著者 : 宮部みゆき
ある地方都市で起きた放火事件を通して、自意識過剰な人間の滑稽さを見つめた「石蕗南地区の放火」、過食に走った美人の姉と、姉に歪んだ優越感を覚える妹の姿が鬼気迫る「贅肉」。また、事故死したはずの兄が生きているのではないかと疑いを抱いた妹の葛藤を描く「おたすけぶち」など、読んで心がざわつく、後味が悪いミステリー。人気の女性作家六人の、結末が衝撃的な作品を収録したアンソロジー。
三島屋の黒白の間で行われている変わり百物語。語り手の年齢や身分は様々で、彼らは正しいことも過ちもすべてを語り捨てていく。十三歳の少女は亡者の集う家の哀しき顛末を、絶品の弁当屋の店主は夏場に休業する理由を、そして山陰の小藩の元江戸家老は寒村に潜む鬼の秘密を語る。聞き役に従兄の富次郎も加わり、怪異を聞き積んでいく中でおちかにも新たな出逢いと別れがありー恐ろしいけど面白い三島屋シリーズ第四弾!
髪結いの伊三次は、独立し所帯を持つために貯めた三十両を盗まれるが、犯人は岡っ引きの留蔵の弟分・弥八だと判明し…(「星の降る夜」)。夫・清兵衛の財布から五両が盗まれたことに気づいたおときは、愛人の松太郎が盗んだと思い、新たに五両を工面するがー(「律儀者」)。魚の棒手振りを商う角次郎は、伊勢屋から千両で鰹を買いたいと持ち掛けられ…(「鰹千両」)など全八編を収録。女性作家による捕物帳アンソロジー。
賭場で捕まった瓢六と捕まえた弥左衛門は、おみち殺しの下手人をあげるべく奔走することにー(「地獄の目利き」)。虚弱だった若旦那が別人のように復調し、手代らは『福の神』の仕業に違いないと顔を見合わせるが…(「茶巾たまご」)。緒方章は師の命で禁書を手に入れるべく加島屋と待ち合わせるが、加島屋は何者かに殺されてしまう(「禁書売り」)など全七編を収録。女性作家になる捕物帳アンソロジー。
杉村三郎vs.“ちょっと困った”女たち。自殺未遂をし消息を絶った主婦、訳ありの家庭の訳ありの新婦、自己中なシングルマザー。『希望荘』以来2年ぶりの杉村シリーズ第5弾!
中学3年の尾垣真が拾った中世ヨーロッパの古城のデッサン。分身を描き込むと絵の世界に入り込めることを知った真は、同級生で美術部員の珠美に制作を依頼。絵の世界にいたのは、塔に閉じ込められたひとりの少女だった。彼女は誰か。何故この世界は描かれたのか。同じ探索者で大人のパクさんと謎を追う中、3人は10年前に現実の世界で起きた失踪事件が関係していることを知る。現実を生きるあなたに贈る、宮部みゆき渾身の冒険小説!
固く封じ込めたはずのわだかまりが、どこまでも追いかけてくる。一歩を踏みだすために、人は胸につかえる秘事を吐き出し心の重荷をそっと下ろす。「語ってしまえば、消えますよ」
差配から住人まで全員が悪党の長屋に引っ越してきた新住人をめぐる騒動(「善人長屋」)、人の縁を取り持つ“結び屋”が出合った、見合い相手に不可解な態度を取る娘の哀しき真実(「まぶたの笑顔」)、つらいお店奉公に耐えかねた幼い丁稚に、大旦那さまが聞かせた不思議な話(「首吊り御本尊」)など、書籍未収録作品や書き下ろし作品を加えた時代小説アンソロジー。ほろ苦くも心を揺さぶる珠玉の六作を収録。
棒手振りの魚屋に、鰹を千両で買いたいという奇妙な申し出があり…(「鰹千両」)、幕府直轄の御薬園で働く真葛は、薬種屋から消えた女中の行方を探ってほしいと頼まれるが…(「人待ちの冬」)、商家の妾が主夫婦の息子を柏餅で毒殺した疑いをかけられるが、料理人の季蔵は独自の捜査を進め…(「五月菓子」)など、“捕物”を題材とした時代小説ミステリー。話題の女性作家陣の作品が一冊で楽しめるアンソロジー。
インターネット上に溢れる情報の中で、法律に抵触するものや犯罪に結びつくものを監視し、調査するサイバー・パトロール会社「クマー」。大学一年生の三島孝太郎は、先輩の真岐に誘われ、五カ月前からアルバイトを始めたが、ある日、全国で起きる不可解な殺人事件の監視チームに入るよう命じられる。その矢先、同僚の大学生が行方不明になり…。“言葉”と“物語”の根源を問う、圧倒的大作長編。
失踪した同僚の森永を探す三島孝太郎は、西新宿セントラルラウンドビルで元捜査一課の刑事・都築に出会う。だが、そこで二人を待ち受けていたのは、まさに“怪物”と呼ぶべき存在だった…。“狼”を名乗る謎の美少女・森崎友理子との遭遇。クマー社長・山科鮎子を襲う悲劇。悪意による“物語”が拡散され、汚濁に満ちた闇が日常へと迫る中、正義と復讐に燃える青年は、ある決断を下す。
おまえは後悔するー。度重なる守護戦士の忠告に耳を貸さず、連続切断魔の特定に奔走する三島孝太郎。なぜ、惨劇は起きたのか。どうして、憎しみは消えないのか。犯人と関わる中で、彼の心もまた、蝕まれていく。そうした中、妹の友人・園井美香の周囲で積み重なった負の感情が、新たな事件を引き起こす。都築の、ユーリの制止を振り切り、孝太郎が辿りついた場所。“悲嘆の門”が、いま開く。
一九九四年二月二十六日未明、予備校受験のために上京した浪人生の孝史は宿泊中のホテルで火事に遭遇する。目の前に現れた時間旅行の能力を持つという男と共に何とか現場から逃れるも、気づくとそこはなぜか雪降りしきる昭和十一年の帝都・東京。ホテルではなく、陸軍大将蒲生憲之の屋敷だった。日本SF大賞受賞の長篇大作。
二・二六事件の当日、蒲生大将が自宅で拳銃自殺。だが、殺人の疑いも出てきた。戦争への色濃さを増す戒厳令下の東京にタイムスリップし、事件に巻き込まれた孝史はどう行動するのか。再び現代に戻って来られるのかー。大きな歴史の転換点に送り込まれた時、人には何が出来るのかを問う、著者会心の意欲作。
病弱な若旦那のために特別に注文された布団から、夜な夜な聞こえてくる泣き声の正体(「四布の布団」)、のっぺらぼうの同心のもとに持ち込まれてきた、奇妙な女からの訴え(「あやかし同心」)、「百物語」の場に来た少年には、可愛らしい少女の姿をした神様が憑いていた(「逃げ水」)など、妖怪や怪異を扱った時代小説アンソロジー。平成を代表する豪華女性作家陣の魅力が味わえる珠玉の短編六作を収録。
「めぐりあい」をキーワードに編まれた短編アンソロジー。人と人とが出会うときに生まれる、ときに感動的な、ときに意外な、ときに不思議なドラマを、作品の数だけ味わえます。これまで触れたことのなかった作家や、好きな作家のまだ見ぬ名品との「めぐりあい」が、この本にあるはず。ふだん本をあまり読まない方は日本の文学の底力を感じ、読書好きはきっと納得。自信を持ってお届けする13編。
時は元禄、東北の小藩の山村が、一夜にして壊滅した。隣り合い、いがみ合う二藩の思惑が交錯する地で起きた厄災。永津野藩主の側近を務める曽谷弾正の妹・朱音は、村から逃げ延びた少年を助けるが、語られた真相は想像を絶するものだった…。太平の世にあっても常に争いの火種を抱える人びと。その人間が生み出した「悪」に対し、民草はいかに立ち向かうのか。