著者 : 横山信義
一九四二年一〇月、欧州の戦争はアジア太平洋地域に飛び火し、日本は米英蘭との戦争状態に突入する。連合艦隊は大きな被害を出しながらもイギリス東洋艦隊を撃破、南方資源地帯を抑えることに成功した。 一方、アメリカ海軍は対日侵攻作戦「オレンジ・プラン」を発動。米太平洋艦隊の新鋭艦三隻を含む戦艦九隻がハワイを出撃する。 対して連合艦隊が決戦に投入できる戦艦は、新鋭艦の「大和」を加えても七隻。質量ともに劣勢なのだが、空母勢力では優っていた。 この航空戦力で漸減邀撃作戦を展開すれば、艦隊決戦を有利に運ぶことができるはずだ。 しかし、米艦隊はウェーク島近海に拠って同島の基地航空隊と連携することで、空母の不足を補う作戦に……。 「ヤマモトは、航空主兵思想の提唱者だとの情報があります。水上部隊では劣勢でも、空母や基地航空隊の戦力を充実させることで、太平洋艦隊に勝利し得ると考えているのかもしれません」
一九四一年九月、近衛首相とルーズベルト大統領の直接会談により日米間の緊張は緩和され、太平洋での戦争は回避された。 だが欧州では、ドイツの快進撃を阻止すべく、米国参戦を求める声が高まってゆく。これを受け、米国政府はついに参戦を決定。一九四二年一〇月のことである。 これにより日独伊三国同盟の参戦条項が発動、日本も米英蘭との戦争状態に入ってしまう。 開戦に至った以上、連合艦隊継は戦力確保のため南方資源地帯の攻略を開始する。 だがそこに新鋭戦艦「プリンス・オブ・ウェールズ」「デューク・オブ・ヨーク」を擁する英国東洋艦隊が立ち塞がった。対する日本の南方艦隊の戦艦は「金剛」「榛名」のみ。 この圧倒的な戦力差を覆し突破する手立てはあるのかーー。 艦隊戦になれば、我が軍が有利だ。 イギリス東洋艦隊司令長官トーマス・フィリップス大将
米国は恐るべき底力を発揮し、ついに連合艦隊を圧倒する大艦隊を繰り出してマリアナを陥落させた。占領されたサイパン島にB29爆撃機が進出すれば、首都東京を含む日本本土が攻撃可能になってしまう。 硫黄島基地から間断なく空爆を仕掛け飛行場建設を妨害するも、わずかな時間稼ぎにしかならないことはわかりきっていた。 多数の主力艦を失った連合艦隊に対し米艦隊はさらなる増強を続け、もはや彼我の戦力差は絶望的に開いてしまっている。 さらに、米軍が硫黄島攻略を狙っているという情報が。 追い詰められた連合艦隊は、旧式戦艦をも含む残存艦艇をかき集め悲壮な覚悟の元に出撃する。 果たして米軍の進撃を止めることができるのか。 「硫黄島は断固死守しなければならない。万一硫黄島が陥落したら、本土空襲は確実なものとなる」
豪州を連合国から脱落させる日本の戦略は頓挫する。 連合艦隊司令長官近藤信竹大将はソロモン諸島とニューギニアの兵力を引き上げラバウルの防備を固めて迎え撃たんとするが、米海軍は手薄となっていたカビエンを奇襲。 トラックとの連絡を絶たれたラバウルは敵中に孤立し、トラック諸島も空襲にさらされ艦隊泊地としての機能を喪失してしまう。 豪州を守り切った米軍が次に狙ってくるのは、マリアナ諸島である。 ここに基地が構築された場合、日本本土が重爆撃機B29の攻撃圏内に入ってしまう。 新鋭エセックス級空母10隻を押し立てて迫りくる米海軍に対し、連合艦隊も空海の総力を挙げて立ち向かうがーー。 「米軍は十中の十までマリアナに来る。GF司令部は、そのように判断している」
一敗地に塗れた第一次珊瑚海海戦から半年。 連合艦隊は第二次珊瑚海海戦に勝利し、ついに要衝ポート・モレスビーを陥落させた。 だが、米軍は潜水艦と航空機による封鎖作戦を敢行。基地の設営は遅々として進まず、日本軍は前進することができずにいる。 この停滞状況は先に占領したガダルカナル島も同様であり、守備隊への補給すら困難になりつつある昨今、両拠点の維持は負担にしかならないところであった。 そこでいったん戦線を縮小し、態勢を整えるため日本軍は両地から撤収することとなる。 しかし、それを米軍が座して待つはずはなくーー珊瑚海において三度、日米の艦隊が激突する。 「撤退する日本軍ではなく、援護に当たる敵の主力を攻撃目標とする」
戦艦「大和」率いる第三艦隊は米海軍機動部隊との決戦を制し、砲戦により新鋭戦艦「ノース・カロライナ」「ワシントン」をも撃破。米軍を押し戻すことに成功した。 これでソロモンの覇権を握ったかに見えたが、占領したばかりのガダルカナル島は激しい空爆と潜水艦による補給の妨害を受けて、飛行場の再建は遅々として進まない。 やがて日本海軍の拠点たるラバウルまでもが空襲を受けるに至り、連合艦隊はさらなる攻勢の必要性を痛感する。 だが、オーストラリアが連合軍から脱落することを許容できないアメリカ合衆国は、ただちに陸海軍の増援を派遣し連合艦隊を待ち構えていた。 「豪州の降伏か中立化がかなえば、米国は反攻のための重要拠点を失います」
珊瑚海海戦の敗退によって明らかとなった空母機動部隊が抱える弱点、すなわち通信能力の不足と攻撃に対する脆弱さを一挙に解決するべく、戦艦「大和」を前線に送り出した。 この英断により、第一機動艦隊はソロモン海にて米艦隊に圧勝する。 連合艦隊はすぐさまニュージョージア島に前進、米豪分断作戦は成功するかに思えた矢先、米軍がガダルカナル島に上陸したとの情報が。 ラバウル基地から空爆を仕掛けるとともに、重巡「鳥海」率いる第八艦隊、さらに戦艦「金剛」「榛名」を主力とする第二艦隊も出動するが、米軍の飛行場建設阻止には至らない。 ついに第一航空艦隊あらため第三艦隊にも出撃命令が下り、戦艦「大和」は再び空母を率いて南洋へ向かうーー。 「ソロモンは彼らにとり、死守しなければならない重要拠点なのだ」
昭和一七年五月、連合艦隊は航空母艦を主力として米英の海軍を連破し、破竹の進撃を続けマレー、フィリピンの制圧に成功した。 次なる目標は、オーストラリア。 かの国を連合国から脱落させ、南太平洋における日本の覇権を確立する。そのためにはニューギニアの要衝ポート・モレスビーを奪取し、ここを拠点として豪州に圧力をかけるのである。 だが、米海軍も空母を前線に投入し、史上初となる空母対空母の対決ーー珊瑚海海戦が繰り広げられることに。 対決は日本側の敗退に終わり、戦略目標だったモレスビー攻略も頓挫してしまった。開戦以来無敵を誇ってきた機動部隊には、深刻な問題が隠されていたことが顕わになったのだ。しかし、航空母艦という艦種自体が抱える弱点を克服することは容易ではない。 事態を重く見た連合艦隊司令長官山本五十六は、誰もが驚愕する決断を下したーー。 「『大和』は、帝国海軍の切り札です」 「だからこそ、機動部隊に配属するのだ」
航空主兵主義を採用した連合艦隊による、大艦巨砲主義の米海軍撃退には限界が見えていた。米海軍の新鋭空母や新型戦闘機の登場は、連合艦隊の航空優勢の維持を困難なものに変えつつある。 もはや日本に残された道はただひとつ。 かの日本海海戦に匹敵する大勝利をもって、米国を講和会議の場に引き出すのだ。 クェゼリンを奇襲し米本国からの増援を断ち切った上で、米太平洋艦隊の根拠地であるトラックへの攻撃を開始する連合艦隊は、航空基地に大打撃を与えて制空権を得たものの、かの「赤城」「長門」「陸奥」の三戦艦をたった一隻で圧倒してみせた世界最強戦艦「オレゴン」を中心とした米海軍主力艦隊は未だ健在である。 はたして、この最後の戦いに勝利を得て戦争終結への道筋をつけられるのか? 「報告では、空では我が軍が優勢、海ではアメリカ軍が優勢とのことです。特に、アメリカが戦線に投入した新鋭戦艦の威力は凄まじく、我が国が世界に誇ってきた二隻の戦艦『長門』『陸奥』が子供扱いにされてしまったとか」 駐英日本大使 吉田茂
日本軍は多大な犠牲を払いつつもグアム島を攻略し、米海軍の攻撃先鋒を潰すことに成功した。これを機に、日本政府は英国を通じて講和を打診をするのだが、米国政府からは一顧だにされない。なぜなら、米軍には強力な戦艦や巨大な空母といった新鋭艦が続々と加わりつつあり、次こそは勝利を得られると確信しているのだ。 米軍が戦力を拡大し続けるのであれば、このまま守りに徹していてもいずれ日本軍は押し負けてしまう。であれば自ら決戦を挑み、圧倒的な勝利をもって米国の戦闘意思を挫くしか道はないのかーー。 トラックを根拠地とする米海軍主力を撃滅せよ、との難題を課せられた連合艦隊は乾坤一擲の大作戦を開始した。 「米国を和平交渉の場に引っ張り出すためには、決定的な勝利が必要となる。かの日本海海戦に匹敵するほどの勝利が」 連合艦隊司令長官 山本五十六大将
米艦隊による硫黄島、サイパン島の日本軍基地への奇襲攻撃は苦闘の末に撃退された。戦況は一息つくはずだった。しかし、米軍は激戦の裏で密かにグアム島へ増援を送り込んでいたのだ。 これで、日米双方が互いに敵飛行場の破壊と再建の妨害を繰り返す泥沼の状態に。 それでも、機械化された米軍設営部隊の能力は日本軍を凌駕し、グアム島飛行場再建を阻止し続けることは不可能であった。 敵基地が本格稼働する前に一気に攻勢をかけ、グアム島そのものを占領するしかないと、連合艦隊はグアムに向け出撃する。 だが、米海軍も太平洋艦隊の主力戦艦部隊を繰り出し、鉄壁の布陣をもって待ち受けていたのだーー。 「現時点におけるマリアナの状況を一言で言うなら、飛行場の建設レースだな。先に飛行場を使用可能にこぎつけ、航空部隊を進出させた方が、マリアナにおける戦いの勝者になる」
航空主兵主義に活路を求めた連合艦隊は、初戦の劣勢を押し返しついにフィリピンの米国アジア艦隊撃退に成功。さらに太平洋艦隊に対抗するため、日本が最後に建造した高速戦艦「赤城」をも投入して空母機動部隊の大増強をおこなった。 対する米軍は艦隊の再編と同時にトラック諸島の要塞化を進め、B17大型爆撃機によるマリアナ、パラオの日本軍基地への空爆を継続。 連合艦隊は太平洋艦隊が再び攻勢に出てくることを確信し、総力を挙げて南洋に向け出撃した。 だがその時、思いもかけない方面から米軍来襲の一報が……。 「日本艦隊、特に空母を捕捉するためには、火力よりも速力だ。空母に追いつけるだけの速度性能と、日本軍の戦艦に打ち勝てる火力を持つ艦は、レキシントン級しかない」
戦艦の建造を断念し航空主兵主義に転じた連合艦隊は、辛くも米戦艦の撃退に成功した。しかし、アジア艦隊撃滅には至らず、また米極東陸軍はバターン半島とコレヒドール要塞において死守の構えを見せている。 資源の多くを輸入に頼る日本としては、フィリピンを抑え南シナ海の制海権を握り通商路を再開させねばならなかった。 ついに、アジア艦隊殲滅のための新鋭空母を加えた機動部隊に出撃命令が下される。しかし、米太平洋艦隊もアジア艦隊を援護するべく機動部隊を繰り出すのであった。 「太平洋艦隊が来れば、日本軍などすぐにでもルソンから叩き出せる。それまでは、何としてもバターン、コレヒドールを守り抜く」 「アジア艦隊がミンダナオ島にいるとの断定は、現時点ではできない。だが、彼らがフィリピンのどこか、それも中部以南に潜んでいることは確かだ。問題は、彼らが今後、どのように動くかだ」
「戦艦などは、遠からず無用の長物になるはずだ」 昭和一六年。満州国を巡る日米間交渉は、互いの主張が平行線をたどったまま打ち切られる。 米国はダニエルズ・プランのもと、四〇センチ砲装備の戦艦一〇隻、巡洋戦艦六隻をハワイとフィリピンに配備。アジア艦隊を増強して軍事的圧力をかけ続けた結果、西太平洋の緊張は極限に達していた。 この強大な国力に比するべくもなく、日本は戦艦の建造を断念する。海軍の主力を空母と航空機とすることで活路を見出そうとするが、航空機で戦艦に勝てるものなのかは確証が得られていなかった。 日米戦争が勃発すれば、敵の大艦隊が一気に日本本土へ迫り来るであろう。 連合艦隊は、この事態を食い止めることができるのか!?
「『大和』より上だ。間違いない」 英本土奪還へ王手をかけた日英連合軍。だが、ヒトラー総統の死守命令を受けたドイツ軍は、ロンドン周辺地域を固め徹底抗戦の構えを崩さない。 都市の破壊を引き起こす市街戦は避けたい英国政府としては、敵を兵糧攻めにして降伏に追い込むしかないと決断。英本土周辺海域にて、互いの援軍と補給を断たんとする激しい海空戦が繰り返されることとなった。 次々と新兵器を繰り出すドイツ軍は英仏海峡の制海権を一気に握ろうとし、これまで温存されてきたドイツ大海艦隊をも出撃させた。必勝を期し、日英連合軍艦隊に最後の決戦を挑んだのである!
「キング・ジョージ五世級同士の撃ち合いですか。骨肉相食むとは、まさにこのことですな」 日本海軍遣欧艦隊はドイツ・イタリア連合艦隊との決戦に勝利し、地中海の制海権を手にする。この事態に、イタリアでは政変が勃発した。新政権は連合軍との休戦交渉を目論み、ムッソリーニ派はこれまでと同じ親ドイツを標榜する政府を樹立するという混乱状態に陥った。 日英連合軍は中立国アメリカより購入した最新鋭兵器を装備し、ついに悲願の英本土奪還を開始する。 だがドイツも英国から接収した兵器を活用し戦況を進めていた。英国製重爆撃機による空爆でソ連を追い詰めていたのだ。そして、日英連合艦隊を阻止するため、ドイツ海軍に編入した英国製戦艦の艦隊が出撃する。 かくして、英国艦艇同士が争う前代未聞の英本土奪還作戦が開始されたーー。
「連合艦隊長官が、御自ら『大和』『武蔵』を回航されるとは驚きましたな」 欧州奪回を目指す日英連合軍はドイツ・イタリア枢軸軍を打ち破り、紅海からスエズへと攻め上った。また、エジプトに展開した陸上部隊も健闘し、アフリカ戦線は連合軍が勝利を掴む。 次の作戦目標は地中海制圧とイタリア打倒である。 まずはシチリア島を占領すべく日英上陸船団が地中海を渡り始めるが、枢軸軍がそれを座視するはずもなかった。イタリア海軍に加え、ドイツ海軍も強力な艦隊を差し向けてきたのだ。 対する連合艦隊もついに切り札を投入。戦艦大和・武蔵が地中海に進出する。 地中海の覇権を握るのはーー!?
「遺憾ながら、第一五軍では敵新型戦車への対抗策をまだ見出しておりません。二式中戦車の七五ミリ砲では、あの戦車の正面装甲を射貫くことはできず、速射砲にも新型戦車を撃破可能なものはありません」 英本土奪回を目指す日本・イギリス連合軍はスエズ運河を押さえ、地中海への航路を確保せねばならなかった。しかしドイツ海軍との激戦を経て紅海を突破した連合軍の前には、北アフリカを堅守するドイツ・イタリア枢軸軍が立ち塞がる。 新型戦車を装備し戦力を飛躍的に強化したと思われた日本陸軍。だが、欧州を席巻したドイツ機甲師団を相手にかなりの苦戦を強いられてしまう。 枢軸軍はさらなる増援を計画していた。これを阻止するためには海上輸送路を断たねばならない。それには地中海を制するイタリア艦隊との激突は必須である。 連合艦隊はついに戦艦長門・陸奥の地中海派遣を決定ーー。
「フランス製の戦艦三、巡洋艦六、駆逐艦一〇隻以上から成る艦隊がマンデブ海峡を指して、紅海を南下している。それが現在の状況ですな?」 亡命イギリス政府を保護したことで、ドイツ第三帝国と敵対することになった日本。 第二次日英同盟のもとインド洋に進出した連合艦隊は、Uボートの襲撃により主力空母二隻喪失という大損害を出してしまった。さらなる被害を阻止するためには、紅海を封鎖しUボートの侵入路を塞ぐしかない。 攻略目標はマンデブ海峡を扼する要衝ジブチ。航空戦力を結集した日英連合軍の機動部隊の出撃ーー。 だが、対するドイツ海軍は強力な反撃を繰り出す。元フランス海軍最新鋭戦艦リシュリュー級とダンケルク級である。 想定外の強敵の出現に英海軍KGV級戦艦デューク・オブ・ヨークが立ち向かうが……。
「思いがけないことになったものだ。我が帝国海軍は長年、米英海軍を仮想敵と考えて作戦研究を進めてきた。それが今や、ドイツが最大の仮想敵になったのだから」 昭和一四年八月、ドイツがソ連との不可侵条約を締結したことにより、日本がそれまで進めていた独伊との同盟は頓挫する。かわりに日本に接近してきたのはドイツと対峙するイギリス、フランスであった。 やがて日英仏同盟が締結されるが、大陸を席捲したドイツ軍はついに英本土へ上陸。首都ロンドンを陥落させる。本国を脱出して東アジアに逃れた英艦隊は日本に亡命、これにより日本もまたヒトラー総統の怒りを買い、宣戦布告がなされた。 英仏政府の要請を受けた連合艦隊は、第一航空艦隊にセイロン島トリンコマリーへの進出を命じる。だがインド洋海面下では、牙を研いだ狼の群れがで息をひそめ獲物を待ち構えていた!