著者 : 花村萬月
過食嘔吐を繰りかえす小説家志望の自称モデルと現実が怖い簾禿の中年マゾヒストと死に小説の核をみつけた。芥川賞作家と小説の奴隷である敏腕編集者の「舎人の舌」は数多の虚構と妄想を過食し、嘔吐する。清められる。「純」文学最新刊。
新宿で最も有名な探偵“眠り猫”。俺はその息子だ。金にだらしない親父のせいで、俺はオカマのやってる呑み屋でバイトする羽目に。ある日、店に鷲尾という総会屋が現れた。舎弟・富士丸を引き連れて。そして富士丸は、おもむろに店をぶっ壊し始めたのだった。-確かに俺は奴らの匂いに惹かれた。友情も感じた。だが、俺たちは出会ってはいけなかったんだ。『眠り猫』の興奮再び。
青い左眼をした沙奈とのセックスのあと、気がつけば快速に乗り新宿に着いていた。慾望はすでに発散しつくしているのにー。幼い日に、私は性技を教えこまれた。無数の女と経験を重ねた。だが、作家として暮す現在は、いわば自分本位の性を貪っているのだった。歌舞伎町の覗き部屋を訪れた私は、どこまでも対照的な女たち、美和と奈々に出逢う。鬼才が、幻想と本能を描き尽くす。
身を潜めていた修道院を抜け出し、長崎・五島列島に向かった朧とアスピラントの教子。島に残る隠れキリシタンの痕跡を巡る旅の中、朧は“殺人者の横貌”を垣間見せる。そして教子は自分が心身ともに朧に囚われてゆくことを確信した。『ゲルマニウムの夜』に始まる『王国記』シリーズ第三弾は、『汀にて』と『月の光』の二編を収録。
ついに父を殺してしまったヒカルは、組織に追われる一匹狼のヤクザ・鉄男に導かれ、ともにオートバイで放浪の旅に出た。西へ、北へー。二つの孤独な魂の果てしない逃避行は続く。そして、ひたすらに走り続ける鉄男との旅はヒカルをいつしか大人の男へと成長させるのだった。一方、残された萌子や夏美、母の真莉子にもさまざまな転機が訪れ、やがて悲劇の歯車は少しずつ回り始める…。
殺人の咎を逃れるため、修道院兼教護院に身を寄せている青年・朧。暴力と性の衝動の中で、自分の倫理を構築しようとする朧は、ある日施設を辞めた元修道士の赤羽をひそかに訪ねる。朧の傍らには妊娠したシスターの姿が…。芥川賞を受賞した『ゲルマニウムの夜』の続編、『王国記』シリーズ第二弾の待望の文庫化。
排気量2000ccの改造バイクを愛する売れない物書きのジョー。新興宗教団体に麻薬で縛られた知人を助けるため、絶世の美女にして空手の有段者である律子とともに、東京から丹後半島までバイクで駆け抜け、教祖と対峙する。性と麻薬と宗教を描いた長篇ハードボイルド。
人を殺し、育った修道院兼教護院に舞い戻った青年・朧。なおも修道女を犯し、暴力の衝動に身を任せ、冒涜の限りを尽くす。それこそ現代では「神」に最も近く在る道なのか。世紀末の虚無の中、神の子は暴走する。目指すは、僕の王国!第119回芥川賞を受賞した戦慄の問題作。
次郎、17歳。吉祥寺で週二回、ギターを習うだけが日課の毎日。ロック世代の母親と画家志望だった父は、学校に行かなくても煩くは言わない。退屈、恵まれ過ぎているという退屈ー。そんな時、音楽講師に誘われて知った「性」が世界を変えた。昨日とは丸っきり違ってる今日。愛しき少年の時間を描く青春長篇。
哀しく、それでいて熱い旋律。沢村がつま弾く音に、麗子が目を付けた。麗子は沢村が世話になっているヤクザ者・山城の溺愛する妹だった。麗子は美女の自殺志願者だった。そして、麗子は悪魔だったー。沢村はたった一度の麗子との快楽の代償として、ギタリストの命である指を失った。そればかりか巨大な野獣にいたぶられ、人間としての尊厳をも失った。すべては麗子の罠だった。沢村を指の動かない天才ギタリスト、ジャンゴ・ラインハルトにするための…。男女の、兄妹の、粘り付くような濃い愛憎を、物語を通して描き切った花村文学の真骨頂。
ヒカル、18歳。大学受験に失敗し、やり場のない鬱屈に日常は支配されている。親に内緒で初めて幻想加速器を手に入れた。黄色いオートバイ、CB400SF。ある日、有名作家である父の盗作事件が発覚。やがて鬱屈が臨界点を超えてしまう…。そしてヒカルは旅立った。一匹狼のヤクザ鉄男とともに愛車に跨がり、風に吹かれて転がって。-剥き出しの魂たちよ、何処を目指す!?新しきモラルの楽園か、明日なき倫理の煉獄か。芥川賞作家が放つ衝撃のエンタテインメント最新長編2000枚。
単車で転んで彼女にケガさせた。でも、彼女の白い肌もBMWも俺には同じ位愛しくて。伊豆の海沿いのカーブで、歌舞伎町の路上で、また二人きりの空間で生み出される“青春”という時間のつらなり。そこに在るのは、自由すらもて余してしまう凶暴な情熱と、ほんの少しの虚しさ…。切なくて、愛しい青春の五断片。
諏訪徳雄は、コンピュータおたくの四十男。ある日突然、妻の沙夜子がコツコツ貯めた一千万円の貯金とともに蒸発してしまった。人生に躓き挫折した夫、妻も仕事も金も希望も、すべて失った中年男を救うのは、ヤクザ者の義弟とソープ嬢!?胸を打ち、魂を震わせる「再生」の物語。吉川英治文学新人賞受賞作品。
南シナ海の烈風。眼下で砕ける三角波。激しい時化に呻く25万トンの巨大タンカーの中で、村上の友人、崔は死んだ。仕事中の事故とはいえ、崔を死に至らしめた原因は、日本刀を片手に彼らを監督する徳山の執拗ないたぶりにあった。徳山は同性愛者であった。そして村上を愛していた。村上と親しかった崔の死こそ徳山の嫉妬であり、彼独自の愛の形であったー。横浜・寿町を舞台に、錆び付いたギタリスト村上とエキセントリックな歌姫綾、そしてホモのヤクザ徳山が奏でる哀しい旋律。芥川賞作家が描く、濃密で過剰な物語。
俺は“キツネ”。元ヤクザだ。元相撲取りの蒼ノ海とともに東京を追われ、札幌の旅館に宿泊していた。女将の工藤純子に惚れた弱みから、面倒なことに巻き込まれた。純子に弟の武彦を更生させるよう頼まれたのだ。純子は武彦の博打のせいで多額の負債を愚連隊の大神組にかかえていた。愚連隊のボス・大神に会った俺はなぜか大神と意気投合してしまい、いつのまにか地元の暴力団の吉本組襲撃を手伝い、さらには秘境・白神山地に行く羽目に…。都会に敗れた男と女のねじれた愛憎が迸る究極の暴力ブルース第2弾。
修道院で育った天涯孤独の美少女・山崎紫苑は、完璧な殺人マシーン。神の名の下に組織に純粋培養され、政府の要人らを始末する日日を過ごしていた。そんなある日、完全防備のはずのマンションの部屋に何者かが侵入し、殺されかける。さらに好意を寄せていた管理人も、実は紫苑を狙う暗殺者であった。いったいなぜ。不安と絶望のさなか、偶然出会ったフリーのカメラマン・伊東から、初めて現実世界を知らされる。伊藤を愛するようになり、自我が芽生えた紫苑は、次第に組織と自分との存在に疑いを…。