著者 : 森村誠一
経理課員の轢き逃げ死、失踪、そして横領疑惑。度重なる事件の裏には大企業の暗黒面が隠されていた。単身赴任中の出向社員が腐敗した会社の不正を暴いていく。正義のためというより、ただ愛するひとのために、たった一人の闘いが始まった。人生のレースから降りかけていた男が命懸けで真実に迫ろうと志したとき、女は…。
会社に捨てられた桑崎は、恨みから部長を撲殺する。逃走の途中、桑崎は追突事故に巻き込まれ、前の車の中で女が焼死するのを目撃する。翌日、ニュースは、部長が殺人現場から遠く離れた路上で「ひき逃げで死亡した」と報じた。「違う!」。二つの事件は奇妙に絡み合い、驚くべき人間模様が浮かび上がる。
タクシードライバーの蛭間正は、深夜、一人の女を乗せる。だが、彼女は「佐賀県に連れて行って」という言葉を遺し、車内で死亡。女は何者かに胸を刺されていた…。女性の名前は香月雅代。しかも、雅代の遺族の懇願で、蛭間は死体を乗客として、タクシーを走らせることにー。東京から佐賀までの道程で発生する凄まじい豪雨、突然の落石、そして、正体不明の追跡者。タクシードライバーが未曾有の困難に挑む戦慄のサスペンス。
“窓際族”という会社に飼いならされた生活を送る哀川真也は、謎の美女・巨勢玲子との出逢いで運命が一変する。哀川は玲子から誘われ、借金地獄やストーカー被害などで苦しむ人々を救う組織「アネックス」に参加した。彼はその活動の中で生きることへの情熱を取り戻していった。だが、「アネックス」が某独裁国からの亡命少女を匿ったことで事態は急変、哀川はメンバー共々過酷な状況に陥っていくー。己に眠る野性を解き放ち、男は大切なものを守り抜くことができるのか。人間の本質に深く踏み込んだ森村ワールドの大河巨編。
サラリーマンの妻から一転、市長夫人、そしてベストセラー作家となった彩。だが一躍有名人となった彼女に、過去からの忌まわしい男たちがつきまとうようになる。夫に気づかれぬように、彩は過去の男たちを排除しようと計画する。ところが実行寸前、彩を脅していた主犯格の男が死体で発見された!幸せな人生を約束されたはずの女性に訪れた突然の悲劇ー。さらに事件は、過去と現在がめまぐるしく錯綜し、意外な方向へと迷走していく。結婚という誰もが一度は考えるテーマに、男と女の本当の幸せとは何かを問うた渾身のサスペンス小説。
鎌倉幕府は崩壊し後醍醐天皇の親政がはじまったが、まだ多くの難問を抱えていた。北条一族の残党は各地に残り、武家社会の復活を望む声も大きかったのだ。北条時行が決起し、各地からも武将が集結し、鎌倉はいとも簡単に奪われてしまった。足利尊氏は征夷大将軍を拝命することを期待し、動かない構えでいたが、後醍醐天皇に反逆し、兵を鎌倉へと向けた!!壮絶なる南朝と北朝の戦いを描いた歴史大河小説の白眉。
束の間の平和は崩れ、足利尊氏が反逆し再び列島に戦乱の嵐が吹き荒れる。後醍醐天皇軍の新田義貞は、無残な敗北を喫し勢いづいた足利軍の攻勢に対して南朝方は振るわなかった。追い込まれた楠木正成は、いままで守り通した天皇への名分に殉じて、勝ち目のない戦いと知りながら哀切を胸に湊川の戦いへと向かうー!!森村文学の記念碑的な歴史大河小説、堂々の完結。
鎌倉幕府に対し単独で兵を挙げた楠木正成は、一千の兵で千早城に篭り、数万の軍からの攻めを半年以上も凌いできた。この楠木軍の奮闘が、反幕府の精神的な支えとなり、隠岐に配流されていた後醍醐天皇が、島からの脱出を決意する。厳重に警護されている天皇を連れ出し、小さな舟で激しい海流の中を進む、無謀ともいえる脱島計画は成功するのか!?血の匂い立つ激動の時代を描いた、歴史大河小説。
後醍醐天皇の鎌倉幕府討伐軍に、全国から数々の武将が加わってきた。鎌倉幕府の中心にいた新田義貞、足利高氏も叛旗を翻し、後醍醐軍に加勢する。一気に敗勢に回った鎌倉幕府軍は、とうとう鎌倉に追い込まれた。三方を山に囲まれた地形を活かした幕府軍を攻めきれない新田義貞は、敵の意表をつく作戦を展開するが…。未曽有の動乱の時代を描いた、歴史大河小説。
鎌倉幕府の実態は腐り果てていた。執権は遊びほうけ、内管領が政治を思いのままにしていた。幕府討幕の志が捨て去れぬ後醍醐天皇は、近しい者と密議を繰り返していた。そして、夢のお告げに現われた天皇親政の先駆けとなる武士・楠木正成に使いを送るが、幕府側に動きを察知されてー。戦乱の世を激しく生きた英雄たちを、情熱的な筆致で描いた著者渾身の歴史大河小説。
後醍醐天皇と楠木正成は互いに、乱れた政治を行う鎌倉幕府討幕の思いを強くしていた。しかし後醍醐天皇は幕府に囚われ、隠岐島へと配流されてしまった。独り残された正成は、それでも敢然と挙兵する。たった一千の手勢の楠木軍は、数万の幕府の大軍と対峙するが…。楠木軍の勇猛な戦いが発端となり、時代は混沌の渦へー。不屈の人間群像を、雄大な構想で描いた歴史大河小説。
霧の中、公園でデート中のカップルが、暴漢に襲われた。二人を助けようとした警察官は、逆にナイフで刺殺されてしまう。そして、助かった二人もなぜか現場から逃げ去ってしまった。数日後、男は女から別れを告げられた。「卑怯者!」という言葉を残して。男は自身の「罪」を償うために刑事に転職するがー。全てを懸けて意地を貫き徹した男を描く、白眉の“証明”シリーズ。
山村で起こった大量殺人事件の三日後、集落唯一の生存者の少女が発見された。少女は両親を目前で殺されたショックで“青い服を着た男の人”という以外の記憶を失っていた。多くの人命を奪った事件であったが、まったく手がかりは残されていなかった。しかし意外な所から、事件の糸口が見つかり…。人間の心奥に潜んだ野性を鋭く追求し、映画化され大反響を呼んだ傑作“証明”シリーズ。
「母さん、僕のあの帽子、どうしたでせうね?」西条八十の詩集をタクシーに忘れた黒人が、ナイフで刺され、ホテルの最上階に向かうエレベーターの中で死亡した。棟居刑事は被害者の過去を追って、霧積温泉から富山県へと向かい、ニューヨークでは被害者の父の過去をつきとめる。日米共同の捜査の中であがった意外な容疑者とは…!?映画化、ドラマ化され、大反響を呼んだ、森村誠一の代表作。
新宿で助けた藤村雅子と、金沢高一はホテルで一夜を過ごしてしまう。雅子との一夜は、あまりにも甘美で金沢の心を揺さぶるものであったが、翌朝、手紙も残さずに雅子は消えてしまう。ところがその夜、金沢の妻の愛人が新宿で殺されていた。金沢のアリバイを証明できるのは雅子だけだったー。そして驚くべきことに、同じ頃、雅子の夫も殺されていた!事件を追う棟居刑事は、二人の間に隠された事実に、捜査の糸口を見つけるが…。森村誠一が男と女の間の奇妙な関係を描いた、長編・社会派ミステリ。
孤独な日々を送る老武士はふとした縁で知り合った孤児の美少女の絵を描くことに生きる縁を得る。絵は江戸で評判となるが、ある晩、少女は無惨な屍体となって見つかった。市中を荒しまわる若者集団、辻小僧に輪姦されたのだ。薄幸な娘の敵をとるため、余生をかけて老骨の武士は立ち上がる(敗者の武士道)。他八篇収録の完結篇。
駅のホームで突き落とされそうになる。見知らぬ車に乗せられて誘拐されそうになるー。有数の財閥・山上グループの社長令嬢・山上かおりは何者かに命を狙われていた。困り果てたかおりが逃げ込んだのは、社会からドロップアウトし、奇妙な経歴を持つ八人が住む“梁山荘”というアパートだった。八人はそれぞれの特技を生かして襲撃犯からかおりを守り始める。かおりは目撃者として、棟居刑事の捜査する殺人事件の参考人に挙がっていた。事件は意外な接点で繋がり始める…。都会で蠢く人間の友情と殺意を描く、傑作社会派ミステリ。
種々雑多な人間が去来集散し、人生の破片を落としていく駅・新宿。その新宿で、あるスナックのママが人間の坩堝に吸い込まれるごとく失踪した。同じ頃、商談のため長野から上京した骨董商が忽然と消息をたってしまう。無関係に見えたふたつの事件は、父を探す娘と謎を追うスナックの客の前で、意外な形で交錯した。車のトランクで入れ替わった死体とは?二重三重に錯綜した糸が紡ぎ出す傑作ミステリー。