著者 : 柴田元幸
アメリカ合衆国で書かれた短篇小説、その“名作中の名作”を選ぶ。ヘミングウェイ、フォークナーなどの巨匠による「定番」から、ハーストン、ウェルティ、オルグレンの本邦初訳作まで。激動の時代、20世紀前半に執筆・発表された全12篇を収録。
切れぎれの回想、現在のノアの心理、オーパルからの手紙、ノアの父ヴァージルや母ルービーをめぐる一連の奇妙な逸話…。事実は見えなくても、ノアの胸に満ちる強い喪失感は、一ページ目からはっきり伝わってくる。その静かな哀しみが、ノアと猫たちとのどこかとぼけたやりとりや、ノアの父親ヴァージルのやたらと衒学的な物言いなどから浮かび上がる淡いユーモアと絶妙に混じりあい、それらすべてが、文章教室的規範から逸脱することを恐れない自在の文章で語られることによって、この作品を、昨今の小説には稀な、とても美しい小説にしている。(訳者・柴田元幸)哀しみを抱えるすべての人へ。2006年刊行の「とても美しい小説」を復刊。
「端っこの変なところ」を偏愛する2人の翻訳家が、新たに発見した、めっぽう面白くて、ちょっと“変”な作家たち。心躍る“掘り出し物”だけを厳選したアンソロジー。対談「競訳余話」も収録。
世界文学の巨人が創出したアメリカ南部の伝説の地ヨクナパトーファの全貌を明かす究極の小説選。作家をノーベル賞に導いた奇跡の作品集を最強の翻訳陣による画期的新訳で。
人魚の死体が打ち寄せられた町の人々の熱狂と奇妙な憧れを描く「マーメイド・フィーバー」。夜中に階下の物音を聞きつけた妻が、隣で眠る夫を起こさずに泥棒を撃退しようとあれこれ煩悶する「妻と泥棒」。夜中に自分の名前を呼ぶ声を聞いた旧約聖書の少年の物語を軸に、声を待ちわびる者たちの心のうちをたどる傑作「夜の声」など、唯一無二の世界を生み出す名人が緻密な筆致、驚異の想像力で紡ぐ8篇の声。
五輪(オリンピック)と疫病(コロナ)に揺れる都(TOKYO)で幽霊たちの大騒ぎ!来日したアメリカ人作家の前に現れる幽霊また幽霊。柴田元幸との名コラボが生んだ連作綺譚、世界初刊行!
ニューヨーク州在住の作家マシュー・シャープは、毎週1本、ごく短い形式の小説“超短篇”をウェブ上にアップし続けていったー。1年の間に書き上げられたその52篇に、書き下ろしを加えて再構成、全75篇を一冊に。へんてこだけど繊細、クスッと笑えて、どこか胸を打つ。訳者が「いつか紹介したかった」と語る現代アメリカの作家、初の邦訳短篇集。
“謎SF”の世界へようこそ!謎マシン、謎世界コンタクト、謎の眠り…中・米の現代文学最前線から、インスピレーションによって紡がれた偏愛の7篇の競演!巻末に柴田元幸×小島敬太の対談を収録。
魔法の鏡磨きが男と恋人の心にもたらす光と影を描く「ミラクル・ポリッシュ」。町に謎の自殺願望が流行した半年を記録する「私たちの町で生じた最近の混乱に関する報告」。一本の決定的本塁打がたどる驚異の軌跡を描く表題作など、多彩な奇想、緻密な筆で壮大かつ深遠な宇宙を描く8篇。著者自身による短篇小説論も収録(日本版のみ)。
彼は28歳で、自ら知る限り何の野心もない。大不況下のブルックリン。名門大を中退したマイルズは、霊園そばの廃屋に不法居住する個性豊かな仲間に加わる。デブで偏屈なドラマーのビング、性的妄想が止まらない画家志望のエレン、高学歴プアの大学院生アリス。それぞれの苦悩を抱えた男女4人は、見捨てられたこの小さな家から、不確かな未来へと歩み出す。不安の時代をシェアする若者たちのリアルを描く愛と葛藤と再生の物語。
出張先のメキシコで、突然の雨を逃れて入った古書店。そこで見つけた一冊の書物には19世紀に、スコットランドのある町で起きた黒曜石雲という謎の雲にまつわる奇怪な出来事が書かれていた。驚いたことに、かつて、若かった私はその町を訪れたことがあり、そこで出会ったある女性との愛と、その後の彼女の裏切りが、重く苦しい記憶となっていたのだった。書物を読み、自らの魂の奥底に辿り着き、自らの亡霊にめぐり会う。ひとは他者にとって、自分自身にとって、いかに謎に満ちた存在であることか…。幻想小説、ミステリ、そしてゴシック小説の魅力を併せ持つ、マコーマック・ワールドの集大成とも言うべき一冊。
通りすがりの男がいきなり平手打ちを食わせてくる事件が続発する「平手打ち」。いつのまにか町に現われ、急速に拡大していく大型店舗をめぐる「The Next Thing」。空から謎の物体が到来する「大気圏外空間からの侵入」。“異者”となった私と二人の女性との奇妙な交流を描く表題作など、精緻な筆が冴えわたる味わい深い7篇。
うらぶれた路地裏が冒険と発見に満ちていた子供時代を叙情豊かに描くデビュー短篇集。夏になるとどこからか現れる行商人の秘密を知った「パラツキーマン」。高架下の廃屋でたくさんの鳥たちと暮らす風変わりな男との邂逅を描く「血のスープ」。少々ネジが飛んでいるけれど子供たちのいい遊び仲間だった「近所の酔っ払い」。人生の岐路に立った少年二人が夜更けの雪の町をさまよう「長い思い」。映画の恐怖が現実に忍び込んできて逃げ惑う少年を描く「ホラームービー」。不思議な生業を営む叔父との奇妙な日々が胸を打つ結末に行きつく「見習い」など珠玉の11篇に、日本版特別寄稿エッセイを収録。
愛と笑いを与えてきた作家カート・ヴォネガットの全短篇を、8つのテーマに分類し集成。完結篇となる4分冊の第四巻には、「フォスター・ポートフォリオ」「ハリスン・バージロン」をはじめとする「ふるまい」「リンカーン高校音楽科ヘルムホルツ主任教諭」「未来派」テーマの28篇を収録する。