小説むすび | 著者 : 柴田元幸

著者 : 柴田元幸

天国ではなく、どこかよそで天国ではなく、どこかよそで

『体の贈り物』『私たちがやったこと』『若かった日々』などで知られるアメリカの作家、レベッカ・ブラウンの最新物語集『天国ではなく、どこかよそで』。 「三匹の子ぶた」を踏まえた「豚たち」、「赤ずきんちゃん」を踏まえた「おばあさまの家に」をはじめ、ピノキオ、ヘンゼルとグレーテルなど、さまざまな伝統的物語やキャラクターを、レベッカ流に夢見なおした物語が並びます。 語り直しの切り口は作品によってさまざまですが、単一のメッセージに還元できない、怒りと希望をシンプルな文章で発信しつづける作家の神髄が伝わってくる、豊かな「サイクル」が出来上がっています。 訳者の柴田元幸が「この人の文章は言葉というよりほとんど呪文のようなリズムを持っている」と評するレベッカ・ブラウン独自の文体によって、 読者を暗闇から光へ、厳しさから愛へ、私たちが今いる場所から私たちが行くべき場所へと導きます。 “ここにあるのは「めでたし、めでたし」の死角を辛辣なユーモアで照らしてみせる物語。 そうやってわたしたちが見えないふり、聞こえないふり、わからないふりをしてきた暴力の轍を、怒りでもって洗い出し、祈りをこめて語り直すのだ。” 倉本さおり “そこではみんな、ほんものの肉体を得る。 痛みに苛まれ、声は揺らぎ、歪み、叫ぶ。 闇の中、寓話は変わり果てた姿になって 赦しを求め、こちらを見つめる。 どうしてこんなに、愛おしいのだろう。” 大崎清夏 豚たち The Pigs 狼と叫んだ女の子 The Girl Who Cried Wolf 誰かほかに Someone Else 穴 The Hole デビーとアンジ Debbie and Anji 大皿に載ったあなたの首 Your Head on a Platter ヘンゼルとグレーテル Hansel and Gretel セメントの二つのバージョン Two Versions of Cement 天国ではなく、どこかよそで Not Heaven, Somewhere Else 双子 The Twins ご婦人と犬 The Lady and The Dog 人魚 The Mermaid ハンプティ・ダンプティ Humpty Dumpty わたしをここにとどめているもの What Keeps Me Here 兄弟たち The Brothers ゼペット Geppetto おばあさまの家に To Grandmother’s House 謝辞 訳者あとがき

メアリ・ヴェントゥーラと第九王国 シルヴィア・プラス短篇集メアリ・ヴェントゥーラと第九王国 シルヴィア・プラス短篇集

天才と謳われる早逝の詩人、シルヴィア・プラス。 作者のショッキングな自死から半世紀以上を経た2019年、未発表短篇「メアリ・ヴェントゥーラと第九王国」が新たに発見され、大きな話題となった。 プラスの短篇について「詩にも長篇にもない独自の魅力が、どの短篇にも見つかるのではないかと思う」と評する柴田元幸氏が、強く惹かれた作品を選んで訳した短篇集。 赤いネオンの点滅する停車場で、両親に促されるままに行先の分からない列車に一人乗り込んだ少女の不思議な体験を描く「メアリ・ヴェントゥーラと第九王国」、大きなハリケーンが来た日の病院の騒動を活写する「ブロッサム・ストリートの娘たち」、人々が眠っているときに見る“夢"を集めることに没頭する女性を描く「ジョニー・パニックと夢聖書」など、大人向け短篇7篇と子供に向けて書かれた「これでいいのだスーツ」を収録。 【収録作品】メアリ・ヴェントゥーラと第九王国/ミスター・プレスコットが死んだ日/十五ドルのイーグル/ブロッサム・ストリートの娘たち/これでいいのだスーツ/五十九番目の熊/ジョニー・パニックと夢聖書/みなこの世にない人たち 【著者略歴】 シルヴィア・プラス Sylvia Plath (1932-63) アメリカの詩人、作家。ボストン生まれ。生前に刊行されたのは詩集『The Colossus(巨像)』(1960)と自伝的小説『ベル・ジャー』(1963 )のみ。死後1965年詩集『エアリアル』、1977年に短篇・エッセイ・日記の抜粋『ジョニー・パニックと夢聖書』、1981年『The Collected Poems(全詩集)』などが出版され、この『全詩集』でピュリッツアー賞を受賞。2019年、執筆から60年以上を経て『メアリ・ヴェントゥーラと第九王国』が刊行された。 【訳者略歴】 柴田元幸(しばた・もとゆき) 1954年東京都生まれ。翻訳家、東京大学名誉教授。著書に『生半可な學者』(講談社エッセイ賞受賞)、『アメリカン・ナルシス』(サントリー学芸賞受賞)など。現代アメリカ文学のみならず、古典も含めて多くの翻訳を発表。トマス・ピンチョン『メイスン&ディクスン』の翻訳で日本翻訳文化賞受賞。編集代表を務める文芸誌「MONKEY」および英語文芸誌MONKEY New Writing from Japanでは鮮烈な企画を展開、日米の読者を魅了している。2017年、早稲田大学坪内逍遥大賞受賞。

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