小説むすび | 著者 : 島本理生

著者 : 島本理生

はじめてのはじめての

「はじめて」は、いつも痛くて、少し優しい。 日本エンターテインメントの最前線&最高峰! 日本を代表する4人の直木賞作家と、“小説を音楽にするユニット”YOASOBIが奇跡のコラボレーション! 小説のテーマは、「はじめて〇〇したときに読む物語」。 これらの小説を原作としたYOASOBIの楽曲が、2022年中に順次配信リリースされます。 「『私だけの所有者』--はじめて人を好きになったときに読む物語」(島本理生) 「『ユーレイ』--はじめて家出したときに読む物語」(辻村深月)  「『色違いのトランプ』--はじめて容疑者になったときに読む物語」(宮部みゆき) 「『ヒカリノタネ』--はじめて告白したときに読む物語」(森絵都) ※文字をやや大きくし、漢字にはルビを多めにふっています。 それぞれの作家のファンはもちろん、全ての世代の方々に楽しんで頂ける、「はじめての」読書にもお勧めしたい小説集になりました。 ■YOASOBIからのメッセージ 4作品全て本当に面白くて、読み終えた時、全作品、計4回「めちゃくちゃ面白かった!」と声に出し、原稿の前で拍手をしました。「はじめての」という一つのテーマから生まれた4つの色とりどりな物語が、それぞれ違うゴールへと向かう様に心が震えました。 (YOASOBI composer Ayase) はじめて読んだ物語なのに、私の奥底に眠っている記憶が呼び起こされるような体験でした。 4つの物語、4つの世界と出会って生まれたこの感動を、まっすぐに歌に乗せられたらと思います。 (YOASOBI vocal ikura) ■作家からのメッセージ 初めての挑戦をたくさん詰め込んだら、むしろ自分の原点とも言うべき、好きな人との物語になりました。恋よりも強い絆で結ばれた「私だけの所有者」にこの短編で出会ってください。 (島本理生) 人は誰でも、その出会いの前と後で人生が変わってしまうような一生モノの出会いの経験があると思います。その一夜を通じて、前の自分にはもう戻れなくなるような、そんなはじめての家出を書きました。この小説もまた、読む前と読んだ後で誰かの何かが変わると信じて、送り出します。 (辻村深月) いつも物語をつくる時は、そのイメージに合った音楽を探すようにしています。ぴったりな音楽が見つかれば、その音楽が私を正しい方向に導いてくれるからです。今回はまず物語が先にあり、そこから音楽が誕生するという企画で、私にはまったく新しい経験に、胸が高鳴っています。 (宮部みゆき) 「はじめての」というお題をいただき、私もはじめての設定にトライしてみました。時空を超える片思いーーこの物語が、読者の皆さんの過去に灯る大事な瞬間とつながってくれますように。 (森 絵都)

星のように離れて雨のように散った星のように離れて雨のように散った

出版社

文藝春秋

発売日

2021年7月28日 発売

行方不明の父、未完の『銀河鉄道の夜』、書きかけの小説。三つの未完の物語の中に「私」は何を見い出すのか? 人生の岐路に立つ女子大学院生を通して描く、魂の彷徨の物語。 執筆に先立って著者は、以下のようなエッセイを寄せています。 ================= (前略)  もうひとつ分からないのは、宮沢賢治のことだ。  幼い頃、私はたぶん明確に宮沢賢治作品が嫌いだった。理不尽と唐突な怒りと自己犠牲に溢れ、常に死の気配がして、それでいて、熱くどろりとした生命力も感じる。正直、気味が悪かった。  ただ、アニメ版の『銀河鉄道の夜』のビデオだけは繰り返し見ていた記憶がある。ますむらひろしさんのファンだったこともあるが、なにより、アニメーションと呼ぶにはあまりに深い銀河の闇に引き込まれた。  私が一九八三年生まれで、映画が公開されたのは一九八五年なので、おそらく私が六、七歳の頃に失踪して、それ以来、行方不明の実父がまだいた頃に見ていたことも、関係しているように思う。  だから、大人になり、宗教的な関心から賢治の作品を読み返すようになって、その面白さにようやく目覚めてからも、『銀河鉄道の夜』だけは自分の中でぽっかり浮いている作品だった。 (中略)  私の手元には、消えた父の残した手紙が一通だけある。その文体からは、私が身内から聞いていた父の人物像とは、かなり異なる印象を受ける。  この連載長編は、主人公の「私」と、消えた父親と、『銀河鉄道の夜』という三つの未完の物語をとおして、銀河の闇のむこうに消えたものを見つけたくて書き始めた。  じつは数週間前まで、自分がこんな小説を書くとすら思っていなかった。ほんとうの意味で消えた父親について書こうと考えたことがなかったのだ。そしていきなり始まったということは、たぶん、そういう時期やタイミングが来たのではないかと思う。 ============== 「私」をめぐる大いなる冒険の一つの答えが提示される物語をご期待ください。

あなたの愛人の名前はあなたの愛人の名前は

出版社

集英社

発売日

2018年12月14日 発売

直木賞受賞第一作! すれ違う大人の恋愛を繊細に描く、全六篇の作品集。 「あなたは知らない」……私を「きちんと」愛してくれる婚約者が帰ってくる前に、浅野さんと無理やり身体を離して自宅までタクシーでとばす夜明け。ただひたすらに「この人」が欲しいなんて、これまでの人生で経験したことがない。 「俺だけが知らない」……月に一、二回会う関係の瞳さんは、家に男の人がいる。絶対に俺を傷つけない、優しく笑うだけの彼女を前にすると、女の人はどれくらい浮気相手に優しいものなのか、思考がとまる。 同じ部屋で同じ時を過ごしていながら、絶望的なまでに違う二人の心をそれぞれの視点から描いた1対の作品。他の収録作品に「足跡」「蛇猫奇譚」「氷の夜に」「あなたの愛人の名前は」など。 【著者略歴】 島本理生(しまもと・りお) 1983年生まれ。2001年「シルエット」で第44回群像新人文学賞優秀作を受賞。2003年『リトル・バイ・リトル』で第25回野間文芸新人賞を受賞。2015年『Red』で第21回島清恋愛文学賞を受賞。2018年『ファーストラヴ』で第159回直木三十五賞受賞。『ナラタージュ』『アンダスタンド・メイビー』『よだかの片想い』『イノセント』『わたしたちは銀のフォークと薬を手にして』など著書多数。

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