著者 : 泡坂妻夫
柔術の達人で、文人でもある空中楼夢裡庵先生は、れっきとした八丁堀定町廻り同心。正月早々、絵師が殺された。盆の窪に突き立った矢が致命傷だが、状況が一風変わっていた。壁に立てられた絵馬の人物が、今まさに矢を放った姿なのだ。手の込んだまねを、と渋い顔の先生だったが、ある書物に、「絵の人形に矢を射はなさす術」という文章を見つけたのだ。まさか…。直木賞作家の、洒落た連作七篇。
奇術とミステリーのみごとなドッキング。これは、推理作家にして秀れたアマチュア・マジシャンでもある著者にして初めて可能な技である。探偵役として登場するは、美貌の奇術師・曽我佳城。魔術の舞台はさながらに次々に発生する魔訶不思議な難事件を、鮮やかに解決する、異色の傑作推理短編集。
60人を越す死者が出たバスの転落事故で、たった一人生き残った男…宝くじを買えば、その賞金の十倍という袋くじの特賞に当たる。果たして、この世の中にそんな男が存在するのか?写真週刊誌の記者・白岩百合子は、彼に興味を持ち、追跡を開始するが…(表題作)。小気味よい推理短編の醍醐味。
音澄陶磁の御曹子・忠行の結婚披露宴にどこからか忍びこんだ黒猫が、卓上に飛び乗り不気味な鳴き声をあげた。その騒ぎで祖父であり会長の甲六はショック死、続いて甲六の次男も急死、音澄家には次々と凶事が起こる。音澄家に陶磁会社を乗っ取られた自勝院家の恨みは今も消えず、復讐の呪詛を黒猫に吹き込んでいるという。一連の惨事は怪猫の仕業か。死者の血を舐め魔性と化した黒猫が人を襲う。現代に甦る化猫ミステリー。
戸根市にはびこる二つの暴力団・北浦組と大門組は、ことごとにいがみ合い、まさに一触即発。そんな時、北浦組の組長が何者かに殺害された。果たして殺害現場で電話をかけたのは犯人か?(表題作)奇術師としても高名な著者ならではのトリックを各作品にちりばめ、あなたに挑戦する“犯人捜し”。推理ファン必読の珠玉の短編集。
傷心をいやすために旅に出た香島紀子は、旅先で危いところを土地の若者・埴田晃二に助けられた。その夜、彼女は村はずれのあばら屋で、晃二に抱かれた。が、翌朝、晃二の姿が消えている。不審に思って探しに出た彼女は、村人から、晃二はひと月前に毒殺された、と聞かされ、愕然とする。では、昨夜、晃二と名乗って彼女を抱いたのは、誰だったのか?
山形県米沢の旧家蘇芳家の当主カナが二度殺された。喜寿の祝いの夜、犯人はカナを絞殺し、翌朝、さらに鴨居から吊ったのだ。半年後、事件の目撃者・富樫幹夫が結婚式を挙げるのと同時に、挙式予定の従妹・貴詩が、その前夜、死体となって発見された。鬼才が放つ奇抜なトリックと斬新な構成で描く本格推理の秀作。
競馬レースの最中、しかも大観衆のど真中で、1人の男が殺された!しかもこれが合図かのように、奇妙極まりない殺人事件が続発。特殊犯罪捜査課のベテラン&新米の名物刑事コンビが、乗り出して、右往左往の末に解明した事件の驚くべき全貌。緻密なトリックと軽妙な語り口。新境地を拓く鬼才の傑作長編。
全員死亡のバス事故で、たったひとり生き残り、宝くじを買えば1等に当たる-そんな奇跡の男がいる。でも、ホントにそんな男がいるのか?この世の中に“奇跡の男”はいるのか?本格推理小説の白眉!