著者 : 芥川龍之介
荒廃した平安京の羅生門で、死人の髪の毛を抜く老婆の姿に、下人は自分の生き延びる道を見つける。表題作「羅生門」をはじめ、初期の作品を中心に計18編。芥川文学の原点を示す、繊細で濃密な短編集。
王朝末期の荒廃した都を舞台に展開する凄惨な人間絵巻「羅生門」、師漱石も賞賛した、長い鼻を持つ禅智内供の内心の葛藤「鼻」、芋粥に異常な執着を持つ男「芋粥」、女をめぐる盗賊の兄弟の確執「偸盗」。いずれも『今昔物語』『宇治拾遺物語』などに素材を得たもので、芥川王朝物の第一冊として編集。
餓死するか、盗人となるか。極限に追いこまれた青年の心理と行動から、善と悪の相対性を描いた「羅生門」、自らの芸術のために実の娘を焼き殺してしまう天才絵仏師の狂気を描いた「地獄変」の、表題作二作品のほか、「今昔物語」に着想を得た“王朝もの”を中心とした芥川の代表的中・短篇八作品を収載。「新撰クラシックス」シリーズ、第八作。
昭和、平成とあまたの作家が登場したが、この天才を越えた者がいただろうか? 近代知性の極に荒廃を見た作家の、光芒を放つ珠玉集。二十一世紀への心の遺産「現代日本文学館」その二
芥川が小説、随筆、童話、戯曲と、その才気にまかせて様々のジャンルで試みた作品の中から、広い意味で「子どもむき」と考えられる作品を選び収めた。この作品群から、機智や逆説や諷刺、そしてまた、そうした理智の鎧で固められた奥にひそんでいる作者の、少年のような純潔で素直な魂を感じとることができる。
地獄の池で見つけた一筋の光はお釈迦様が垂らした蜘蛛の糸だった。絵師は愛娘を犠牲にして芸術の完成を追求する。両表題作の他、「奉教人の死」「邪宗門」など、意欲溢れる大正7年の作品計8編を収録する。
運 道 祖 問 答 袈裟と盛遠 地 獄 変 邪 宗 門 竜 往 生 絵 巻 好 色 藪 の 中 六の宮の姫君 二 人 小 町 解 説(中村真一郎)