著者 : 常盤新平
こんな時代には心あたたまる本を読みたい。ハッピーエンドの恋物語7篇。でも、O・ヘンリーだから、ひと味ちがう。O・ヘンリー生誕160年に再びおくる名翻訳者・常盤新平最後の翻訳書。本邦初訳「牧場のマダム・ボーピープ」収載。
戦後十年、日本人はまだ貧しい生活を送りながら大国アメリカの豊かな物質文化や娯楽産業に憧れをいだいていた。クリーネックス・ティシューや雑誌「ヴォーグ」、そしてハリウッド映画。そんな時代に、二十代半ばの青年重吉と演劇に没頭している椙枝は二人で愛をはぐくんでいた。一向に見えない自分たちの将来に悪戦苦闘しながらも愛と希望だけを頼りに生きる、往時の若者たちが瑞々しく描かれる。全4編からなる第96回直木賞受賞作。1955年、夢のアメリカに恋い焦がれた若者たちの青春群像小説。
大恐慌時代のハリウッド。エキストラの仕事にあぶれ、食いつめた若い男女が、千ドルの賞金と最後のチャンスを求めてマラソン・ダンス大会に参加する。最後の一組が残るまでひたすら踊り続ける過酷な競技の果てに二人を待っていたのは…。競技中に発生するさまざまな人間ドラマ、若者たちの希望と絶望を巧みな構成で描いた傑作。
年頃を迎えた娘へのさりげない父親の愛情が、胸に迫る表題作「頬をつたう涙」。酒とオーケストラをこよなく愛し、五十五歳で逝ってしまった兄を愛しむ弟の思いを描いた「酒呑みたちのオーケストラ」。勤務の合間に、偶然に街で出逢った共働き夫婦の愛情の機微を綴った「平凡な生活」など全十一篇。家族や友人、身近な人々を限りなく暖かい目で見つめ描いた、人生の哀歓あふれる珠玉の小説集。
ノースは勉強もスポーツも万能という模範少年、たった一つの不満は、仕事一途の両親がちっとも彼の話を聞いてくれないことだった。そんな彼が思いついた解決策とは。理想的な親を求めてフリーエージェント宣言をしたノースは、世界中を旅して回るー。パパやママと心から話をしたいと思っている君たちと、我が子がさっぱり分らないと嘆くあなたに贈る、心暖まる話題作。
NY市警麻薬取締責任者のジョーは多忙で、妻のメアリーは満たされぬ日々を過している。ふとしたきっかけで息子の野球チームの監督とかりそめの愛を交わすが、その時思わぬ悲劇が起きた。密会の場に見知らぬ男が闖入し、レイプされたのだ。自責の念と屈辱感に苦しむメアリー、裏切った妻への反感と犯人への憎しみに引き裂かれるジョー。敏腕のレイプ専門女性検事が活躍する問題作。
1959年、駆け出しの翻訳者だった頃、僕は沙知と結婚した。その頃、僕にとってのアメリカは、古本屋にひっそりと積まれてあるペイパーバックや、アメリカの雑誌のことであって、アメリカに行くことなど夢にも考えていなかった。アメリカ文学の翻訳家であり、直木賞作家として知られる常盤新平が若き日を描く青春小説。
桂子はニューヨークで1人暮らす日本女性。彼女の生活のすべてを知る者はいない。優しいそよ風のような魅力を持つ桂子と、都会の喧噪や人生に疲れた男たちが出会う時、それぞれのラブ・ストーリーが生まれる。ニューヨークを知り尽くした著者がニューヨークを舞台に描くちょっぴり不思議で洒落た恋愛模様。
幼なき日の思い出も、恋も、すべてが夏の日の煌く海辺から始まるー。一人の男が、スポーツに夢中になったわけ、初めて女性を知ったときの心理、そしていま、家庭の人となるまでの長い道程で味わった喜びと悩み。人生の機微・哀歓を瑞々しく綴ったショーの秀作長編を、作家・常盤新平の清新な訳で贈る。
ぼくはもう、こんな両親のもとでは一時間も暮せない。本当に理解しあえる両親を求めて、自由契約裁判を起したケース。テキサス、ハワイ、アラスカ、ニューヨークと契約養子を願う“理想的な親”のもとを訪ねて歩くが…もしもあなたが父親なら、子供に「ノースするぞ」といわれた要注意!この物語は、そんな親子の物語。
人生の機微、男と女の心理の綾を、心憎いばかりのみごとな筆致で浮き彫りにするショー。訳すのは、私小説の世界に新しい地平をひらいた直木賞作家。この日米の短編小説の名手がコンビで贈る“人生模様”。「心変わり」「かなしみの家」「不道徳な話」「ニューヨークの喧騒」など、珠玉の13編を収録。
世の中が、ずっと貧しかった頃。クリーネックス・ティシューもまだ日本に入ってきていなかった、そんな時代にひたすらアメリカに焦がれ続けた青年重吉と、演劇に熱中した娘椙枝。愛と希望だけが頼りの、そのふたりのひたむきな生、揺れ動く心の襞を、鮮やかに浮かびあがらせた、直木賞受賞の名品集。
アメリカ1920-30年代、マラソン・ダンスが吹き荒れた。ハリウッドに憧れる若い男女が果敢に挑戦するがそこに待っていたものは-。時代の空気を敏感に嗅ぎとりそしてあらがう心模様をクールな文体の中に描き切った傑作。