著者 : 柳広司
ぼく(コーリャ)は13歳。夏の夜、「列車が通り過ぎるあいだ、レールの下に寝ていられるか」という、友人たちとの賭けに勝ってから、町で一目置かれる存在になっている。そんな僕の住む町に、カラマーゾフの三兄弟が戻ってきた。自由奔放な長男ドミトリー、理知的な次男イワン、そして不思議な三男アリョーシャ。そして、三兄弟の父フョードルが死んだ。それは殺人事件だった!誰の目にも、長男ドミトリーが犯人と思われたが、やがて新たな犯人像が浮かび上がる!一転、二転、大逆転のスリリングな展開。ドストエフスキーの名作『カラマーゾフの兄弟』をベースに、少年の視点による「児童文学・冒険ミステリー」として再構成する。
新聞雑誌の原稿に、翻訳、暗号文の解読……。 文章に関する依頼、何でも引き受けます。 どんな無理難題もペン一本で解決してみせる“売文社″のもとには、 今日も不思議な依頼が持ち込まれてーー。 ある日、暴漢に襲われた“ぼく”を救ってくれた風変りな人々。彼らは「文章に関する依頼であれば、何でも引き受けます」という変わった看板を掲げる会社ーーその名も「売文社」の人たちだった。さらに社長の堺利彦さんを始め、この会社の人間は皆が皆、世間が極悪人と呼ぶ社会主義者だという。そんな怪しい集団を信じていいのか? 悩む“ぼく”に対して、堺さんはある方法で暴漢を退治してやると持ち掛けるが……。 暗号解読ミッション、人攫いグループの調査……。社に持ち込まれる数々の事件を、「売文社一味」はペンの力で解決する! 世の不条理に知恵とユーモアで立ち向かえ。驚きと感動が詰まった珠玉の推理録!
この物語の主人公は沖縄である 沖縄からの風が「真」をはこんでくれるーー 戦後、日本は二つの国に分断されていた。 本土から切り離され、米軍支配下に取り残された沖縄は「独立」に向けた闘いを開始する。 遠く離れた故郷沖縄に思いを馳せる詩人・山之口貘、“アメリカが最も恐れた男”不屈の政治家・瀬長亀次郎、戦後の東京で私費を投じて米軍支配が続く沖縄との連帯を模索する中野好夫……。 実在の人物たちの視点を通し、本土復帰までの「時代」と「闘い」を描く傑作歴史長編! 『ジョーカー・ゲーム』シリーズで知られるベストセラー作家が挑む「沖縄が主人公」の物語。
1925年、治安維持法成立。太平洋戦争の軍靴が迫るなか、罪状捏造に走る官憲と、信念を貫く男たちとの闘いが始まった……。 『蟹工船』の取材と執筆に熱中するプロレタリア文学の旗手・小林多喜二。 反社会的、非国民的思想犯として特高に監視される反戦川柳作家・鶴彬(つる・あきら)。 同業他社の知人たちに不可思議な失踪が続き、怯える編集者・和田喜太郎。 不遇にありながら、天才的な論考を発表し続ける、稀代の哲学者・三木清。 法の贄(にえ)となりながら、男たちは己の信念を貫いた。
ベストセラー作家が秘された歴史に命を宿す 「目の前で苦しんでいる人から目を背けることは、どうしてもできん」 山と川と海に囲まれた紀州・新宮。この地に誰からも愛された男がいたーー。 大石誠之助(享年43) 歴史の闇に埋もれた傑士の知られざる半生に光をあてる、著者2年半ぶり渾身の長編小説! 一九〇四年(明治三十七年)、紀州・新宮に西洋の王様がかぶる王冠のような看板を掲げた一軒の食堂が開店した。 「太平洋食堂」と名付けられたその食堂の主人は、「ドクトル(毒取る)さん」と呼ばれ、地元の人たちから慕われていた医師・大石誠之助。 アメリカやシンガポール、インドなどに留学した経験を持つ誠之助は、戦争と差別を嫌い、常に貧しき人の側に立って行動する人だった。 やがて幸徳秋水、堺利彦、森近運平らと交流を深めた誠之助は、“主義者”として国家から監視されるようになっていくーー。 なぜ彼は死ななければならなかったのか。 彼が犯した「罪」とは一体なんだったのかーー。 ドラマチックな筆致と徹底した歴史考察が融合した、超近代的歴史長編!!
『ジョーカー・ゲーム』の柳広司の原点がここに。 書評家・村上貴史氏、絶賛! 「圧巻である。刺激的なミステリ」(解説より) 哲人ソクラテスとクリトンが、ある祝宴に招かれた翌朝。 宴席にいた貴族の青年が、広場(アゴラ)の中心で奇妙な死を遂げた。 アクロポリスの裏では異国風の青年のバラバラ死体と、不可解な文字と模様が刻み込まれた陶器と円盤が発見される。 謎の“ピュタゴラス教団”と、人造人間“ホムンクルス”の仕業か? 都市国家・アテナイの命運をかけた大事件の真相に変人ソクラテスが鮮やかな推理で迫る! 圧巻の長篇本格ミステリ。 解説・村上貴史
野望と陰謀が交錯する満州の人工都市新京。この映画の都は「幻影城市」と呼ばれた。若き脚本家志望の英一は日本を追われ、満州映画協会の扉を叩く。理事長甘粕正彦、七三一部隊長の石井四郎、無政府主義者、抗日スパイら怪人が闊歩する中、不可思議な事件が続発するー。『楽園の蝶』を改題、改稿した決定版。
扇屋の絵師から法橋にまで登り詰めた鬼才、俵屋宗達。生没年不詳の男の一生を、同じ時代を生きた天才らとの出会いから紐解く、波瀾万丈、一気呵成の歴史エンタテインメント。 評判の扇屋「俵屋」の後継ぎとして大旦那の養子となった伊年は、秀吉が開催した醍醐の花見で見た屏風絵や、出雲阿国の舞台、また南蛮貿易で輸入された数々の品から意匠を貪る。彼が絵付けをする「俵屋」の扇は日に日に評判を増していた。伊年が平家納経の修繕を頼まれ描いた表紙絵は、書の天才、本阿弥光悦の興味を惹く出来となる。伊年は嵯峨野で出版・印刷事業を始めた幼馴染みの角倉与一より、光悦が版下文字を書く日本語書物の下絵を描かないかと持ちかけられる。その料紙を手配するのは、これまた幼馴染みの紙屋宗二。かくして本朝の美と叡智の粋を結集した「嵯峨本」が完成した。次に、伊年が下絵を描き、光悦が書をしたためた「鶴下絵三十六歌仙和歌巻」が完成。京の知識人はもちろん、伊年自身もその出来に驚嘆し、涙を流す。その後光悦に鷹峯へ共に移住しないか問われた伊年は、嘗て観た阿国の舞台や来し方を脳裏に浮かべ、誘いを断り、俵屋を継ぐ決意をした。 京都国立博物館120周年記念 特別展覧会「国宝」クーポン付き! カバー:国宝「風神雷神図屏風」(所蔵):建仁寺(俵屋宗達) 表紙:重要文化財「鶴下絵三十六歌仙和歌巻」(所蔵):京都国立博物館(本阿弥光悦/俵屋宗達) 口絵:国宝「平家納経 願文見返し『鹿図』」(所蔵):嚴島神社(俵屋宗達) 以上三点をカラー掲載した豪華造本!
絵画界に革命を起こした「風神雷神図屏風」。爛熟した時代、天才たちとの出会い、天皇直々の評価ーーそのすべてが、扇屋の絵師を鬼才・俵屋宗達にした。 万能の天才・本阿弥光悦からの鷹峯移住を断り、京で「俵屋」を継いだ宗達は、堺の商家の娘・みつを娶り、二人の子を生した。都で一番の扇屋の主人として忙しく働いていたある日、名門公卿の烏丸光広が前触れもなく俵屋を訊ねてくる。烏丸光弘の手引きで養源院に唐獅子図・白象図を、相国寺に蔦の細道図屏風を完成させる。後水尾天皇から法橋の位を与えられ、禁中に立ち入れるようになった宗達は、さらなる名品を模写する機会を得、その筆をますます研ぎ澄ませる。日本の絵画に革命を起こした関屋澪標図屏風、舞楽図屏風、そして風神雷神図屏風ーー世界が憧れた謎の絵師はいかにして生まれ、没したのか。美術界きっての謎が斬新かつ丹念に描かれる。 京都国立博物館120周年記念 特別展覧会「国宝」割引クーポン付き! カバー:国宝「風神雷神図屏風」(所蔵):建仁寺(俵屋宗達) 表紙:重要文化財「舞楽図屏風」(所蔵):醍醐寺(俵屋宗達) 口絵:重要文化財「白象図」(所蔵):養源院(俵屋宗達) 以上をカラー掲載した豪華造本!
人気作家陣が「少年」をキーワードに紡いだ短編作品9本を収録したアンソロジー。家族や友人との関係に悩む繊細な心情や、背伸びするいじらしさなど、少年の魅力がぎゅっと詰まった1冊。(解説/壇蜜)
「ジョーカー・ゲーム」シリーズ作品から太宰治に芥川のパスティーシュ、ホームズまで登場する彩り豊かな物語と、諧謔味あふれるエッセイを詰めこんだ単行本未収録作品集。 この1冊で柳広司の全てがわかる!
仮面舞踏会、ドイツの映画撮影所、疾走する特急車内ーー。大日本帝国陸軍内に極秘裏に設立されたスパイ組織「D機関」が世界を騙す。ロンドンでの密室殺人を舞台にした書き下ろし短編「パンドラ」を収録!
あの日あの場所で何が起きたのか(「道成寺」)、助けられたかもしれない命の声(「黒塚」)、原発事故によって崩れてゆく言葉の世界(「卒都婆小町」)など、エンターテインメントの枠を超え、研ぎ澄まされた筆致で描かれた五編。
「狼王ロボ」の異名を持つ巨大狼を追跡中の老人が、喉を裂かれて殺された。「犯人」は狼なのか?だが居合わせたシートンは、真犯人は他にいると断言するー名著『シートン動物記』の著者、シートン先生は名探偵でもあった!?動物たちを巻き込む怪事件をホームズばりの推理で解決する心優しい連作ミステリ。
世界最強の警護官集団「シークレットサービス」での研修のため渡米したSP首藤は初日、フォトジャーナリストの美和子と出会う。国際テロ組織が大統領暗殺を予告し緊張が走るなか、美和子が誘拐される。首藤は相棒バーンと共に警護を完遂し、彼女を助け出すことができるのか。圧巻のボディガードミステリ。
皆さんがおっしゃるほど、わたしはあの人にとって“悪い妻”だったのでしょうか?ソクラテスの死後、悪妻クサンティッペが亡夫の実像を語る表題作の他、オイディプス、ゼウス、ミノタウロス、イカロス、タレス…いつか耳にしたギリシアの神や人々が、生き生きとよみがえる。平明な文体に深遠な哲学が沁み込んだ掌編集。
知力、体力、先読み能力ーすべてが一級のエリートSP・首藤武紀は、合衆国シークレットサービスで“異例の研修”を受けることに。初日、銃規制を求めるデモに遭遇した首藤は、突如暴れ出した男を瞬く間に制圧し、人質の幼女を助ける。しかしその現場には、大統領暗殺計画を示唆する二枚の写真が残されていた。超一流警護官たちに忍び寄る死神の影。2014年を撃ち抜く怒涛のオープニング&驚愕のラスト!!
残業を終え帰路を急ぐ赤坂俊一が真っ暗な坂道をのぼる途中、うずくまって泣いている女を見かけた。声をかけると、女はゆっくりと向き直り、両手に埋めていた顔をしずかに上げたーその顔は(「むじな」)。ありふれた現代の一角を舞台に、期せずして日常を逸脱し怪異に呑み込まれた老若男女の恐怖を描いた傑作6編。