著者 : 島本理生
転校した中学で、クラスメイトとは距離をおく多感な少女・七緒と出会った雪子。両親の離婚危機に不安を抱える雪子は、奔放な七緒の言動に振りまわされつつ、そこに居場所を見つけていた。恋よりも特別で濃密な友情が、人生のすべてを染めていた「あの頃」を描く、清冽な救いの物語。他に「水の花火」収録。
「空想の中でしか、私は生きられないから」--中学時代の八雲にまつわるエピソード『真夜中の図書館』(『心霊探偵八雲』のスピンオフ)、物語が禁止された国に生まれた子どもたちの冒険『青と赤の物語』、ノベロイド研究にのめり込み、「物語AI」におもしろい小説を書かせようと奮闘する高校生の青春模様『ワールズエンド×ブックエンド』など、「小説」が愛おしくなる8編を収録。旬の作家によるバラエティ豊かなアンソロジー。
顔に大きなアザがあるため、世の中に居心地の悪さを感じている大学院生のアイコ。ルポ本の取材がきっかけで映画監督の飛坂に出会い、恋をして……。瑞々しく切ない恋と成長の物語。(解説/瀧井朝世)
DVで心の傷を負い、カウンセリングに通っていた麻由は、蛍に出逢い心惹かれていく。彼を想う気持ちと不安。相反する気持ちを抱えながら、麻由は痛みを越えて足を踏み出す。切実な祈りと光に満ちた恋愛小説。
舞踏家の父と暮らす朔は、物語を書くのが好きな十二歳。クラスの中で浮いた存在になることを恐れつつも、気の強い鹿山さんとの友情を深め、優しい田島君への憧れを抱きながら、少しずつ大人に近づいていた。だが、そんな朔の日常を突然切り裂くできごとが起こりー。私はきっと、なんらかの方法で戦わなくてはいけない。唐突に子供時代を終わらせられた少女が決意した復讐のかたちとは。
きっかけは本当につまらないことだった。穏やかな暮らしを揺さぶった、彼の突然の暴力。それでも私はー。互いが抱える暗闇に惹かれあい、かすかな希望を求める二人を描く表題作。自分とは正反対の彼への憧れと、衝動的な憎しみを切り取る「クロコダイルの午睡」。戸惑いつつ始まった瑞々しい恋の物語、「猫と君のとなり」。恋愛によって知る孤独や不安、残酷さを繊細に掬い取る全三篇。
人気作家6人が綴る 女と男と車の物語 出ていってやる、私は車に乗り込んだ/美しい老婆ミナミの運転に僕は命を預ける/愛犬ブランと最後のドライブ/2ヵ月前に出ていった透の愛車が部屋の前に/私は恋の終わる地点をめざし、アクセルをふんだ/いつものCD、だけど湧き上がる怒りと失望ーー6人の人気作家が車をモチーフに描いた珠玉の恋愛小品集。 “6つの愛”が走りだす! 角田光代「ふたり」 大道珠貴「ゆうれいトンネル」 谷村志穂「風になびく青い風船」 野中柊「たとえ恋は終わっても」 有吉玉青「BORDER」 島本理生「遠ざかる夜」
お願いだから、私を壊して。ごまかすこともそらすこともできない、鮮烈な痛みに満ちた20歳の恋。もうこの恋から逃れることはできない。早熟の天才作家、若き日の絶唱というべき恋愛文学の最高作。
舞踏家の父と暮らす12歳の少女、野宮朔。夢は、作家になること。一歩一歩、大人に近づいていく彼女を襲った、突然の暴力。そして、少女が選んだたった一つの復讐のかたち。
失恋で心に深い傷を負った「わたし」。夏休みの間だけ大学の友人から部屋を借りて一人暮らしをはじめるが、心の穴は埋められない。そんなときに再会した高校時代の友達キクちゃんと、彼女の父、兄弟と触れ合いながら、わたしの心は次第に癒やされていく。恋に悩み迷う少女時代の終わりを瑞々しい感性で描く。
ふみは高校を卒業してから、アルバイトをして過ごす日々。家族は、母、小学校二年生の異父妹の女三人。習字の先生の柳さん、母に紹介されたボーイフレンドの周、二番目の父ー。「家族」を軸にした人々とのふれあいのなかで、わずかずつ輪郭を帯びてゆく青春を描いた、第二十五回野間文芸新人賞受賞作。
小さな明かりの灯った夜の中で、私たちは長い会話とキスを交わしながら、何度夜を明かしただろう。ふたりだけの愛おしい日々が溶けていくー生真面目で不器用な恋人たちを清新なイメージで描いた七色の連作短篇集。