著者 : 嵐山光三郎
人は「よろしく」と現れ「よろしく」と去っていく。人の世の喜びも悲しみも、実はこの一言に尽きてしまう。介護、殺人、色模様-現世の諸相を通して、嵐山光三郎流の人生観、死生観を楽しめるスペクタル長編小説ここに登場。
昭和20年代の終わり、東京・国立。テレビでは力道山が活躍し、最初のゴジラ映画が封切られた頃、愛書少年青井祐太は、テレビより映画より、本に耽溺していた。嵐のような読書欲、ふくらむ妄想。そんな祐太の家に、父親の戦友、ジョンが異様ないでたちで訪ねてきたことから、事件が次々と起こる…登場する本、100冊以上、本邦初の冒険読書小説。
妻公認の妾を敷地内のアパートに囲った男には既に三人の愛人が…。さらに新たにもう一人と、夢のような日々のはずが…。女の執念と男の妄想を描く表題作をはじめとして、現実より実感のある不思議な夢に取りこまれ、夢の世界を生き始める男。現実と夢の狭間に入りこんだ男たちの姿を描く異色短篇集。
太平洋戦争が終わって数年、焼け跡の広場で少年たちは三角ベースで遊んでいた。ラジオは「尋ね人」や「リンゴの唄」を流し、ポケットには宝物のような英字ビスケットが入っていた…誰の心にも残る、あの、なつかしい日々をつづった自伝的長篇小説。
東京近郊の高校を卒業した男たちの数奇な人生。周辺住民に追い立てられるメッキ業者、サラ金に迫われて非道な取立人に変身した男、怪しげな技でくいつなぐ大道芸人、強運に妻に救われる元博奕打ち等、中年男たちの、怨念、反骨、乱暴な友情、切ない恋愛を、辛辣にユーモラスに描く、新風都会派傑作短編集。
いたるところでブルドーザーがうなりをあげ、ついでに若者の頭の中も工事中だった東京、60年代。サルトルを片手に女の子をくどき、路地裏でチンピラと乱闘、就職試験トレーニングの合い間に火炎ビンを投げていたあの頃。唐十郎、三島由紀夫、安西水丸など数百人の実名オールスター・キャストで、オリンピックと安田講堂の東京を再現する、嵐山光三郎初の自伝的大河青春小説。