著者 : 椎名誠
あらゆる生物が樹海でしか生きられなくなった、とある未来の終末惑星。巨大生物にさらわれた少年スオウの目の前に、航空機に乗った謎の男が現れてー?あなたのココロの12歳が騒ぎ出す!?シーナSF最新作。
ナマコとコノワタを愛する作家の「私」は、新宿の居酒屋店主に誘われて、知床半島への旅に出る。そこで出会った漁師との縁で、「私」はその後、国際都市・香港でのナマコ取引現場に立ち会うことに。高級食材として需要が急増するナマコをめぐり、アヤシイ男たちが続々と登場する。食材と旅のオモシロ小説。
二十三歳の松尾勇は、デパート業界の新聞や雑誌を発行している小さな会社の新米編集者。会社創業以来の人事異動によって配属された編集部で、『店舗経営月報』という、三十二頁、発行部数八百部という地味な雑誌を作っている。勤め始めて約一年、会社が新橋から銀座のビルへと引っ越した直後、松尾に大きな転機が訪れる。前任者の突然の退社により、なんといきなり編集長になってしまったのだ!といっても部員は自分ひとりだけ。経験もなければ部下もいない松尾の悪戦苦闘の日々が始まった。椎名誠初めての新聞連載小説として話題を集めた傑作長編がついに復刊。
シーナの息子一家が日本に帰ってきた。しっかりものの風太君、おしゃまな妹の海ちゃん、生まれたばかりの琉太君。三人のマゴたちに囲まれヨロコビに打ち震えるシーナ。仕事の合い間にきっぱり育児参加、週末の家族全員での寿司パーティが楽しみでのう、とマゴバカ街道まっしぐら。東日本大震災の混乱を乗り越え、気がつくと三匹はそれぞれの成長をみせていく。シーナ家三世代の物語、感動の最終章。
嵐の夜、十五人の少年を乗せた船はニュージーランドの港から流されて、孤島へと辿り着く。自力で生き抜かねばならない少年たちの努力、恐怖、勇気、友情、反目、そしてその末に…。全世界を夢中にさせた冒険物語の金字塔、「シーナ家にとっても大切な一冊」を椎名誠・渡辺葉父娘が共訳!
東京の下町・小岩で、友人たちと共同下宿生活を送っていた二十三歳のシーナマコトは、偶然見た新聞の求人広告がきっかけで、小さな業界新聞社の編集者になった。新橋西口通りのずっと先にあるオンボロビルに入る会社で、怪しく個性的な人物たちと出会い、仕事、酒、賭け事という怒涛のサラリーマン生活を過ごすシーナ。そして、恋の挫折も経験し訪れた、ひとりの女性との決定的な出会い…。明るくおかしくて、でも少しかなしい青春を描いた『哀愁の町に霧が降るのだ』に続く自伝的青春小説の傑作が復刊!巻末には中川淳一郎氏による特別寄稿エッセイを収録。
生物と機械の境界が曖昧になった近未来のトーキョー。便利屋のおれが引き受けた「ラクダを捜してほしい」という奇妙な依頼が、謎の中国人、妖艶なひとつ目女を道連れにした、驚異に満ちた冒険へと発展する。著者の歩いたアジアの風景が、誰も見たことがない魅惑的な世界に結実した会心のシーナ的SFワールド。
一九六四年、東京。深夜の皿洗いのバイトをするおれは、官能の塊のような女イスズミをめぐってすさまじい喧嘩に巻き込まれる。職を転々とし、次に出会ったのは、後に妻となる女性だったーぎらぎらとあぶなっかしい若き日々が二十年後の冒険と交錯する、渾身の青春冒険純文学。
昭和三十年代。舞台は海と山に囲まれた小さな町。小五になるぼくは、毎日、自然の中で小さな冒険を繰り返している。仲間は神田パッチン、遠田ガチャ丸、タタミ屋のいち六、及川のデブ。夏休みになった日、五人は学校で立ち入りを禁止された川の上流を目指すが…。けんけん鬼、井戸ポンプ、プロレス中継、LPプレイヤー、『おもしろブック』など懐かしい昭和の風物の中で語られる熱く元気な青春小説。
脂まじりの雨が降る街を、巨大でいびつな銀色の月が照らしだす。銀天公社の作業員が、この人工の月を浮かべるために、月に添って動くゴンドラで働いている。そこは知り玉が常に監視し、古式怪獣滑騙が咆哮する世界だ。過去なのか、未来なのか、それとも違う宇宙なのか?あなたかもしれない誰かの日常を、妖しい言葉で語る不思議な7編。シーナ的言語炸裂の朧夜脂雨的戦闘世界。
ある大きな戦争で崩壊した近未来世界。金も居場所もなくなった元戦闘員の三人組が、偶然、手に入れたオンボロ戦艦「銀鼠号」で海賊稼業を始めることになった。用心深く情に篤い灰汁、冷静沈着で陽気な可児、短気であくどい鼻裂。勢い込む三人だったが、戦艦は超低スピード、肝心の機関砲が使えない…。プロペラ巨人、泥豚、雲人間など未知なる生物が次々現れるシーナのドキドキ海洋大冒険SF。
ヨロコビとコーフンに満ちた、少年時代の黄金の日々。夏休みには、いかだで海まで川下り。秋には泊まりがけで、堤防の突端までトロッコを走らせる。冬休みにはクスノキの上に秘密基地を作り、幻灯会。手作りの玩具とスリリングな出来事の数々。作家・椎名誠が仲間たちと体験した、小学校5年の頃の大冒険記。
三十年住んだ武蔵野の地を離れ、妻とふたりで都心へと居を移した「私」。ゆっくりと確実に変化していく日常と、家族の形。近づいてくる老いと沈殿していく疲れを自覚しながら、相変わらず取材旅行に駆けまわる毎日だ。そんなとき、古い友人の悪い報せが「私」を大きく揺るがせる…。『岳物語』から二十余年。たくさんの出会いと別れとを、静かなまなざしですくいとる椎名的私小説の集大成。
一日一麺の人生をつらぬく作家は、尿酸値の高さを指摘され、非プリン体系食品に覚醒する。代用麺類として着目したモヤシに激しく傾倒、妻も巻き込みモヤシ料理に工夫を重ねる。ついに利尻島に栽培キットを持参しモヤシ育成の旅が始まる。旅と食い物にこだわり抜く堂々の“私モヤシ小説”。同時収録「モズク」。
山歩きの途中、男は偶然見かけた古い鉄塔の上に小屋を建てて、奇妙な空中生活を始めた。厳しい冬にも耐え、ようやく春が訪れたのだが…(『鉄塔のひと』)。ある秋の朝、庭先に一人の女がいた。まるで妻のようにふるまうのだが、まったく見覚えはない。しかも困ったことに、私には妻に関する記憶がなかった!(『妻』)。シーナ的発想が産んだ摩訶不思議な世界を描く短篇十連発。
商用で中国奥地を訪ねた男が、ふと立ち寄った少数民族の村。そこでは人が空を飛んでいた。幻を見ているのだと思いつつも、いつしか現実との境目がわからなくなり…(「中国の鳥人」)。タクシー運転手の饒舌にうんざりして、思わず口走った小さな嘘が招いた悲劇とは(「たどん」)。妄想が産みだす恐怖と笑いに満ちた不思議な世界へ読者を誘う幻想譚八編。著者の短編小説リストを収録。
月夜の晩。都会を遠く離れ、海へとボートを漕ぎ出す男と女。うねりを乗り越えて波間にただよう二人は、しかし、恋人同士ではなかった…。(「うねり」)。夢と現実のあわいでつかのま触れあう男と女。そんな人々の、一瞬ではあるけれど確かにそこにあった思いを描いた抒情小説集。表題作「土星を見るひと」の他、「壁の蛇」「クックタウンの一日」「ボールド山に風が吹く」など計7編を収録。