著者 : 柳広司
新聞雑誌の原稿に、翻訳、暗号文の解読……。 文章に関する依頼、何でも引き受けます。 どんな無理難題もペン一本で解決してみせる“売文社″のもとには、 今日も不思議な依頼が持ち込まれてーー。 ある日、暴漢に襲われた“ぼく”を救ってくれた風変りな人々。彼らは「文章に関する依頼であれば、何でも引き受けます」という変わった看板を掲げる会社ーーその名も「売文社」の人たちだった。さらに社長の堺利彦さんを始め、この会社の人間は皆が皆、世間が極悪人と呼ぶ社会主義者だという。そんな怪しい集団を信じていいのか? 悩む“ぼく”に対して、堺さんはある方法で暴漢を退治してやると持ち掛けるが……。 暗号解読ミッション、人攫いグループの調査……。社に持ち込まれる数々の事件を、「売文社一味」はペンの力で解決する! 世の不条理に知恵とユーモアで立ち向かえ。驚きと感動が詰まった珠玉の推理録!
戦後、日本は二つの国に分断されていた。本土から切り離され、米軍支配下に取り残された沖縄は「独立」に向けた闘いを開始した。故郷沖縄に東京から思いを馳せる詩人・山之口貘、“アメリカが最も恐れた男”不屈の政治家・瀬長亀次郎、「沖縄資料センター」を立ち上げ沖縄との連帯を模索する中野好夫…。実在の人物たちの視点を通し、本土復帰までの「時代」と「闘い」を描く傑作長編!この物語の主人公は沖縄である。
「蟹工船」の取材と執筆に熱中するプロレタリア文学の旗手・小林多喜二。反社会的、非国民的思想犯として特高に監視される反戦川柳作家・鶴彬。同業他社の知人たちに不可思議な失踪が続き、怯える編集者・和田喜太郎。在野にありながら、天才的な論考を発表し続ける、稀代の哲学者・三木清。1925年、治安維持法成立。太平洋戦争の軍靴の響きが迫るなか、罪状捏造に走る官憲と、信念を貫く男たちとの闘いが始まった…。「ジョーカー・ゲーム」シリーズの著者が令和の世に問う、歴史スパイ・ミステリ。
「目の前で苦しんでいる人から目を背けることは、どうしてもできん」一九〇四年(明治三十七年)、紀州・新宮に西洋の王様がかぶる王冠のような看板を掲げた洋食屋「太平洋食堂」が開店した。店の主人は「ひげのドクトル(毒取る)さん」と呼ばれ、地元の人たちから慕われていた医師・大石誠之助。アメリカやシンガポール、インドなどに留学した経験を持つ誠之助は、戦争と差別を嫌い、常に貧しき人の側に立って行動する人だった。やがて幸徳秋水、堺利彦、森近運平らと交流を深めていく中、“主義者”として国家から監視されるようになった誠之助に待ち受ける運命とはー。ドラマチックな筆致と徹底した時代考証が融合した超近代的歴史長編誕生!
哲人ソクラテスとクリトンが、ある祝宴に招かれた翌朝。宴席にいた貴族の青年が、広場の中心で奇妙な死を遂げた。アクロポリスの裏では異国風の青年のバラバラ死体と、不可解な文字と模様が刻み込まれた陶器と円盤が発見される。謎の“ピュタゴラス教団”と、人造人間“ホムンクルス”の仕業か?都市国家・アテナイの命運をかけた大事件の真相に変人ソクラテスが鮮やかな推理で迫る!圧巻の長篇本格ミステリ。
野望と陰謀が交錯する満州の人工都市新京。この映画の都は「幻影城市」と呼ばれた。若き脚本家志望の英一は日本を追われ、満州映画協会の扉を叩く。理事長甘粕正彦、七三一部隊長の石井四郎、無政府主義者、抗日スパイら怪人が闊歩する中、不可思議な事件が続発するー。『楽園の蝶』を改題、改稿した決定版。
扇屋「俵屋」の養子となった伊年は、醍醐の花見や、出雲阿国の舞台、また南蛮貿易で輸入された数々の品から意匠を貪っていた。俵屋の扇は日に日に評判を上げ、伊年は「平家納経」の修理を任される。万能の文化人・本阿弥光悦が版下文字を書く「嵯峨本」「鶴下絵三十六歌仙和歌巻」下絵での天才との共同作業を経て、伊年の筆はますます冴える。
妻を娶り、二人の子を生した宗達は、名門公卿の烏丸光広に依頼され、養源院の唐獅子図・白象図、相国寺の蔦の細道図屏風を制作する。法橋の位を与えられ禁中の名品を模写し、古今東西のあらゆる技法を学んだ宗達。盟友が次々に逝くなか、国宝・関屋澪標図屏風、重要文化財・舞楽図屏風を描いた天才絵師は、国宝・風神雷神図屏風で何を描いたのか。
華族に生まれ陸軍中将の妻となった顕子は、退屈な生活に惓んでいた。アメリカ大使館主催の舞踏会で、ある人物を捜す顕子の前に現れたのはー(「舞踏会の夜」)。ドイツの映画撮影所、仮面舞踏会、疾走する特急車内。帝国陸軍内に極秘裏に設立された異能のスパイ組織“D機関”が世界で繰り広げる諜報戦。ロンドンでの密室殺人を舞台にした特別書き下ろし「パンドラ」収録。スパイ・ミステリの金字塔「ジョーカー・ゲーム」シリーズ!
あの日あの場所で何が起きたのか(「道成寺」)、助けられたかもしれない命の声(「黒塚」)、原発事故によって崩れてゆく言葉の世界(「卒都婆小町」)など、エンターテインメントの枠を超え、研ぎ澄まされた筆致で描かれた五編。
「狼王ロボ」の異名を持つ巨大狼を追跡中の老人が、喉を裂かれて殺された。「犯人」は狼なのか?だが居合わせたシートンは、真犯人は他にいると断言するー名著『シートン動物記』の著者、シートン先生は名探偵でもあった!?動物たちを巻き込む怪事件をホームズばりの推理で解決する心優しい連作ミステリ。
世界最強の警護官集団「シークレットサービス」での研修のため渡米したSP首藤は初日、フォトジャーナリストの美和子と出会う。国際テロ組織が大統領暗殺を予告し緊張が走るなか、美和子が誘拐される。首藤は相棒バーンと共に警護を完遂し、彼女を助け出すことができるのか。圧巻のボディガードミステリ。
皆さんがおっしゃるほど、わたしはあの人にとって“悪い妻”だったのでしょうか?ソクラテスの死後、悪妻クサンティッペが亡夫の実像を語る表題作の他、オイディプス、ゼウス、ミノタウロス、イカロス、タレス…いつか耳にしたギリシアの神や人々が、生き生きとよみがえる。平明な文体に深遠な哲学が沁み込んだ掌編集。
知力、体力、先読み能力ーすべてが一級のエリートSP・首藤武紀は、合衆国シークレットサービスで“異例の研修”を受けることに。初日、銃規制を求めるデモに遭遇した首藤は、突如暴れ出した男を瞬く間に制圧し、人質の幼女を助ける。しかしその現場には、大統領暗殺計画を示唆する二枚の写真が残されていた。超一流警護官たちに忍び寄る死神の影。2014年を撃ち抜く怒涛のオープニング&驚愕のラスト!!
残業を終え帰路を急ぐ赤坂俊一が真っ暗な坂道をのぼる途中、うずくまって泣いている女を見かけた。声をかけると、女はゆっくりと向き直り、両手に埋めていた顔をしずかに上げたーその顔は(「むじな」)。ありふれた現代の一角を舞台に、期せずして日常を逸脱し怪異に呑み込まれた老若男女の恐怖を描いた傑作6編。
父は虎になった。幼いぼくと母を残して。いつかは、ぼくも虎になるのだろうか…。父の変身の真相を探るため、少年は都へと旅に出た。行く先々で見聞きするすべてが謎解きの伏線。ラストの鮮やかなどんでん返し!中島敦の名作「山月記」を、大胆な解釈で生まれ変わらせた、新感覚ミステリ。