著者 : 笙野頼子
発禁作家になった。 「何も変な事も書いていない」 「自分が女である事を、医学、科学、唯物論、現実を守るために書いた」 多くの校閲を経て現行法遵守の下で書かれた難病、貧乏、裁判、糾弾の身辺報告。 「群像」「季刊文科」に掲載された作品を中心に再構築。 書き下ろし作品「ハイパーカレンダー1984」のほか、著者自身による自作解説なども随所に盛り込む。 前書き 発禁作家になった理由? 女性文学は発禁文学なのか? 九月の白い薔薇 -ヘイトカウンター 返信を、待っていた 引きこもりてコロナ書く #StayHomeButNotSilent 難病貧乏裁判糾弾/プラチナを売る 質屋七回ワクチン二回 古酒老猫古時計老婆 ハイパーカレンダー1984 初出一覧
いつも初めて会う 笙野頼子、今 沼底からひびく 澄んだ魂の声 老いと病い その向こうに突如あらわれる死。 向かい合い、寄り添い、 ゆめに書く うもれても書く 共に暮らしたすべての猫に出会うために。 回転するしっぽ、ちっぽ、ぷっくん、ぷっくん。しっぽ、ちっぽ、ひょんひょんくるりん、くるりん、ぴょん! 猫と一身に生きる 笙野頼子 書き下ろし! [初版限定]カラー猫写真帖「猫沼二十年」付き 猫 住 ねこずまい 猫 移 ねこうつり 猫 幸 ねこざいわい 猫 隠 ねこがくれ 猫 活 ねこもとめ 猫 再 ねこふたたび 猫 生 うまれかわった 猫 再 うちのこです 猫 現 あたし、来てよ! 猫 沼 ねこにおぼれて 猫 続 あとがきではなく
師匠は私を作家にしてくれた 二度目に会った時はお骨になっていた 苦節の十年、彼はずっと後ろに「いて」くれた 私淑する宇宙的私小説作家・藤枝静男。その深淵を新エピソードとともに読み解く。 他の誰にも書けない、敬慕の情に満ちた「師匠説」。 師匠!師匠! 戦争、拷問、結核を超え キリストもマルクスも彼は信じない 仏像を床の間に置き天皇を叱る 一日に四百人の眼球を診察し 茶碗が空を飛ぶ私小説を書いた
男尊国にっほんで側室奴隷の子として生まれ、女尊国ウラミズモに移民した市川房代は、男性保護牧場歴史資料館の責任者となり、館内で「保護」する性犯罪者たちの生死を委ねられていた。請願、要求も房代に集中する激務の中、警視総監、法務大臣を輩出する白梅高等学院の少女たちに銃で脅され、にっほんの少女遊廓からの訴えをきき、死者のメールに耐え…。そんなある日、齢数千年の石の女神が訪れ…。自由か、死かー女性たちの存亡を賭けた闘いが、いま幕を開ける!
愛猫よ君のために戦争を止めたい。しかし私には文学しかない。さぁ、だから文学で戦争を止めるよ。お髭ふくふく毛色白黒垂れ耳の猫神様が語る平和で幸せな猫台所日記に影を落とす戦前。愛・猫・愛・飯・戦・争・反・対ご飯とお薬、憲法守れ!本書は新聞テレビなどより良く報道しております 今? 日本? 戦前だよもう、危険すぎる。なのに「報道」は黙ったままなのかい。 ああ? 地獄は世界中で進行しているよ。根本に何があるって? 人間を数字化し喰らいつくす新自由主義さ。それは自由貿易とは名ばかりの人喰い条約によってもたらされる。 その化け物の名は、TPP、RCEP、日米FTA、日欧EPA、TiSA…… 他国ではこの人喰い条約に国民挙げての反対運動が起こり焼身自殺まで出た。我が国は? そう、マスコミのだんまりと腑抜けにより、国民は何も知らされぬまま……しかも日本はこのまま戦争になってしまうのか、前の戦争の傷と暴力を引きずったままで。とどめに派兵? じゃあ、止めるよ! 文学で戦争を止めてやろう。文芸誌から文学枠で出版をするさ。これなら言論統制もできないってこと。そう、「究極の報道」だよ。 甲状腺機能亢進症の老猫を介護する、希少難病、混合性結合組織病の作家教授が、ひたすらに描く、「まだ幸福な」日常 その大切な猫と大好きな台所や、簡単でおいしい料理に忍び寄る戦争 そうだよ文学は何からも目を背けることのできない、真の報道なのさ デモも行ってみたよ国会前にもね、少しだけど書いたから こうして、かつて作家が保護した七匹の猫たちまでも、ついに総がかりでカウンター発言、怒涛のツイートを(しかも帯には全員の猫アイコンが)! ドーラ@dora はぁ文学に政治を持ち込むなですって リュウノスケ@ryunosuke でも文学部から徴兵されるんだよ? モイラ@moira ほほう、戦争が猫と台所を避けて通るとでも ギドウ@guidoux FTATPPで水道代超上がるよ猫のお薬もね獣医さんまでが危険キケーン ルウルウ@loulou 日米FTA戦争は付け合わせ(ミサイル危機はおまけ)ねえねえこれ拡散してくださる? カノコ@kanoko 漱石の猫だって「ちと困る」はずよ フミコ@fumiko 病人殺すな赤ちゃん消すな田畑なくすな猫さん救え 愛猫よ君のために戦争を止めたい。しかし私には文学しかない。じゃあ、さあ 文学で戦争を止めよう。私たちのご飯とお薬と憲法を守るために。
失礼ですが御主人は? 収入は? 本籍地は? 保証人は? バブル後期の東京で“単身女性の安全な住まい”を求めて漂流する長編「居場所もなかった」に加え、後の“家族”キャト、ドーラ、ギドウ、モイラ、ルウルウをめぐる住居転々の短編。さらに不意の別れを描く「モイラの事」、その悲しみを越える単行本未収録の「この街に、妻がいる」、作者と猫の書き下ろし近況エッセイ二編も収録。 私は猫と出会ってこそ人間になった。 猫を知らぬころの悲しみと知ってからの喜怒哀楽をひとつながりに眺めて、笙野文学の確かな足跡を示す作品集。 <内容紹介> 失礼ですが御主人は? 収入は? 本籍地は? 保証人は? あなたは大家さんから好かれない、……学生専用となるワンルームを追われる独身中年女性、どこにも属せない無名作家が……イラク戦争下、バブル後期、家賃高騰中の東京において、“女性の安全なひとり住まい用ワンルーム”を求めて漂流する、絶版十五年ついに“復刊”の長編に加えその後の“家族”との出会い、キャト、ドーラ、ギドウ、モイラ、ルウルウを巡る住居転々の短編。 川端賞候補作「増殖商店街」、ふいの別れを描く「モイラの事」、その悲しみを越える、記念号掲載の未収録作品「この街に、妻がいる」さらに、書き下ろしお馴染み作者と猫の近況報告エッセイ二編収録。 猫をしらぬころの悲しみと知ってからの喜怒哀楽をひとつながりに眺める。「私だけが知っている、本屋にろくに置いてないけと大好きな」作家の恍惚、悲嘆、超克の猫出世街道。 <目次> 前書き 猫道、--それは人間への道 冬眠 居場所もなかった 増殖商店街 こんな仕事はこれで終りにする 生きているのかでででのでんでん虫よ モイラの事 この街に、妻がいる(単行本未収録作品) 後書き 家路、--それは猫へ続く道 解説:平田俊子/年譜・著書目録:山崎眞紀子 前書き 猫道、──それは人間への道 冬眠 居場所もなかった 増殖商店街 こんな仕事はこれで終りにする 生きているのかでででのでんでん虫よ モイラの事 この街に、妻がいる 後書き 家路、──それは猫へ続く道 年譜 山崎眞紀子 著書目録 山崎眞紀子
千葉県S倉市に住む埴輪詩歌は、「指導教授」でもある最愛の祖母・豊子をひょうすべに殺される。母が営む花屋は世界企業に潰され、父は「少女遊郭」に入り浸り死んだ。やむなく詩歌は少女遊郭の「ヤリテ」見習いに入るがたちまち馘、そこで出会った夫も、人喰いの餌食に。時は流れ、権力者からの求愛、世界を揺るがす手紙がもたらされたのだが…詩歌の“生”とは何であったのか!?地に堕ちた自由と民主主義を問い直す、予言的物語。
幸福になることは復讐である、怒りを忘れぬことは未来への道である。二〇一〇年九月十七日、愛猫ドーラ逝くー悲しみで「死んだ」笙野のワープロの中、荒神様は自力で生き続けた。「静かすぎる」極限ポリフォニー。
第67回野間文芸賞受賞!2013年2月、突然の高熱と激痛に襲われた作家は膠原病の一種、「混合性結合組織病」と診断される。不治、希少、専門医にも予測が難しいその病状……。劇薬の副作用、周囲からの誤解、深まる孤立感。だが長年苦しんできたこの「持病」ゆえの、生き難さは創作の源だった。それと知らないままに病と「同病二人」で生き、書き続けた半生をここにーー。
「森羅万象は金毘羅になるのだ。金毘羅に食われるのだ」--私と金毘羅の神仏習合一代記。二十一世紀の世界文学に屹然とそびえ立つ、純文学の極北がここに著者圧倒的代表作! 第十六回伊藤整文学賞受賞作品。
「私は決して猫が好きなのではない。猫を飼うのも下手だ。ただ、友達になった相手がたまたま猫だった」-猫たちのために都内のマンションを引き払い、未知なる土地千葉S倉に住むことになったものの、そこも彼らの安住の地ではなかった。新しい闘いが今、始まる。涙と笑いで読む者の胸を熱くする、猫と文学を巡る奮闘記。
純文学の守護神にして永遠の「新人」、笙野頼子。デビュー後暗黒の十年を経て、立て続けに受けた三つの栄光ー野間文芸新人賞受賞作「なにもしてない」、三島由紀夫賞受賞作「二百回忌」、芥川賞受賞作「タイムスリップ・コンビナート」を一挙収録。いまだ破られざるその「記録」を超え、限りなく変容する作家の栄光の軌跡。
国を追われ故郷を奪われ来歴を消され名前を奪われ真実を消されて千五百年。じわじわと囲まれていないことにされた海洋華厳王国の逞しき精霊。自髪の作家が千葉の建売で見た…真夏のミル・プラトー千五百年史。
愛している-深く、限られた支持の中で作家は書き続けた。愛している-叩かれるために世に出た作家は死ななかった。愛している-滅びた神の声を聞いて彼女は「金毘羅」になった。愛している-さらなる危機が来た、祈りを失い、そして。愛している-内なる他者に出会う。生きる力は、消えない。判らなくてもいい、唱えてみればいい。言葉の力によって、生きようとする人と再生しようとする人のための愛の呪文。