著者 : 田牧大和
可愛らしくもときに怖ろしい、江戸の猫が勢揃い! 守り神としての猫、事件を目撃する猫……いま読んでおきたい女性時代作家が描く珠玉のアンソロジー お店の守り神である木彫りの猫がなくなり、その行方を捜す「猫神さま」(西條奈加)、長屋で一番偉い猫の“サバ”が、夫婦の揉め事を解決する「包丁騒動」(田牧大和)、臆病な火消しの男へ按摩が与えた猫頭巾に込められた恐るべき謎「だるま猫」(宮部みゆき)など、愛らしくも摩訶不思議な存在である江戸の猫にまつわる短編六作を収録。 令和を代表する女性時代作家の共演による珠玉のアンソロジー。
江戸は根津宮永町にある「鯖猫長屋」の朝は、今日も賑やかだ。おてる、与六、おはま、貫八、おみつなど、長屋の面々を“仕切って”いるのは、鯖縞模様の三毛猫サバ。 そんなサバには人間の子分が二人いる。飼い主で画描きの拾楽と、「成田屋の旦那」と呼ばれるほど濃いキャラの持ち主で、剣術が苦手な定廻同心・掛井だ。 その掛井が手下の平八をかばって窮地に立たされる。拾楽がサバの力を借り、事件の核心に迫っていくと、意外な事実が見えてきて……。 謎解きと人情が交錯する人気シリーズ第六弾。文庫書き下ろし。 巻末に、サバが生みの親である著者について語っているので、要注目!
吉原で幇間をする絵師の暁雲(多賀朝湖/後の英一蝶)は、親しい太夫から勧められ、深川にあるという松尾芭蕉の草庵に出向く。折しも芭蕉庵では、何者かによる不穏な投げ文と、掛け軸が蛇の文様で汚された騒動に紛糾していた。琉球衣装を纏う謎の女に導かれ、暁雲は芭蕉の一番弟子の其角と共に、庵で起こる不可思議な事象を解明しようとするが…。哀切溢れる物語。
『鯖猫長屋ふしぎ草紙』の著者が放つ、ほろり痛快時代小説! 鎌倉・東慶寺は、幕府公認の縁切寺だ。 離縁を望む女が駆け込むその寺に、前代未聞の騒動が。 寺入りした人気役者の女房・お綱に会わせろと妾が乗り込んできたのだ。 寺の警固を担う女剣士・茜らは事情を聴くと、亭主をとっちめるべく江戸に赴く! 舌鋒鋭い秋山尼、記憶力抜群の桂泉尼、韋駄天と腕っ節が自慢の寺飛脚・梅次郎らとともに、茜は自身の過去と向き合いながら、女たちの幸せのために奔走する。 役者に大店主に、暴力男ーー。夫婦をとりまく様々な人間模様にひそむ謎。 心温まる痛快時代小説!
「命さえ惜しくない愛に巡りあったとき人はーー」 おっとりした菓子職人の晴太郎と、商才に長けたしっかりもの幸次郎の兄弟は、年老いた茂市に手伝ってもらいながら、江戸の菓子司「藍千堂」を営んでいる。 「菓子」一筋だった晴太郎が、佐菜に恋をして結婚。男所帯の藍千堂に、佐菜とその娘のさちが加わったことで、暮らし向きは華やかになった。 人気シリーズ第3弾となる本作のテーマは、「命がけの愛」 いとこのお糸の縁談が発端となり、彼女の実家「百瀬屋」が窮地におちいる。 命をかけて愛する相手に出会ったがゆえに、絶望の淵に突き落とされた人々を、晴太郎兄弟は、和菓子で笑顔にできるのか。 江戸菓子の魅力と、人情あふれる物語がたっぷりと詰まった時代小説短編集です。
大金持ちの悪党しか狙わず、しかも暮らしに必要な分しか盗まないことから、巷で「錠前破りのちょい盗み」と呼ばれていた銀太。今では、弟の秀次と蕎麦が不味いので有名な「恵比寿蕎麦」を営む。そこに、兄弟にとって因縁浅からぬ闇の組織・三日月会が仲間割れしているらしいとの噂が。この機に、幼馴染で北町奉行所に勤める貫三郎とともに組織の壊滅に乗り出すが。黒幕は誰か? 三日月会との最終決着はなるのか?<文庫書下ろし>
江戸・神田の小さな菓子屋を舞台に、おっとりした菓子職人の兄、商才に長けた弟が菓子屋を切り盛りする「藍千堂」シリーズの第2弾。今作は、人日(じんじつ)、上巳(じょうし)、端午(たんご)、七夕(しちせき)、重陽(ちょうよう)といった五節句を題材に、季節の和菓子が登場する。 実はこの兄弟、江戸で名店と謳われる「百瀬屋」先代の息子たち。父母亡きあと、叔父の清右衛門に訳も分からず店から追い出されたのだ。兄弟は、亡き父の教えと「甘いもん」を前にした時の客の「いい顔」を励みに、職人の茂市と三人で店の評判を上げていく。そんなある日、菓子一辺倒”、仕事一筋の兄・晴太郎が恋をした。ところが、晴太郎が惚れた相手の元夫は、奉行所を牛耳る大悪党。前途多難な恋の行方に、追い打ちをかけるように不穏な影が忍び寄る。弟の幸次郎や、職人の茂市ら周囲の人々に助けられながら、晴太郎は一世一代の大勝負に出る。物語を読みながら、思わず胸が熱くなるのは、好きになった女性や周囲の人すべてを幸せにしたいと願う、晴太郎の生き方に胸を打たれます。 著者が考案したオリジナルの和菓子も魅力的。第5話に登場する子戴(こいただき)は、宮中の祝儀に使われたのが始まり。赤いもち米で作った餅を平たくしてくぼみをつくり、小豆餡を載せるものだが、藍千堂オリジナルはもっと涼やかだ。 和菓子屋「藍千堂」をめぐる物語の世界が広がり、奥行きをもたせて描かれています。 『あんこの本』の著者、姜尚美さんの解説も読みどころのひとつです。
王は、二人いらないー。上王の統べる地、八万遠。建国より千年、二人の少年が出逢う。一人は東国の雪州嫡男・源一郎。今一人は雪深き墨州長男・甲之介。やがて二人が国を治める主となった時、運命の歯車が血の匂いを纏って回り出す。妻子と家臣に恵まれ、善き治世を布く源一郎と、弟を殺し父を幽閉して、領主となった甲之介。二人を結ぶものは友情か、それとも。流転の偽史物語。
松尾芭蕉の一番弟子ながら、一門に馴染めない俳諧師・宝井其角と、豪放磊落な絵師・多賀朝湖(後の英一蝶)。二人は不思議と馬が合った。ある夜、吉原で、彼らは二人の太夫に呼び出される。屏風に描かれた犬が動き、それを見た遊女が次々と姿を消したという。謎解きを頼まれた二人は女たちを救うべく奔走するが…。江戸の人々の生き様、哀切を描く傑作時代小説!
蕎麦が不味いので有名な「恵比寿蕎麦」を切り盛りする(?)銀太、秀次の兄弟。幼馴染の貫三郎が、色っぽい後家に言い寄られてると知って気が気でない。なんでも、首筋に赤い蝶の痣を持つこの女、亭主が次々に死ぬんだという。さらに、兄弟にとって因縁浅からぬ闇の組織が、意趣返しに動き出す。
しがない蕎麦屋を営む銀太、秀次の兄弟と、北町奉行所・吟味方与力助役の貫三郎は幼馴染。吟味で腑に落ちないことがあると、貫三郎は身分を隠して二人に知恵を借りに来る。そんな三人が、江戸中を騒がす連続辻斬り事件に巻き込まれた。真相を暴くため、銀太は…。傑作時代ミステリー誕生!