著者 : 矢口誠
フランシー少年の語りに翻弄されながら、 この悲喜劇を原書で読み終えたときの衝撃は忘れられない。 しかしいま、あらためて翻訳で読み、その恐ろしいほどの現実感に体が震えた。 アイルランドから世界に打ち込まれたこの楔はさらに鋭く深く胸に刺さる。 ーー金原瑞人(翻訳家・法政大学教授) 今まで読んだ本で泣いたのは、新美南吉『ごんぎつね』、 筒井康隆『農協月へ行く』、菅原孝標女『更級日記』、そしてこの『ブッチャー・ボーイ』。 『ごん…』は清さに、『農協…』は哀れさに、『更級日記』は切なさに。 『ブッチャー・ボーイ』この少年の物語は、痛さに泣く。殴られるように泣いた。 1ページ目からラストまで、一字一句すべて読む者を離さない迫力のドライブ感。 ーー姫野カオルコ(小説家) 〈いまから二十年か三十年か四十年くらいまえ、ぼくがまだほんの子供だったときのこと、小さな田舎町に住んでいたぼくはミセス・ニュージェントにやったことが原因で町のやつらに追われていた〉--アイルランドの田舎町、飲んだくれの父と精神不安定な母のもとで、フランシー・ブレイディーは親友のジョーと共に愉快な日々を送っていた。そう、ミセス・ニュージェントから「あんたらはブタよ!」という言葉を浴びるまでは……あらゆる不幸に見舞われた少年が、狂気と妄想と絶望の果てに見い出したものとは何か? アイルランド版〈ライ麦畑でつかまえて〉+〈時計じかけのオレンジ〉とも称された、鬼才パトリック・マッケイブが鮮烈で瑞々しい筆致で描く問題作にして感動作、映画化もされた傑作長篇(1992年作)がついに邦訳。 解説=栩木伸明
「厖大なウェストレイク作品の中にかなり変な作品があるらしい」 「ミステリではなく普通小説、いやポルノ小説、しかもメタフィクション!?」 ……謎が謎を呼ぶ、伝説の作品がついに登場! 〈悪党パーカー〉シリーズや数々のコメディ・ミステリで知られる 巨匠ウェストレイクによる爆笑の半自伝的実験小説。 〈ウェストレイク全作品の中でも大傑作に属する、私小説にしてメタメタフィクション!〉若島正 ポルノ小説のゴーストライター、エド・トップリスの苦悩は、締切が近づいてもまったく書けないこと。いざ書き始めても、自身の生活や夫婦間問題のあれこれが紛れ込んで物語はなかなか進まない(そして小説は延々と1章25ページが繰り返される!)。ある日、書きかけの原稿が原因でエドは思いもよらないトラブルに巻き込まれることになる……リチャード・スターク名義の〈悪党パーカー〉シリーズや〈泥棒ドートマンダー〉シリーズでおなじみのコメディ・ミステリの巨匠ウェストレイクによる、仕掛けに満ちた半自伝的&爆笑のメタ奇想小説がついに邦訳!(1970年作)
唖然とする展開、開いた口がふさがらなくなるラスト……早すぎたジャンルミックス作家L・P・デイヴィスによるストーリー紹介厳禁のサプライズ連打小説! 本邦初訳。 時は1966年、イングランドの閑静な小村で小説家アラン・フレイザーが50年後(2016年!)を舞台にしたSF小説の執筆にいそしんでいるところから物語は始まる。気さくな隣人、人懐っこい村の人々はみな彼の友だちだ。やがて一人の謎の女と出会い、アランの人生は次第に混沌と謎の渦巻く虚構の世界に入り込んでいくーー国際サスペンスノベルか、SFか? 知る人ぞ知る英国ミステリ作家L・P・デイヴィスが放つ、どんでん返しに次ぐどんでん返しのエンターテインメントにして、すれっからしの読者をも驚かせる正真正銘の問題作!(1965年作) 〈読者を幻惑させ、唖然とさせる力は、ミステリー、ホラー、SFというジャンルの境界線を大胆にまたぐところから生まれている。かつては熱狂的な固定読者層がつかずに、とらえどころのない作家としてL・P・デイヴィスを忘却の淵に追いやる原因となった持ち味こそ、彼の小説を読む最大のおもしろさであることを、現在の読者なら充分に理解できるのではないか。その意味で、L・P・デイヴィスは早すぎた作家であり、未来になって再評価されることが作品中に予言として書き込まれていたようにも思える〉(若島正:本書解説より)
ポーカーで1万1千ドル大敗し、マフィアに追われる天才数学者ケイン。だがその時、彼を悩ませていた神経失調が、驚異の「能力」に変わった。それを狙う政府の秘密機関と女スパイ。彼らが権力を駆使して追う「能力」とは?執拗な追手にケインはどう立ち向かうのか?幾つもの物語が絡み合う超絶ノンストップ・サスペンス。
数学者ケインとCIA工作員ナヴァ。窮地に陥った二人の共闘に、戦闘のプロが動員され、捕捉作戦は激化した。非力な民間人にすぎないケインの唯一の「武器」が引き起こす、ありえない連鎖反応。炸裂する伏線また伏線、予想を裏切る拷問と人体実験。長く壮絶な戦いの行方は?世界が興奮した徹夜必至の傑作。
破滅寸前の天才数学者ケイン。彼を悩ませる謎の神経失調には大きな秘密があった。それは、世界を根底から揺るがす「能力」の萌芽だったのだ。それを狙い、政府の秘密機関“科学技術研究所”が動き出し、その権力を駆使してケインを追いはじめた。なぜ彼らはケインを追うのか?彼らが狙うケインの「能力」とは何なのか?そして科学者トヴァスキーが進める「研究」の目的とは?執拗な追手から逃れつつ、ケインはその謎に迫ってゆく。いくつもの物語が謎をはらんで一斉に疾走、ここに前代未聞のアイデアを仕込んだジェットコースター・サスペンスが幕を開ける。第1回世界スリラー作家クラブ新人賞受賞作。
数学者ケインとCIA工作員ヴァナー。圧倒的窮地に陥った二人が共闘を開始した。一方ケインを追うフォーサイス博士も戦闘のプロを動員、火力とマンパワーを増強して捕捉作戦を過激化させる。これで役者はそろった。すべての布石の配置は完了した。強大な敵に追いつめられたケインの「能力」は、ついに発現する。非力な民間人にすぎない彼の唯一最大の武器が発火するー確率的にありえない連鎖反応を引き起こし、やつらの包囲網を突破するのだ。すべての物語はここに至って一点に集中し、炸裂する伏線、伏線、伏線。つぎつぎに明かされる意外な真実。そして、この長く壮絶な戦いの「目的」とはいったい何なのか?未曽有の超絶的サスペンス、結末へ向けて全力疾走を開始!第1回世界スリラー作家クラブ新人賞受賞作。
高校卒業以来、他人を騙し、裏切り、蹴落とすことでスーパー・エリートとなったヘンリー。だが、自分を捨てた恋人を見返すべく戻った故郷で、彼女が当時、死期が近いとすでに悟っていたことを知らされる。絶望感に包まれ、ホテルのバルコニーへと歩を進めるヘンリー…と、その背にメイドの声。「すべてにきっちり片をつければいいのよ」こうして彼女との奇妙な贖罪ツアーが始まった。
ミステリー界の巨匠ローレンス・トリートが生みだした、謎解きクイズの新機軸!読者のみなさんにあたえられるのは、犯行現場や証拠品を描いたイラストです。これをじっくりと観察し、質問にひとつひとつ答えていきましょう。すべてを解決できれば、そのときあなたには、真犯人が誰かがわかっているはず。ただし、そのためには目と頭脳の働きが必要です。はたして、あなたは、名探偵になれるでしょうか?長年にわたって全世界で愛されたミステリー・パズル。あなたの挑戦をお待ちしています。
ある日、偶然に見つけた思い出の少女の写真。彼女は今どうしているのだろうか? そのちょっとした好奇心はいつしか憑かれたような思いに変わり、ダニーはわずかな手掛かりを追って彼女の足跡を辿り始める。この青年の物語と交互に語られていくのは、ある悪女の物語。二人の軌跡が交わるとき、どんな運命が待ち受けているのだろうか? サスペンスの魔術師の代表作がついに登場。