著者 : 浅田次郎
書き下ろし短編と単行本未収録短編を加え、浅田版「御嶽山物語」遂に完結。いにしえの神気を漂わせ、八百万の神々が遍満する奥多摩にある御嶽山が舞台の極上の連作短編集。
生まれ育った場所だけが「ふるさと」ですか? 現代人に本当の幸せを問う、著者最高傑作! 上京して四十年、一度も帰ろうとしなかった郷里で私を温かく迎えてくれたのは、名前も知らない〈母〉でしたーー。家庭も故郷も持たない人々の元にカード会社から舞い込んだ〈理想のふるさと〉への招待。半信半疑で向かった先には奇跡の出会いが待っていた。雪のように降り積もる感動、全く新しい家族小説にして永遠の名作誕生!
日本で二・二六事件が起きた1936年。中国の古都、西安近郊で、国民政府最高指導者、蒋介石に張学良の軍が叛旗を翻すクーデターが発生。蒋介石の命は絶望視され、日米の記者たちは特ダネを求め、真相に迫ろうとする。日本では陸軍参謀本部という秘密の匣の中で石原莞爾が情報を操っており、中国では西安事件の軍事法廷で、張学良は首謀者ではないとする証言がなされた。現代中国の起点となった事件の現場に起つ救世主は誰か。
万延元年(一八六〇年)。姦通の罪を犯したという旗本・青山玄蕃に、奉行所は青山家の安堵と引き替えに切腹を言い渡す。だがこの男の答えは一つ。「痛えからいやだ」玄蕃には蝦夷松前藩への流罪判決が下り、押送人に選ばれた十九歳の見習与力・石川乙次郎とともに、奥州街道を北へと歩む。口も態度も悪い玄蕃だが、道中で行き会う抜き差しならぬ事情を抱えた人々を、決して見捨てぬ心意気があった。
「武士が命を懸くるは、戦場ばかりぞ」流人・青山玄蕃と押送人・石川乙次郎は、奥州街道の終点、三厩を目指し歩みを進める。道中行き会うは、父の敵を探し旅する侍、無実の罪を被る少年、病を得て、故郷の水が飲みたいと願う女…。旅路の果てで明らかになる、玄蕃の抱えた罪の真実。武士の鑑である男がなぜ、恥を晒して生きる道を選んだのか。
京大生になったばかりの“僕”は、町に馴染めず友人もできずにいた。そんなある日、古びた映画館で清家忠昭に出会い、彼のつてで映画撮影所のアルバイトを始める。そこで清家は美しい女性に心奪われる。だが彼女は三十年も前に自殺した大部屋女優だったー。清冽な叙情とたおやかな文章で綴る、幻想的恋愛小説。
泰平の世に積もりに積もった大借金に嫌気のさした先代は縁の薄い末息子に腹を切らせて御家幕引きを謀る。そうとは知らぬ若殿に次々と難題が降りかかる!笑いと涙の経済エンターテインメント、始まり、始まりー
御国入りで初めて見る故郷の美しさ、初めて知る兄弟の情。若殿は倒産阻止を決意するが、家臣共々の努力も焼け石に水。伝家の宝刀「お断り」で借金帳消しの不名誉を被るしかないのか。人も神様も入り乱れての金策に、果たして大団円なるかー
戦争は、人々の人生をどのように変えてしまったのか。帰るべき家を失くした帰還兵。ニューギニアで高射砲の修理にあたる職工。戦後できた遊園地で働く、父が戦死し、その後母が再婚した息子…。戦争に巻き込まれた市井の人々により語られる戦中、そして戦後。時代が移り変わっても、風化させずに語り継ぐべき反戦のこころ。戦争文学を次の世代へつなぐ記念碑的小説集。第43回大佛次郎賞受賞作。
「けっして瞋るな。瞋れば命を失う」父の訓えを守り、檻の中で運命を受け入れて暮らす彼が、太平洋戦争下の過酷に苦しむ人間たちを前に掟を破る時ーそれぞれの哀切と尊厳が胸に迫る表題作ほか、昭和四十年の日帰りスキー旅行を描く「帰り道」、学徒将校が満洲で奇妙な軍人に出会う「流離人」など華と涙の王道六編。
日本びいきの恋人ジェニファーから、結婚を承諾する条件として日本への一人旅を命じられたアメリカ人青年ラリー。ニューヨーク育ちの彼は、退役海軍少将の祖父に厳しく育てられた。太平洋戦争を闘った祖父の口癖は「日本人は油断のならない奴ら」。日本に着いたとたん、成田空港で温水洗浄便座の洗礼を受ける。京都では神秘の宿に感銘し、日本女性のふたつの顔を知る…。異国の地で独特の行動様式に戸惑いながら列島を旅するラリー。やがて思いもよらぬ自分の秘密を知ることに…。圧倒的読み応えと感動。浅田文学の新たな到達地点!
満洲でラストエンペラー・溥儀が皇帝に復位しようとしている。そんななか、新京憲兵隊将校が女をさらって脱走する事件が発生。欧州から帰還した張学良は、上海に襲い来る刺客たちを返り討ちにしていた。一方、日本では東亜連盟を構想する石原莞爾が関東軍内で存在感を増しつつあり、日中戦争突入を前に、日本と中国の思惑が複雑に絡み合う。満洲に生きる道を見いだそうとする正太と修の運命は。長い漂泊の末、二人の天子は再び歴史の表舞台へと飛び出してゆく。
人気作家七人の手にかかれば、こんなに意外なオリンピックの魅力が見えてくる!-オリンピックは出場選手だけのものではない。誘致に名乗りを上げる地域や主催団体、現地で観る人やテレビを通しての観客、そして興味の有無にかかわらず国を挙げた一大イベントに影響を受ける者たち…。熱い感動作から世相を絡めた風刺的な作品まで、本書のための書き下ろしや書籍未収録作を含む、前代未聞の傑作アンソロジー。
運命に導かれ、それぞれの楽土を目指せ。満洲の怪人・甘粕正彦、男装の麗人・川島芳子、欧州に現れた吉田茂。昭和史最大の事件「日中戦争」前夜、大陸に野望を抱き、夢を掴もうとする者たちが動き出す。そして、希望の光をまとい、かつての英雄が中原のかなたに探し求めた男がついに現れた。その名はー。
初老の“私”は、嵐の夜に出会った女から降霊会に招かれる。そこで再会した今は亡き人々。その中にはある理由から記憶の片隅に押しやっていた幼い友達がいたー。更に私は翌日も再訪するよう誘われる。会わねばならぬ人々のために。戦後という時代に取り残された者たちへの鎮魂歌として著者が贈る極上の怪異譚。
奥多摩の御嶽山にある神官屋敷で物語られる、怪談めいた夜語り。著者が少年の頃、伯母から聞かされたのは、怖いけれど惹きこまれる話ばかりだった。切なさにほろりと涙が出る浅田版遠野物語ともいうべき御嶽山物語。
とある港町、運河のほとりの古アパート「霧笛荘」。法外に安い家賃、半地下の湿った部屋。わけ知り顔の管理人の老婆が、訪れる者を迎えてくれる。誰もがはじめは不幸に追い立てられ、行き場を失って「霧笛荘」までたどりつく。しかし、「霧笛荘」での暮らしの中で、住人たちはそれぞれに人生の真実に気付きはじめるー。本当の幸せへの鍵が、ここにある。比類ない優しさに満ちた、切ない感動を呼ぶ7つの物語。
「どうぞお試しくださいませ。ブラック・オア・ホワイト?」スイスの湖畔のホテルで、バトラーが差し出した二つの枕。パラオ、ジャイプール、北京、そして京都。エリート商社マンに人生の転機が訪れる度に、黒と白の枕が現れる。悪夢、それとも美しい夢。それは、実現しなかった人生の一部分なのか。夢と現の境は曖昧になり、夢が現実を呑み込んでいく。現代日本の実像に迫る、渾身の長編小説。