著者 : 芳川泰久
西郷の暗黒面を支えたあの男を追え。“二度目の明治維新”は、なぜ歴史の闇に消えたのか?中江兆民とあの男が、勝海舟と図り、西郷を動かした!明治政府転覆計画が実行直前で消えた謎に迫る、傑作歴史小説。
ご存じ、松山で大暴れして教師を辞め、東京に帰った坊っちゃんは、それから、街鉄の運転手になった!清は念願かなって坊っちゃんと二人暮らし、山嵐は幸徳秋水に出会い、大逆事件に巻き込まれ…激動の明治を駆け抜ける大ロマン、続「坊っちゃん」。
作家志望の「ぼく」が味わう苛烈な恋、そして「時」の不思議。マルセル・プルースト『失われた時を求めて』は、原著で全七巻、翻訳では原稿用紙にして一万枚まど、文庫本にして十冊以上になる。本書は、小説家とフランス文学者の手によって、有名なエピソードや場面はあたう限り残しつつ、プルーストのエッセンスと雰囲気を損なわずに、否、むしろ濃厚にくっきりと香り立つようにした約一千枚の縮約版である。
角田光代氏と『失われた時を求めて 全一冊』を編訳した著者は、原文を詳細に辿るうちに、プルーストが込めた秘密の思いに気づく。ラスキン、ベルクソンから最新の研究まで文献を渉猟し、ついにはヴェネツィアへ飛んで、わが目で確かめたものとはー?テキスト論の第一人者が、従来の批評スタイルに拘らず、大名作を縦横無尽に論じた文学的冒険の著。
娘時代に恋愛小説を読み耽った美しいエンマは、田舎医者シャルルとの退屈な新婚生活に倦んでいた。やがてエンマは夫の目を盗んで、色男のロドルフや青年書記レオンとの情事にのめりこみ莫大な借金を残して服毒自殺を遂げる。一地方のありふれた姦通事件を、芸術に昇華させたフランス近代小説の金字塔を、徹底した推敲を施した原文の息づかいそのままに日本語に再現した決定版新訳。
マンションの十四階から語り手は、開発によって次第に変化する遠景の中にこんもりとした丘を見つけ、それが地名の由来となった馬加氏の首塚と知る。以来テーマはひたすら首塚の探索となり、新田義貞の首塚から、さらに『太平記』『平家物語』のすさまじい首級合戦へとアミダクジ式につながり、時空を越えて展開する。第四十回芸術選奨文部大臣賞受賞作。
『わたしはFをどのように愛しているのか?』との脅えを透明な日常風景の中に乾いた感覚的な文体で描いて、太宰治賞次席となった十九歳時の初の小説「愛の生活」。幻想的な窮極の愛というべき「森のメリュジーヌ」。書くことの自意識を書く「プラトン的恋愛」(泉鏡花文学賞)。今日の人間存在の不安と表現することの困難を逆転させて細やかで多彩な空間を織り成す金井美恵子の秀作十篇。