著者 : 橋本治
僕、分ったんです。人を探るということは、実は、それと同じ分だけ、自分自身を探るということが必要なんだということに。1980年代、東京ー橋本治による青春ミステリーの傑作。
限定150部の幻の豪華本『マルメロ草紙』を新たな装いで刊行。二十世紀初頭の巴里を豪華絢爛に蘇らせた傑作耽美小説!時は二十世紀初頭の巴里。ブーローニュの森近くの瀟洒な屋敷で暮らす大実業家エミール・ボナストリューと慎ましやかな夫人のシャルロット。その妹で、貞淑な姉とは対照的な生き方を求め、華やかなパリで女優を目指すナディーヌ。アールデコ様式全盛の時代、煌めきに満ちた女性たちの甘酸っぱく、香気に満ちた物語。
橋本治が挑んだ前代未聞の全体小説、3000枚超の遺稿と共に遂に刊行!「人名地名その他ウソ八百辞典」、別冊「人工島戦記地図」付。
「一体今日は、いつなんだろう?もうすぐ九十八だ。多分」ゆとり世代(もう五十だけど)の編集者に「戦後百一年」なんて原稿頼まれたり、ボランティアのバーさんが紅白饅頭持ってきたり。東京大震災を生き延びた独居老人の「私」が、老境の神髄を愉快にボヤく、人生賛歌の物語。ああ、年を取るのはめんどくさい!
浅草乾物問屋の一人娘・お春。十七の初心な身はやがて、男遊びと淫蕩の末に死んだ美しい母の血と面影を蘇らせていく。名を騙り夜這を仕掛ける番頭、女を弄ぶ美貌の若侍…色を知ったお春が舐めた、男と女の奈落の味。橋本治が「夢のような愚かさを書いてみたい」と文豪・谷崎に捧げた快作時代小説。
古屋倫子、二十八歳。旅行会社勤務。独身、彼氏なし。最近気になって仕方ないのは、卵子は老化するという事実。その時限爆弾を解除する方法は、結婚以外にないーでも、結婚ってなに?倫子は周囲の既婚者を見渡すも、結婚というものがますますわからなくなる。そんな中、同僚の花蓮の結婚が決まり…。悩めるアラサー女性を主人公に、時代と共に変化する結婚観を冴えた筆致で描いた傑作長編。
10代から60代まで、10歳ずつ年の違う男たちを主人公に、彼らの父母、祖父母までさかのぼるそれぞれの人生を、戦前から平成の終わりへと向かう日本の軌跡のなかに描きだす。敗戦、高度経済成長、オイルショック、昭和の終焉、バブル崩壊、二つの大震災。みな懸命に生きながらも親と子はつねに断絶を抱え、夫婦はしばしば離婚する。人生はつねに、思い描いたことの外にあるーごくふつうのリアルな日本人の心の100年を描いて、読者をさまざまな記憶でつよく揺さぶりながら、戦後日本の行き着いた先としての現代のありようを根底から問い返す、橋本治、畢生の長篇小説。作家デビュー40周年記念作品。
いまはひとりゴミ屋敷に暮らし、周囲の住人たちの非難の目にさらされる老いた男。戦時下に少年時代をすごし、敗戦後、豊かさに向けてひた走る日本を、ただ生真面目に生きてきた男は、いつ、なぜ、家族も道も、失ったのかー。その孤独な魂を鎮魂の光のなかに描きだす圧倒的長篇。
10代で出産離婚し23歳で再婚した美加だが、新しい夫は息子にまったく無関心だった。彼女もそんな夫に同調し、いつしか虐待が始まる…。突然、夫の両親と同居することになった37歳主婦のいらだち。定年退職した直後の夫をオヤジ狩でなぶり殺された58歳主婦の孤独。現代に生きる様々な年齢の普通の女たちを鋭く描いた第18回柴田錬三郎賞受賞の傑作短編集。
誰かを好きだと言ってしまいたくて、誰かを嫌いだと言ってしまいたくて、でも、それがとても恐いことを招きよせてしまうような気がしてー。甘えと優しさが毀れると、その向こう側には闇と憎悪がぽっかり口をあけている。サイモンとガーファンクルの名曲にのせて、80年代の「青春」の重さを描く15の物語。
相続問題をきっかけとして嫁と舅の間に生まれた愛を描いた表題作をはじめとして、金持ちの息子とゲイボーイの愛の結末を描く「愛の百萬弗」、堅い銀行員の夫の意外な愛人「愛のハンカチーフ」ほかー白日の下にさらされる衝撃的な愛の裏事情四篇。各篇に田中靖夫、宇治晶、東恩納裕一、山本容子各氏の挿画入り。
世の中にはいろんな「ヘンな愛」があふれているー予備校生の隠れた生態を目撃した女子大生たち、改悛の情いささかもないパンティ泥棒の言い分、レスビアンのトラック運転手と恋に走ったフツーの主婦、気がついたら一児の父になっていた小学生…鬼才橋本治が昭和の終わりから平成にかけて書きつづった「ヘンな」愛の短篇コレクション第一弾。
父親に認めてもらおうとボクシングを始める少年、息子と初めての潮干狩りに出かける父親。試験勉強のために女友達の家を訪れる大学生、ベランダで鉢植えを愛でる独身サラリーマン…。ふつうの人生を生きる、ごくふつうの男たちの背中は、いつもどこか淋しい。男にとっての幸福とは孤独とは、いったい何なのか。じんわりと心にしみこんでくる、九つのほのかな感動。著者自作解説つき。
にんじんが嫌いな父とその娘、サラリーマンだったころを思い出す老人、自分に物語が足りないことに気づいたOL、入社3年、肥満を気にし始める青年…。なんでもない「ふつう」の人々が生きる、ごく「ふつう」の人生。そのささやかな歓びと淡い哀しみを切々と描く短編集。名手・橋本治が紡ぎ出す、九つのほのかな感動。