著者 : 池上永一
花城汀、泉、澪の三人が、沖縄、東京、鹿児島、福岡、山口、台湾を縦横無尽に疾駆する!祖母の愛情を受けて育った花城三姉妹は、いずれ劣らぬ個性派揃い。オバァの願いはただ一つ、姉妹の誰かに、米軍基地内にある海神の墓を守ってほしいということだった。墓守は嫌だと拒否した三人だったが、20年後、それぞれの立場で海神の謎を追うことになるー。山田風太郎賞受賞第一作。
運命の相手と知り、自分の分身のように感じる相手と結ばれたり、結ばれない運命だったり。悲しい恋やコミカルな恋、ロマンティックな恋など「運命」に翻弄される人間の、さまざまな姿を味わえる。男女がかくも違い、だから惹かれあうのだ、ということがよくわかる物語の数々。村上春樹、角田光代、山白朝子、中島京子、池上永一、唯川恵という恋愛小説の名手たちによる傑作短編集。あなたにも「運命の赤い糸」が見えていますか?
第二次世界大戦の米軍の沖縄上陸作戦で家族すべてを失い、魂(マブイ)を落としてしまった知花煉。一時の成功を収めるも米軍のお尋ね者となり、ボリビアへと逃亡するが、そこも楽園ではなかった。移民たちに与えられた土地は未開拓で、伝染病で息絶える者もいた。沖縄からも忘れ去られてしまう中、数々の試練を乗り越え、自分を取り戻そうとする煉。一方、マブイであるもう一人の煉はチェ・ゲバラに出会い恋に落ちてしまう…。果たして煉の魂の行方は?著者が20年の構想を経て描破した最高傑作!
1712年、琉球王に第13代尚敬王が即位した。国師の蔡温は国を繁栄させるため、王の身代わりとなる存在「月しろ」を探し始めた。一方、貧しさから盗みを働く蘇了泉は、王宮を追われた舞踊家・石羅吾に踊りの天賦の才を見出される。病気の母親を救うため、謝恩使の楽童子として江戸に上ることを決めた了泉。だが船中には、もうひとりの天才美少年・雲胡が同乗していた…。将軍に拝謁すべく、2人の舞踊家が鎬を削る!
謝恩使を成功させ、琉球に凱旋した了泉は一挙に富と名声を得るが、成功を受け止めきれずにいた。一方、清国から冊封使としてやって来た徐葆光をもてなすため、踊奉行の玉城朝薫は究極の舞踊である「組踊」を創作。琉球の芸術を究めるため、2人の天才舞踊家を用いて完成に近づけようと目論む。王の身代わりとなる「月しろ」は、果たして了泉か雲胡か?傑作『テンペスト』を凌駕した、“琉球サーガ”の到達点、遂に文庫化!
水不足の村に現れた悪徳役人・伊舎堂。村人の窮状に追い打ちをかけ、強制労働の果てには、信仰や娯楽まで禁止してしまう。村を絶望が襲うなか、役人の番所に火が放たれる。その犯人は、なんと屋良座ノロだった(「間切倒」)。那覇の町で巻き起こる6つの事件に、新米岡っ引きの武太が立ち向かう。失敗を重ねながらも成長してゆく武太と、市井の人々を生き生きと描きあげた心躍る物語。幕末・琉球王朝を舞台に、武太が駆け抜ける!
沖縄県八重山諸島は古くから自らを象徴する星々を愛でてきた。星々には島ごとの神が宿り、親島である石垣島には、そんな島の神々が近況を伝え合う御嶽があった。八重山諸島の言い伝えによれば島と島は家族のようにつながり支え合っているという。神々が群星御嶽に集うとき、再会した親子の会話は宴となり、新たな物語となってともに輝きを増していくー。唄の島と言われる、鳩間島を舞台にした文庫版書き下ろし短編も収録!!
琉球王国の商都である那覇の街は、眩しい陽光と活気に満ち溢れている。このたび無職の三線弾きから晴れて筑佐事(岡っ引き)に転身を果たした武太は、にわか仕込みの正義感を引っ提げて、市井を駆け回っていた。墓泥棒に黒手巾の義賊、子どもたちの失踪、国宝級三線の盗難、絶世の美女の詐欺働き、そして大好きなオバァの過去…。事件の裏に隠された真相を知り、青年は大人への階段を上っていくー。極彩色の琉球版・千夜一夜物語!
昼間は孫寧温として王府に勤め、夜は側室に戻るという二重生活を送っていた真鶴。ある日、尚泰王の子を身篭もったことが発覚。女として産むべきか、男として目を背けるべきか。悩んだ末、真鶴は母親になることを決意する。近代化の波が押し寄せ、王国は崩れようとしていた。数奇な運命を背負った母子の未来に、希望の虹は架かるのか!?忘れがたき雅博との恋の行方は!?嵐吹く波瀾万丈の人生が、いよいよクライマックスを迎える。
恐れ知らずの竦腕で、次々と王府の改革を断行する孫寧温。一方で、薩摩藩士・浅倉雅博のやさしさに惹かれ、男と女ふたつの人格のあいだで心が揺れ動いていた。王宮では聞得大君と王妃による女同士の覇権争いが勃発。騒動を鎮めようとした寧温だったが、聞得大君の執拗な追及に、自分の正体が女であることをつい明かしてしまう…。夏の雷雲のごとく、寧温に迫り来る幾多の試練。吹きすさぶ嵐はまだ序章に過ぎなかった。
19世紀の琉球王朝。嵐吹く晩に生まれた真鶴は、厳しい父の命に従い、男として生まれ変わることを決心する。名を孫寧温と改め、13歳の若さで難関の科試を突破。憧れの首里城に上がった寧温は、評定所筆者として次次と王府の財政改革に着手する。しかし、王室に仕える男と女たちの激しい嫉妬と非難が寧温の前に立ちはだかる…。伏魔殿と化した王宮を懸命に生き抜く波瀾万丈の人生が、春の雷のごとく、いま幕を開けた。
島の豆腐屋で働く津奈美はシングルマザー。産婆のオバァのかけたまじないのせいで、息子の姿を他人に見えなくさせられてしまった。まじないを解くためには、息子にかけた七つの願いを他人から奪わなければならないと知り、津奈美は決死の覚悟で陰の世界に飛び込んでいく。願いを奪うとはどういうことなのか。息子にかけた最後の願いとは何か?石垣島の自然と島の伝承を舞台に、若き母親が孤軍奮闘する壮絶な愛の物語。
今から六十年前に帝国陸軍が村に配備した九六式カノン砲。あの日村が滅びたことを子どもたちは知らない。戦後、村は沖縄で一番豊かな地区に復興を遂げた。村を守るのは巫女のマカトオバァを中心とした老人三人組。しかしある事件をきっかけに村はまた破滅の道を歩み始める。未来を託されたのはマカトの孫の雄太を中心にした子ども三人組だ。果たして村を救うことができるのか?復帰世代の作家が描いた希望と再生の物語。
19歳の綾乃は島での楽園生活を満喫し、大親友のオバァ、オージャーガンマーと遊び暮らす日日。しかしある日夢の中に神様が現れ、ユタ(巫女)になれと命じる。「あーっワジワジーッ」徹底抗戦の構えの綾乃だったが、怒った神様の罰もあり、やがてユタへの道を歩むことに…。溢れる方言と三線の音、抜けるような空に映える極彩色、豊かな伝承と横溢する感情。沖縄が生んだ不世出の才能の記念碑的デビュー作。
九十七歳の生年祝い「風車祭」を翌年に控えたオバァ・フジの楽しみは長生きと、迷惑をかえりみない他人いじり。あの世の正月と云われる節祭の日、島の少年・武志はオバァのさしがねで美しい盲目の幽霊・ピシャーマと出会い、恋におちてしまう。そのせいでマブイ(魂)を落とした武志の余命は一年弱。彼は無事、マブイを取り戻すことができるのか!?沖縄の祭事や伝承、歌謡といった伝統的世界と現代のユーモアが見事に交叉する、沖縄版「真夏の夜の夢」。
ある日、ニライカナイの神がこう告げた。「島を大津波が襲うだろう」。この危機の予言を、果たして島人は避けることができるのか?一方、マブイとしてさすらうピシャーマは、あの世に帰りたいと切に願う。武志とピシャーマの淡い恋に六本足の妖怪豚の横やりが入って、島も恋も大パニックに!?この涙と笑いあふれるマジックリアリズムの傑作は、直木賞候補作にもなって話題を呼んだ。
加速する地球温暖化を阻止するため、都市を超高層建造物アトラスへ移して地上を森林化する東京。しかし、そこに生まれたのは理想郷ではなかった!CO2を削減するために、世界は炭素経済へ移行。炭素を吸収削減することで利益を生み出すようになった。一方で、森林化により東京は難民が続出。政府に対する不満が噴き出していた。少年院から戻った反政府ゲリラの総統・北条國子は、格差社会の打破のために立ち上がった。
ついに反政府ゲリラは政府に宣戦布告。國子はブーメランひとつで戦車部隊に立ち向かう。だが地上の森では政府とゲリラの戦争をあざ笑うかのように、想像を超えた進化が始まっていた。究極のエコロジー社会がもたらす脅威とは?國子たちは生き残れるのか?アトラス計画の真の目的とは?ゲリラ豪雨、石油価格の高騰、CO2の取引など、2004年に既に現在を予言し、SFを現代小説に転換した傑作長編。