著者 : 玉田誠
島田荘司推理小説賞受賞! 21世紀の『十角館の殺人』がマレーシアから登場 最愛の妻を亡くし引退したベストセラー作家がある日ふと目覚さますと、そこは見知らぬ孤島だった。 やがて桟橋に船が着き、老若男女が島に降り立つ。一行はデジタル機器に囲まれた日常の疲れを癒し、本来の人間性を取り戻す「デジタル・デトックス」のために島に渡って来たという。 メンバー相互の会話や、視線を合わせることさえ禁じられ、読書やメモをとること、音楽を聴くことも不可。食事は菜食のみ、そして殺生も厳禁という環境の中でデジタル・デトックスが始まるが、やがて残酷な連続殺人事件が発生する。 作家はそのすべてを目撃するのだが、なぜかメンバーたちの目には彼の姿が映らないらしい……。 華人系マレーシア人の女性作家が、ミステリ界の巨匠・島田荘司氏が提唱する21世紀本格に応えて放った、〈21世紀の『十角館の殺人』〉!
時刻表を駆使したアリバイ崩しと台湾現代史に刻まれた悲劇をめぐる人間ドラマが松本清張を彷彿とさせる傑作ミステリー。 第6回金車・島田荘司推理小説賞受賞作。 昭和十三年、日本統治下の台湾・台北市。台北駅からほど近い喫茶店「グランドスラム」では野球愛好家の集まり「球見会」の定例会が開かれていた。 日本でプロ野球が発足してまだ三年目。当時もっとも注目されていたのは東京六大学野球で、この夜も話題の中心は早慶戦ともう一つ、台湾の高雄商業学校のエース兼四番バッター大下弘だった。球見会には六大学のOBが参加していて、彼らは大下を自分たちの出身大学にスカウトすべく鍔迫り合いを演じていた。 そんな折、球見会の会員二人が別々の列車内で不審な死を遂げた。この会の唯一の本島人(台湾人)会員・陳水金は台北の北鉄新店線萬華駅で、慶應OBの藤島慶三郎は高雄駅で台北から乗車した寝台列車の中で発見された。 台北南署の刑事・李山海とその相棒の北澤英隆は高雄署とも協力し事件の謎を追う。果たして二人の死には、「明日の球界を背負う逸材」大下弘のスカウト合戦が関係しているのか、それとも……?
恐怖小説の匠・三津田信三が描いた怪異が、海を越え、伝染し、やがて驚愕の真相に辿り着く。日本、台湾、香港を繋ぐ不気味な儀式。宿願が成就するそのとき、何が奪われるのか…。
ネットいじめを苦に女子中学生が自殺。姉のアイはハイテク専門の探偵アニエの力を借りて、妹の死の真相に迫るー。『13・67』の著者がいま現在の香港を描き切った傑作ミステリー。著しい貧困の格差、痴漢冤罪、ダークウェブ、そして復讐と贖罪。高度情報化社会を生きる現代人の善と悪を問う。
第二回島田荘司推理小説賞受賞作。台湾の出版社が企画し、島田荘司が選考を努める、華文(中国語)による本格推理小説の新人賞を受賞したのは、香港の新進気鋭、陳浩基(サイモン・チェン)。最先端と前近代の町並みが混在したエネルギッシュな過密都市を、「記憶を失った男」が、事件の真相を追って失踪する。秀逸な構成、驚愕の結末。アジアに新しい「新本格」ブームの幕が開いた。 車の中で目覚めた刑事。つい先日起きた夫婦惨殺事件を捜査していた・・・はずが、警察署に出てみれば建物も顔ぶれも全く変わっている。そこに現れた女性記者から、事件は6年前に起きたもので、その犯人は逃走中に事故死、事件はすでに解決している、と知らされる。自分は6年間の記憶を失っている? 何故? しかし、刑事には何故か確信があった。「死んだ男は、真犯人ではない!」 事件の真相を求め、女性記者とともに香港島、九龍、新界と、かつての事件関係者を訪ね回る。次々に出くわす意外な事実、そして不可思議な違和感。自分の記憶はなぜないのか、なぜ自分は「真相は別にある」と知っているのか。そして、自分は何者なのか。 どんでん返しの連続、アクロバティックな謎解き。これぞ新本格ミステリーの誕生、という新鮮な感動を、我々日本人はこの一冊で思い起こすことができるだろう。 そして、主人公の「アイデンティ・クライシス」は、今の香港に生きる作者の切実なテーマでもある。 今年、陳浩基の新作「13・67」は大きな話題となり、ウォン・カーウァイが映画化権を取得した。返還から中国支配により激しく変化する香港の歴史を辿った連作集だ。 激動を香港をリアルタイムで活写している陳浩基のメジャーデビュー作に、改めて注目が集まる。
香港西区警察署の許友一巡査部長は、ある朝、マイカーの運転席で目が覚めた。酷い二日酔いで、どうやら自宅に帰らず車の中で寝込んでしまったらしい。慌てて署に向かったが、どこか街の様子がおかしい。署の玄関も改装されたように様子が変わっていて、貼られているポスターを見ると2009年と書いてある。「馬鹿な、昨日は2003年だったのに!?」。許巡査部長は一夜にして6年間の記憶を失っていた。呆然とする許だが、ちょうどそこに女性雑誌記者・蘆沁宜が現れ、許が昨日まで捜査していた、夫と妊娠中の妻が惨殺された事件の取材で許と会う約束をしたという。それが、6年前の事件の真犯人と己の記憶を追い求める許の捜査行の始まりだった。奇想天外な発端と終盤の怒涛のどんでん返しで圧倒的な支持を受け、第2回島田荘司小説賞を受賞。香港の鬼才が放つアジア本格の決定版です!
精神科医でミステリー作家の藍霄が受け取ったメールは、周囲の人間が突然自分のことを知らないと言いだす、奇怪な体験を訴えていた。王明億と名乗る謎の差出人はさらに、自分は七年前の未解決密室殺人事件の犯人であり、それには藍霄も関わっていた、と言う。数日後、発見された浮浪者の首切り死体が王明億のものと判明、苦境に立たされた藍霄を救うべく、友人の秦博士と李君が事件解決に乗り出す。幻想的な謎と強烈な不可能興味。台湾ミステリーの最前線をリードする、鬼才の異形の本格ミステリー。