著者 : 島本理生
「空想の中でしか、私は生きられないから」-中学時代の八雲にまつわるエピソード「真夜中の図書館」(『心霊探偵八雲』のスピンオフ)、物語が禁止された国に生まれた子どもたちの冒険「青と赤の物語」、ノベロイド研究にのめり込み、「物語AI」におもしろい小説を書かせようと奮闘する高校生の青春模様「ワールズエンド×ブックエンド」など、「小説」が愛おしくなる8編を収録。旬の作家によるバラエティ豊かなアンソロジー。
顔に目立つ大きなアザがある大学院生のアイコ、二十四歳。恋や遊びからは距離を置いて生きていたが、「顔にアザや怪我を負った人」をテーマにした本の取材を受け、表紙になってから、状況は一変。本が映画化されることになり、監督の飛坂逢太と出会ったアイコは彼に恋をする。だが女性に不自由しないタイプの飛坂の気持ちがわからず、暴走したり、妄想したり…。一途な彼女の初恋の行方は!?
幼い頃からずっと自分を大事にできなかった“私”。理不尽な義父と気まぐれな母、愛情と暴力が紙一重の恋人に、いつしか私は、追いつめられていく。そんな日々のなか、私は、二十も年上の“あなた”と久々に再会する。そして婚約者がいるはずの“あなた”に、再び愛を告げられてー“あなた”と“私”…名前する必要としない二人の、密室のような恋。至上の恋愛小説。
川本麻由はかつての恋人によるDVで心に傷を負い、生きることに臆病になっていた。ある日、カウンセリングの相談室で植村蛍という年上の男性に出会い、次第に惹かれていく。徐々に生活を取り戻し始めた麻由だったが、もっと彼に近付きたいのに、身体はそれを拒絶してしまう。フラッシュバックする恐怖と彼を強く求める心。そんな麻由を蛍は受け止めようとするが…。リアルな痛みと、光へ向かう切実な祈りに満ちた眩い恋愛小説。
恋人の降一を事故で亡くした志保。その車を運転していた降一の親友・五十嵐。彼に冷たく接する志保だったが、同じ哀しみを抱える者同士、惹かれ合っていく「君が降る日」。結婚目前にふられた女性と年下の男との恋「冬の動物園」。恋人よりも友達になることの難しさと切なさを綴った「野ばら」。恋の始まりと別れの予感を描いた三編を収録した恋愛小説。
舞踏家の父と暮らす朔は、物語を書くのが好きな十二歳。クラスの中で浮いた存在になることを恐れつつも、気の強い鹿山さんとの友情を深め、優しい田島君への憧れを抱きながら、少しずつ大人に近づいていた。だが、そんな朔の日常を突然切り裂くできごとが起こりー。私はきっと、なんらかの方法で戦わなくてはいけない。唐突に子供時代を終わらせられた少女が決意した復讐のかたちとは。
きっかけは本当につまらないことだった。穏やかな暮らしを揺さぶった、彼の突然の暴力。それでも私はー。互いが抱える暗闇に惹かれあい、かすかな希望を求める二人を描く表題作。自分とは正反対の彼への憧れと、衝動的な憎しみを切り取る「クロコダイルの午睡」。戸惑いつつ始まった瑞々しい恋の物語、「猫と君のとなり」。恋愛によって知る孤独や不安、残酷さを繊細に掬い取る全三篇。
仲良しのまま破局してしまった真琴と哲、メタボな針谷にちょっかいを出す美少女の一紗、誰にも言えない思いを抱きしめる瑛子。真剣で意地っ張りで、でもたまにずるくもあって、でもやっぱり不器用で愛おしい。そんな、あなたに似た誰かさん達の物語です。いろいろままならないことはあるけれど、やっぱり恋したい、恋されたいー『ナラタージュ』の島本理生がおくる傑作恋愛小説集、待望の文庫化。
どんな恋にも、その時だけの特別な“カオリ”があるーゆるくつけたお気に入りの香水、彼の汗やタバコの残り香、ふたりでつくった料理からあがる湯気ー柔らかく心を浸す恋の匂いをテーマに、今、一番鮮烈な“恋の描き手”たちが集う。漂う6つのフレイバーが呼びおこすのは、過ぎ去ったあの日のこと?それともー?6人のラブストーリーテラーが供する、せつなさのスペシャリテ。
お願いだから私を壊して、帰れないところまで連れていって見捨てて、あなたにはそうする義務があるー大学二年の春、母校の演劇部顧問で、思いを寄せていた葉山先生から電話がかかってきた。泉はときめきと同時に、卒業前のある出来事を思い出す。後輩たちの舞台に客演を頼まれた彼女は、先生への思いを再認識する。そして彼の中にも、消せない炎がまぎれもなくあることを知った泉はー。早熟の天才少女小説家、若き日の絶唱ともいえる恋愛文学。
舞踏家の父と暮らす12歳の少女、野宮朔。夢は、作家になること。一歩一歩、大人に近づいていく彼女を襲った、突然の暴力。そして、少女が選んだたった一つの復讐のかたち。
失恋で心に深い傷を負った「わたし」。夏休みの間だけ大学の友人から部屋を借りて一人暮らしをはじめるが、心の穴は埋められない。そんなときに再会した高校時代の友達キクちゃんと、彼女の父、兄弟と触れ合いながら、わたしの心は次第に癒やされていく。恋に悩み迷う少女時代の終わりを瑞々しい感性で描く。
ふみは高校を卒業してから、アルバイトをして過ごす日々。家族は、母、小学校二年生の異父妹の女三人。習字の先生の柳さん、母に紹介されたボーイフレンドの周、二番目の父ー。「家族」を軸にした人々とのふれあいのなかで、わずかずつ輪郭を帯びてゆく青春を描いた、第二十五回野間文芸新人賞受賞作。
小さな明かりの灯った夜の中で、私たちは長い会話とキスを交わしながら、何度夜を明かしただろう。ふたりだけの愛おしい日々が溶けていくー生真面目で不器用な恋人たちを清新なイメージで描いた七色の連作短篇集。