著者 : 宮部みゆき
ほっこりする、でもなぜか心を揺さぶられるミステリーとは!? 本書は、いま人気の女性ミステリー作家による、殺人事件が起きない、「ハートウォーミング・ミステリー」を集めたアンソロジー短篇集。 「ビストロ・パマル」のシェフ・三舟の推理が、思わぬ温かな真相を導く「割り切れないチョコレート」、息子から恋人がストーカー被害に遭っていると相談された探偵が、事件に立ち向かう「鏡の家のアリス」。 そして、駅に伝言を残すことで気晴らしをしていた主人公が、奇妙な騒動に巻き込まれていく「ドルシネアにようこそ」など、読んで癒される、だけど心に深く響く、極上な作品だけを集めたアンソロジー。 すっきりした読後感に、ミステリーの概念が変わること、請け合います。
ぞわりとする、でも読まずにはいられないのが、人間のいやな部分に光をあてた「イヤミス」と言われるミステリー。 本書は、いま旬の女性ミステリー作家による、秀逸の「イヤミス」を集めたアンソロジー短篇集。 ある地方都市で起きた放火事件を通して、自意識過剰な人間の滑稽さを見つめた「石蕗南地区の放火」、過食に走った美人の姉と、姉に歪んだ優越感を覚える妹の姿が鬼気迫る「贅肉」。 また、事故死したはずの兄が生きているのではないかと疑いを抱いた妹の葛藤を描く「おたすけぶち」など、読んで心がざわつく、後味が悪い作品が勢ぞろい。 衝撃の結末を愉しみに、また隠れた逸品を発掘する喜びを味わいたい方におすすめの一冊。
此度の語り手は山陰の小藩の元江戸家老。彼が山番士として送られた寒村で知った恐ろしい秘密とは!? せつなくて怖いお話が満載! おちかが聞き手をつとめる変わり百物語、「三島屋」シリーズ文庫最新刊!
髪結いの伊三次は、独立し所帯を持つために貯めた三十両を盗まれるが、犯人は岡っ引きの留蔵の弟分・弥八だと判明し…(「星の降る夜」)。夫・清兵衛の財布から五両が盗まれたことに気づいたおときは、愛人の松太郎が盗んだと思い、新たに五両を工面するがー(「律儀者」)。魚の棒手振りを商う角次郎は、伊勢屋から千両で鰹を買いたいと持ち掛けられ…(「鰹千両」)など全八編を収録。女性作家による捕物帳アンソロジー。
賭場で捕まった瓢六と捕まえた弥左衛門は、おみち殺しの下手人をあげるべく奔走することにー(「地獄の目利き」)。虚弱だった若旦那が別人のように復調し、手代らは『福の神』の仕業に違いないと顔を見合わせるが…(「茶巾たまご」)。緒方章は師の命で禁書を手に入れるべく加島屋と待ち合わせるが、加島屋は何者かに殺されてしまう(「禁書売り」)など全七編を収録。女性作家になる捕物帳アンソロジー。
杉村三郎vs.“ちょっと困った”女たち。自殺未遂をし消息を絶った主婦、訳ありの家庭の訳ありの新婦、自己中なシングルマザー。『希望荘』以来2年ぶりの杉村シリーズ第5弾!
今多コンツェルン会長の娘である妻と離婚した杉村三郎は、愛娘とも別れ、仕事も失い、東京都北区に私立探偵事務所を開設する。ある日、亡き父が生前に残した「昔、人を殺した」という告白の真偽を調べてほしいという依頼が舞い込む。依頼人によれば、父親は妻の不倫による離婚後、息子との再会までに30年の空白があったという。はたして本当に人殺しはあったのかーー。 表題作の「希望荘」をはじめ計4篇を収録。新たなスタートを切った2011年の3.11前後の杉村三郎を描くシリーズ最新作。 『誰か』『名もなき毒』『ペテロの葬列』に続く人気シリーズ第4弾。
中学3年の尾垣真が拾った中世ヨーロッパの古城のデッサン。分身を描き込むと絵の世界に入り込めることを知った真は、同級生で美術部員の珠美に制作を依頼。絵の世界にいたのは、塔に閉じ込められたひとりの少女だった。彼女は誰か。何故この世界は描かれたのか。同じ探索者で大人のパクさんと謎を追う中、3人は10年前に現実の世界で起きた失踪事件が関係していることを知る。現実を生きるあなたに贈る、宮部みゆき渾身の冒険小説!
江戸は神田の筋違御門先にある袋物屋の三島屋で、風変わりな百物語を続けるおちか。 塩断ちが元凶で行き逢い神を呼び込んでしまい、家族が次々と不幸に見舞われる「開けずの間」。 亡者を起こすという“もんも声”を持った女中が、大名家のもの言わぬ姫の付き人になってその理由を突き止める「だんまり姫」。屋敷の奥に封じられた面の監視役として雇われた女中の告白「面の家」。百両という破格で写本を請け負った男の数奇な運命が語られる表題作に、三島屋の長男・伊一郎が幼い頃に遭遇した椿事「金目の猫」を加えた選りぬき珠玉の全五篇。人の弱さ苦しさに寄り添い、心の澱を浄め流す極上の物語、シリーズ第一期完結篇! 第一話 開けずの間 第二話 だんまり姫 第三話 面の家 第四話 あやかし草紙 第五話 金目の猫
インターネット上に溢れる情報の中で、法律に抵触するものや犯罪に結びつくものを監視し、調査するサイバー・パトロール会社「クマー」。大学一年生の三島孝太郎は、先輩の真岐に誘われ、五カ月前からアルバイトを始めたが、ある日、全国で起きる不可解な殺人事件の監視チームに入るよう命じられる。その矢先、同僚の大学生が行方不明になり…。“言葉”と“物語”の根源を問う、圧倒的大作長編。
失踪した同僚の森永を探す三島孝太郎は、西新宿セントラルラウンドビルで元捜査一課の刑事・都築に出会う。だが、そこで二人を待ち受けていたのは、まさに“怪物”と呼ぶべき存在だった…。“狼”を名乗る謎の美少女・森崎友理子との遭遇。クマー社長・山科鮎子を襲う悲劇。悪意による“物語”が拡散され、汚濁に満ちた闇が日常へと迫る中、正義と復讐に燃える青年は、ある決断を下す。
おまえは後悔するー。度重なる守護戦士の忠告に耳を貸さず、連続切断魔の特定に奔走する三島孝太郎。なぜ、惨劇は起きたのか。どうして、憎しみは消えないのか。犯人と関わる中で、彼の心もまた、蝕まれていく。そうした中、妹の友人・園井美香の周囲で積み重なった負の感情が、新たな事件を引き起こす。都築の、ユーリの制止を振り切り、孝太郎が辿りついた場所。“悲嘆の門”が、いま開く。
「めぐりあい」をテーマに名作短・掌編を精選したアンソロジー。読書への入り口に。旅のお供に。日々のひとときに。人気作家、ベストセラー作家の贅沢な競演。いずれ劣らぬ名作揃い。(解説/吉田伸子)