著者 : 島本理生
アンドロイドの「僕」と所有者との間に何があったのか。とある国の施設に保護された僕は、「先生」に手紙を書きはじめた(島本理生「私だけの所有者」)。家出をして海沿いの駅に降り立った私は、花束が手向けられた夜の広場で、突然、不思議な女の子から声をかけられた(辻村深月「ユーレイ」)。並行世界で起きたテロへの関与を疑われ、捕らわれた愛娘の夏穂。宗一は夏穂を救いに、単身、もう一つの“鏡界”へと向かう(宮部みゆき「色違いのトランプ」)。幼馴染の椎太が好きでたまらない高校生の由舞は、四回目の告白を確かなものとするため、過去の告白を消し去ろうとする(森絵都「ヒカリノタネ」)。4人の直木賞作家が、YOASOBIとコラボレーション。「はじめて」をモチーフに描かれた4つの物語。現代エンターテインメントの最前線&最高峰!
出会って別れて、また出会ってーあと死ぬまでに何度繰り返すのだろう。ワインバーを営んでいた母が、突然の事故死。落ち着く間もなく、店を引き継ぐかどうか、前原葵は選択を迫られる。同棲しているのに会話がない恋人の港、母の店の常連客だった幸村、店を手伝ってもらうことになった松尾、試飲会で知り合った瀬名、そして…。めまぐるしく変化する日常と関係性のなかで、葵の心は揺れ動いていくー。
性とお金と嘘と愛に塗れたこの世界を、私たちは生きている。ミスコンで無遠慮に価値をつけられる私。お金のために愛人業をする私。夫とはセックスしたくない私。本当に愛する人とは結ばれない私ー。秘密を抱える神父・金井のもとを訪れる四人の女性。逃げ道のない女という性を抉るように描く、島本理生の到達点。
鉢かづき姫、踊る12人のお姫様、ラプンツェル、エンドウ豆の上に寝たお姫様、乙姫、眠り姫ー古今東西の様々なプリンセス・ストーリーを、現代に置き換えたら?人気の女性作家6名が、それぞれ選んだ物語を題材に、時に切なく、時に温かく、時に残酷に紡ぎだした名短編集。
イベント会社代表の真田幸弘は、数年前に函館で出会った若い女性・比紗也に東京で再会する。彼女は幼い息子を抱えるシングルマザーになっていた。真田は、美しく捉えどころのない比紗也に強く惹かれていく。一方、若き神父・如月歓は比紗也と知り合い、語り合ううち、様々な問題を抱える彼女を救おうと決意する。だが、彼女は男たちが容易に気づくことのできない深い絶望を抱えていてー。新・直木賞作家が描く、愛と救済の物語。魂に響く傑作長編小説。
あの人に出会ってから深い森に落とされたようになり、すべてはガラスごしにながめている風景のようだったー。失恋で心に深い傷を負った「わたし」。夏休みの間だけ大学の友人から部屋を借りて一人暮らしをはじめるが、心の穴は埋められない。そんなときに再会した高校時代の同級生キクちゃんと、彼女の父、兄弟と触れ合いながら、わたしの心は次第に癒やされていく。恋に悩み迷う少女時代の終わりを瑞々しい感性で描く名作。
小説家の千紘は、編集者の柴田に翻弄され苦しんだ末、ある日、パーティ会場で彼の手にフォークを突き立てる。休養のため、祖父の残した鎌倉の古民家で、蔵書を裁断し「自炊」をする。四季それぞれに現れる男たちとの交流を通し、抱えた苦悩から解放され、変化していく女性を描く。書き下ろし三篇を加えた文庫オリジナル。
ふみは高校を卒業してから、アルバイトをして過ごす日々。家族は、ふみ、母、小学校2年生の異父妹の女3人。静かで平穏で、一見何の変哲もない生活だが、そこに時折暗い影を落とすのは、家族の複雑な過去だった。習字の先生の柳さん、母に紹介されたボーイフレンドの周、2番目の父ー。「家族」を軸にした人々とのふれあいのなかで、ふみは少しずつ、光の射す外の世界へと踏み出してゆく。第25回野間文芸新人賞受賞作。
何ヵ月も何ヵ月も雨が降り続き、もしかしたらこのまま雨の中に閉じ込められるかもしれない。そう予感するような季節の中にいたー。女性の体に嫌悪感を覚える元恋人の冠くん。冠くんと別れた後、半ばやけでつき合った遊び人の藤野。今の恋人、大学生のせっちゃん…人を求めることのよろこびと苦しさを、女子高生の内面から鮮やかに描く群像新人文学賞優秀作の表題作と、15歳のデビュー作他1篇を収録。島本恋愛文学の原点。
夫の両親と同居する塔子は、可愛い娘がいて姑とも仲がよく、恵まれた環境にいるはずだった。だが、かつての恋人との偶然の再会が塔子を目覚めさせる。胸を突くような彼の問いに、仕舞い込んでいた不満や疑問がひとつ、またひとつと姿を現し、快楽の世界へも引き寄せられていく。上手くいかないのは、セックスだけだったのにー。島清恋愛文学賞受賞作。
恋に恋する女の子のささやかな成長。家出した少女の冒険と、目の当たりにした社会の現実。早熟な少年が抱く不安と、それをほぐす少女のやさしさ。-人気作家が「少女」をキーワードに綴った傑作短編9編を収録。多感な時期の憂しやときめき、ときに切ない気持ち。そしてそれらの先にある成長を、思い出のアルバムをめくるように楽しんでください。それぞれの作家の魅力も体感できる贅沢な一冊。
どこかなつかしく、不思議な雰囲気が漂う「明日町こんぺいとう商店街」。架空の町の商店街を舞台に、7人の人気作家が7軒のお店の物語を紡ぐ、ちょっと変わったアンソロジー。ほっこりおいしい物語が揃った人気シリーズの第3弾がついに登場!
やり手経営者と、カソリックの神父。美しい女性に惹き寄せられる、対照的な二人の男。儚さと自堕落さ、過去も未来も引き受けられるのはー。『ナラタージュ』『Red』を経て、島本理生がたどり着いた到達点。あふれる疾走感。深く魂に響く、至高の長編小説。
転校した中学で、クラスメイトとは距離をおく多感な少女・七緒と出会った雪子。両親の離婚危機に不安を抱える雪子は、奔放な七緒の言動に振りまわされつつ、そこに居場所を見つけていた。恋よりも特別で濃密な友情が、人生のすべてを染めていた「あの頃」を描く、清冽な救いの物語。他に「水の花火」収録。