著者 : 望月市恵
まえがき 第 一 章 到 着 三十四号室 レストランで 第 二 章 洗礼盤と二つの姿の祖父のこと ティーナッペル家で。そして、ハンス・カストルプの倫理状態について 第 三 章 謹厳なしかめっつら 朝 食 からかい。臨終の聖体拝受。たちきられた上きげん 悪魔(Satana) 頭脳明快 一言失言 もちろん、女さ! アルビンさん 悪魔(Satana)ぶしつけな進言をする 第 四 章 必要な買いもの 時間感覚についての余談 フランス語の会話をこころみる 政治的にうさんくさい! ヒ ッ ペ 分 析 疑問と考察 食事中の談話 昂じる不安。二人の祖父のこととたそがれの船あそびについて 体 温 計 第 五 章 永遠のスープと突然の明るさ 「ああ、見える!」 自 由 水銀の気まぐれ 百科辞典 フマニオーラ 探 究 亡者の踊り ワルプルギスの夜 訳 注
第 六 章 変 化 さらに一人 神の国とうさんな救済 激怒。そして、もっとたまらないこと 攻撃失敗 精神的修錬(operationes spirituales) 雪 兵士として、それもりっぱな 第 七 章 海べの散歩 ペーペルコルン氏(Mynheer Peeperkorn) トゥエンティー・ワン(vingt et un) ペーペルコルン氏(つづき) ペーペルコルン氏(むすび) 無感覚という名の悪魔 楽音の泉 ひどくうさんなこと ヒステリー蔓延 青天の霹靂 解 説 トーマス・マン略年譜 あとがき 訳 注
旧約聖書創世紀にあるヨセフの物語は、イスラエルの族長ヤコブの第11子ヨセフが、父の過度の寵愛を兄たちにねたまれて奴隷としてエジプトに売りとばされた話である。このヨセフ物語をトーマス・マンが51歳から丸々16年かけて長大な小説にしたのが『ヨセフとその兄弟』4部作である。今世紀最大の夢のロマン、全巻完結。
青年詩人マルテは一人故郷を去ってパリに出た。不安と恐怖、絶望と焦燥ー孤独な生活の中で、マルテは深く内的な世界に沈潜し、日々の経験と幼き日の思い出を書き綴る。リルケ(1875-1926)は自身がパリの現実に直面して受けた衝撃を、一詩人の内面告白という形でこうして形象化した。リルケの特質を最も明快に示す作品である。
一家の、かつての明るい健康な気風は徐々に頽廃的なものに変ってゆく。トーマスにとってとりわけ息子の繊細な心と弱々しい肉体は気がかりであった。少年はわが家の系図を見つけ、その末尾にある己れの名の下に線を引く、他愛ない悪戯心からだったのだが。
父の死後、トーマスは新社主として商会を引き継いだ。離婚する妹、身をもち崩す弟らを抱えながらトーマスは父祖の築いた一家の名声と体面を保ち、事業にも腕を揮ってやがて市の参事会員に選ばれた。一家の血は彼によって次代に伝えられてゆくかのようであった。
「ある家族の没落」という副題が示すようにドイツの一ブルジョア家庭の変遷を四代にわたって描く。初代当主は一八世紀啓蒙思想に鍛えられた実業家である。代を追うにつれこの家庭を、精神的・芸術的なものが支配し、次第に生活力が失なわれてゆく。