害された。その遺体を発見した加代ちゃん、克彦の弟である進也、そしてマサは事件の真相を追い始めるが…。幅広いジャンルで活躍し、わが国の文壇を代表する作家の一人である宮部みゆきの記念すべき長編デビュー作。