著者 : 富士川義之
19世紀末、ロンドン。画家のモデルをつとめるドリアンは、若さと美貌を映した自らの肖像画を見て、自分自身はいつまでも若々しく、年をとるのは絵のほうであってほしいと願うー。快楽に耽り悪行に手を染めながらも若さを保ちつづけるドリアンと、かれの魂そのままに次第に恐ろしい醜悪な姿に変貌する肖像画との対比を描く。
アーサー王伝説を踏まえたファンタジー「幻影の盾」。SPレコードにまつわる怪異をえがいた「サラサーテの盤」。妖しい幽霊屋敷を舞台にした都市幻想小説「白血球」。超現実主義的手法で夢の世界を克明に記述した「夢の中での日常」。他全48編。
虚空に飛ぶ能力を持った蹴鞠の名人の物語「空飛ぶ大納言」。奇想天外な食物幻想譚「饗宴」。中世室町時代を舞台にして、考証と空想のはざまを自在に往還する「開かずの箱」。夢の中の生と生の中の夢が迷路の中で呼びかわす「土偶木偶」。他全46編。
読んでびっくりの表題作をはじめ、男が女に、女が男になる「パントの国で」、16世紀のプラハに迷いこんだアリスの物語、ハリウッドに題材をとった「幻影の商人」など、伝説や物語を大胆に作り替える手法で死後ますます名声の高い“イギリスの妖精女王”カーターの遺作。
1899年ロシアの名門貴族として生まれ、米国に亡命後『ロリータ』で世界的なセンセーションを巻き起こしたナボコフが初めて英語で書いた前衛的小説。早世した小説家で腹違いの兄セバスチャンの伝記を書くために、文学的探偵よろしく生前の兄を知る人々を尋ね歩くうちに、次々と意外な事実が明らかになる。
純白の処女の喉元に飾られた血の色の首飾り。さしこむ月光の中、下肢から血をしたたらせる狼少女…。赤頭巾、白雪姫、青ひげ、吸血鬼譚などに着想を得て、性のめざめと存在の変容とを描く、セクシュアルで残酷な短篇集。
「この猫は大きくて美しく、全身真っ黒で驚くほど利口だった」妻と一緒に可愛がっていた一匹の黒猫。だが、精神をむしばまれた男は、その猫を虐待するようになり、発作的に殺してしまうが…。戦慄の復讐譚「黒猫」など、狂気と夢幻に彩られた特異な小説世界を創造した天才の傑作集。