著者 : 樋口毅宏
「東京を出よう」世界的な群発火災、異常乾燥と未知のウイルスにより、経済は完全に停止し、無秩序な世界が到来した日本。略奪が常態化した都会に身の危険を感じた同性カップルの久佐葉イツキと葉子は、息子の貴一とともに、ショットガンを携え東北の「恵田町」を目指す。死と裏切りが隣り合わせの旅路の果てに、イツキと葉子が見たものとは…?『民宿雪国』の興奮、ふたたび!一気読み必至の“サバイバル”エンターテインメント。
2019年、45歳独身で人生に絶望したフリーターのトリコは、睡眠薬で自殺をはかった。だが、意識を取り戻したトリコが目にしたのは、バブル期まっただ中の1989年の渋谷だった。人生をやり直す決心をしたトリコは、その後不幸な結末を迎える憧れの2人組のミュージシャン“ドルフィン・ソング”の未来を変えるべく奔走し始める。果たしてトリコに幸せは訪れるのか?小説を革新し続ける奇才が挑んだ会心作!
有馬豪は、30歳という若さながら、渋谷にあるファンドマネージメント会社のCEO。5歳になる娘の亜梨が通う保育園で、鐘山明人というおっさん建築家と出会い、LINEで飲みに誘われた。「お互いイクメンとして妻の悪口を言い合おうよ」と。楽しく過ごした豪だったが、その晩、明人に唇を奪われてしまう。怒りながらも急速に明人に傾いていく豪。これは天国への入口か、地獄への扉か?
官能小説の依頼に難航していた女性ホラー作家は、女性同士のカップルの後をつけ漫画喫茶へ。隣の壁に耳を澄ませ聞こえてきたのは、衣擦れ、溜息、潤みの音で…(「壁の向こうで誰かが」)。医師の寺沢は急患の老女の足に驚く。爪先に向かって細く、指は折り畳まれ、足裏は窪んでいた。纏足だ。それは、性具だったー(「Lotus」)。歪んだ欲望が導く絶頂、また絶頂。五人の作家の官能アンソロジー。
大手文具メーカー「あねちけ」に勤めるうだつが上がらないサラリーマン・富岡兼吾は、日頃から自分に厳しい絵に描いたような体育会系上司・下永良一に不満を抱いていた。ある日、珍しく下永から酒に誘われた兼吾は、酔った上司を家まで送る羽目に。しかし、兼吾はそこで憎き敵の妻とはとても思えない美しい女性、秀子と出逢ってしまう。「上司の妻を寝取ってやる!」兼吾の心に芽生えた復讐というにはあまりにも突飛な企み。その企みを実行に移す時、物語は誰も想像がつかなかった衝撃の結末に向け加速する。果たしてこの小説は、「官能」なのか、「純愛」なのかー。
セレブ人妻に元ホストが黒い罠をかける「甘い復讐」。鬼畜男の独白が世界を変える「永遠とドラゴン」。結婚式での異常な一幕を描いた「さくらの結婚」。旦那との切ない想い出を語る「ある芸者の証言」。恋を成就させるため男が不思議な塔に上って敵と戦う「十階建てのラブストーリー」。病魔に怯え、欲望に耽溺する、優柔不断な作家の姿を描く「余生」。これぞ小説の極北!鬼才が放つ短篇集。
2019年。45歳、結婚経験なし、子どもなしのフリーター・トリコは、人生に絶望して、睡眠薬をまるごとひと瓶飲んで自殺をはかる…。意識を取り戻した先は、昭和の終わり、バブル期まっただ中の1989年の渋谷。30年前にタイムスリップしたトリコは、憧れだったミュージシャン、ドルフィン・ソングの解散を阻止すべく、奔走する!
愛する女が他の男に抱かれると異常な悦びを覚える白鳥。脳内の友から逃れようと、酒に溺れるロック狂の逸馬。醜貌の蜂村は部長の肩書きで女を誑かしては教祖のように振る舞い、茂吉は一族の宿命に縛られる。世間から蔑まれ生きるエロ本出版社の男たちは、欲と自意識に囚われ、やがて凄まじい一撃を炸裂させるー。著者が編集者時代と決別すべく描いた、超弩級の物語!
大手文具メーカー「あねちけ」に勤める富岡兼吾(33歳)は、普段から自分に厳しい昭和的体育会系上司・下永に不満を持っていた。ある日、酒に酔った下永を家まで送った兼吾は、下永の妻・秀子と出会い、復讐のためのある企みを思いつくーこれは官能小説ではない…純愛小説である。
一九八六年に生を受けた僕、宇津木の鬱屈の正体、それはアメリカという国家だ。都合のいいようにルールを決め、世界の覇者気取りで澄ましているあの国を、心の底から軽蔑している。嫌いじゃない、大ッ嫌いだ。では、僕の取るべき行動は何か。強者の脳天に斧を振り下ろすこと。そう。テロルこそもっとも有効な手段なのである!僕はまずアメリカの大学への留学を決め、そこから事を始めた。
大勢に惜しまれながら、国民的画家・丹生雄武郎が亡くなった。享年九十七。彼は一方で寂れた民宿のあるじでもあったが、その生涯は未だ多くの謎に包まれているー。期待した筋書きを幾度も裏切られる破天荒な構成、そして昭和史の裏面を抉りながら最終的に物語が辿りつくのは…!?小説界が驚倒した空前絶後、衝撃の大傑作。
“雑司ヶ谷の妖怪”こと、泰幸会教祖・大河内泰が死んだ。享年102。葬儀に参列するため中国から帰国した俺を待っていたのは、ババアが書き残した謎の遺書。教祖のイスと莫大な財産は俺の父親に譲るというが、親父ならとっくに死んでいる。ババアの魂胆は何か?初代教祖の戦前戦後の過去と、二代目就任をめぐる抗争劇の現代が交錯する、衝撃の問題作「雑司ヶ谷」シリーズ第二弾。