著者 : 菊地よしみ
前任者が謎の失踪を遂げ、アッティリウスはローマ帝国最長の水道の管理官に任命された。だが就任早々、断水という重大問題に直面した。水道を修復するため彼はポンペイに向かうが、当地では大富豪が密かに悪事を行なっていた。大富豪に反感を抱くその娘との恋を育み、彼は水道の修復に命懸けで挑む。が、ヴェスヴィオ山の噴火が目前に!古代都市ポンペイが壊滅するまでの四日間のドラマを壮大なスケールで描く話題作。
1906年、サンフランシスコは黒幕の支配下で市政・警察は腐敗していた。市を浄化すべく警察副本部長バイロン・ファロンが闘いを開始するが、彼は死亡してしまう。バイロンの息子の新人警官ハンターは父が何者かに殺害されたものと考え、ブラザーフッドと呼ばれる彼の親族とともに、指紋、盗聴、録音といった最新の技術を用いて捜査し、悪辣な一派を追いつめていく。だがその時、未曾有の大地震が直撃、建物は倒壊し、市は炎に包まれた。混乱と惨状の中で繰り広げられる、正義の闘いの行方は?市の浄化に命を賭けた男たちの壮大なドラマ。ワーナー・ブラザースが1億3000万ドルの製作費をかけて映画化する話題作。
パリへと侵攻してくるナチスから逃れるため、若く美しい人妻は二人の子供を連れ“大脱出”の列に加わった。だが、敵の銃弾は容赦なく民間人へも襲いかかる。周囲の人々が無惨にも殺害されていくなか、彼女と子供たちの命を救ったのは灰色の目をした不思議な少年だった。やがて迷いこんだ無人の一軒家で、女は少年とのはかない愛に目覚めてゆく…戦争に翻弄される女心のゆらぎを鮮やかに描きジョルジュ・シムノン文学賞に輝いた愛の物語。
小学校の問題児ティモシーは、いつも突飛なものになりきってしまう。特に彼が狼男になっている時は警戒が必要だ。先生のたび重なる注意も聞かず、彼は女の子に噛みつき、学校は大パニックに…思いこみの激しい少年が引き起こす珍騒動を描く表題作。少年時代の記憶に捕われ、自分は幼児性愛者なのではないかと恐れる教育書の作家が、愛娘の教育に右往左往する姿が滑稽な「グリーンの本」。失業、破産、離婚と重なり自棄になったエディは、別れた妻の祖母から宝石箱を騙し取ろうと企み、家に行った。ところが老婆のとまらない思い出話を聞かされたあげく、一泊するはめに…思うように事が運ばずあせる男に意外な結末が待ちうける「ミセス・ボックス」。家族の人間関係のほころびを繕おうと奮闘する人人の姿が、皮肉な笑いを誘う。現代アメリカを代表する作家の粒ぞろいの9篇。
スーパーヒーローが独裁者から世界を救う!いとこ同士のジョー・カヴァリエとサミー・クレイは、『スーパーマン』の登場で黄金期を迎えたコミック業界で名をあげようと野心を抱き、究極のヒーロー“エスケーピスト”を生みだした。ナチスの魔手が迫ったプラハからここニューヨークへ逃れてきたジョーの体験を投影したエスケーピストはたちまちアメリカじゅうを席巻し、二人は頂点を極める。物語作家のサミーと、卓越した画才を持つジョーは、性格は違うが気も合う最強のコンビだった。しかし非情な戦争が強い絆で結ばれた二人を引き裂き、彼らを別々の運命へと導く…。野心的なふたりの青年の波瀾万丈な人生をパワフルに描くピュリッツァー賞受賞作。
銀行の金庫室に長年眠っていた大量の録音用蝋管。それは大恐慌下の1934年、検察官トム・フレッシュアワーが遭遇した事件の記録だった。当時、彼はアマチュア考古学者レイニーとともに遺跡発掘品収集家の首なし死体が発見された事件を捜査していたのだ。真相を追う彼らの前に次々と発生する凄惨な殺人と発掘品盗難。その末に浮かびあがる驚くべき事実とは?情感溢れる筆致でサスペンスフルに描く、アメリカ図書賞受賞作。
まいった。大学教授で作家のグレイディは危機に瀕していた。書いても書いても原稿が完成しないのだ。そのうえ妻には逃げられ、愛人からは妊娠を告げられる始末。そこへ破滅型の担当編集者クラブツリーがやって来て、事態はさらに混沌としてきた。ひょんなことから、彼はクラブツリーと変わり者の教え子ジェイムズと共に狂乱の週末を過ごす羽目に…書くことに取り憑かれた人々の狂騒をシニカルに描く、ポップ・ノヴェル。
バークに接触してきた女はクリスタル・ベスと名乗った。ストーカーから女たちを守るための隠れ家を経営しているという。彼女に依頼され、バークはストーカーから一人の女を救いだした。腕前に満足したクリスタル・ベスは、彼女自身もある男から脅迫を受けていると告白する。男の正体を探るバークの前に狂信的なネオ・ナチ集団の影が!アウトロー探偵バークが身を挺して巨大な悪を討つ、シリーズ第10弾。
親友を助けるため潜入したこの国は、私がかつて秘密活動をしていた危険な国だ。案の定、不穏な出来事が続くなか、親友は、没落した富豪の孫と名乗る娘の秘宝探しに、私を引き入れる。だが、その矢先、何者かが私を襲ってきた!秘宝を狙う者が他にもいるのか、それとも私の過去に何か関係が?海洋生物学者ドク・フォードが挑む、謎とロマン満載のサスペンス。
ヴェトナム戦争直後のオレゴン州ポートランド。戦争の後遺症により街は荒みきっていた。凄惨な殺人、暴行、コカインの蔓延。元特殊部隊員のパトロール警官ハンソンは、相棒のベテラン警官とともに、次々と起こる犯罪と闘っていく。戦場の悪夢と孤独にさいなまれながらも、彼は暴力も辞さずに街を守る、一匹の盲目の老犬だけを心の友として…現代ハードボイルドの巨匠ジェイムズ・クラムリーが絶賛した話題の警察小説。
美貌の婦人警官に淡い恋心を抱きつつ、犯罪を取り締まるハンソンはある日、特殊部隊の戦友ドクと再会した。ドクは麻薬に取りつかれその売人となっていたが、彼は友情を保ちつづけていく。だが、ハンソンを目の敵にする刑事が彼の経歴を調べているうちに、ドクとの関係に気づいてしまった。さらにハンソンは、異常な憎悪を燃やす一人の男に命を狙われるようになるが…孤高の警察官の壮絶な姿を描く、魂を揺さぶる巨篇。
フロリダの小島で海洋生物を研究する私は、ある日、天真爛漫な若い漁師ハンナと出会い、そのとりこになった。彼女は失業の危機にある漁師たちの立場を守る活動に熱心で、意気投合した私の友人が手伝うことになる。だが数日後、友人が何者かに襲われ、敵の魔の手は私とハンナの身にまで…海洋生物学者ドク・フォードの活躍を描く、トロピカル・サスペンス。
書きかけの原稿が2500枚を越えてもいっこうに収拾がつかず、途方にくれている作家のグラディ・トリップ。彼の長年の編集者でありながら、出版社のリストラでクビ寸前のテリー・クラブツリー。才能はあるがどこかズレてる、創作クラスの生徒ジェイムズ・リアー。三人の神童たちがスラップスティックに繰りひろげる、夜ごとのワイルド・パーティのはてに、一体どんな小説が書きあがるのか?奇才マイケル・シェイボンが、作家をめざすすべての人々に贈る、POPなメタフィクション。
内戦下のエルサルバドルでアメリカの秘密工作を遂行中、エド・パーテインは上官の罠にはめられて、陸軍少佐の地位を失った。そして今、ワイオミング州の銃砲店に勤める彼のもとにその上官の一人が現われ、秘密を洩らすなと忠告して、裏から手をまわして彼の職を奪ってしまった。失職したパーテインは、VOMIT(軍情報部の裏切りによる犠牲者たち)という組織の友人から、新たな雇い主を紹介され、ロサンジェルスへ飛ぶ。雇い主はミリセント・アルトフォードという婦人で、彼女は政治資金調達のエキスパートだった。最近、自宅に保管してあった政治資金百二十万ドルが何者かに盗まれ、犯人を突き止めたいのだが、ボディガードになってほしいという。パーテインは仕事を引き受けた。だが、かつての上官たちが、彼の口を封じるべく、今度は暗殺者を差し向けてきた!クールなタッチで描き出す、欺瞞と殺人の渦巻く危険な世界。絶大な人気を誇りながら、惜しくもこの世を去った巨匠のサスペンス溢れる最後の長篇。
スティーヴとサンドラ、ヘイルとヴィヴィアンの二組の夫婦は、かたい絆で結ばれた親友同士だった。数週間前、凄惨な殺人事件が突如四人の身に降りかかるまでは…。私立探偵ジョン・カディは、恋人の検事補ナンシーからメイン州で二組の夫婦の三人がクロスボウで射殺され、残された一人が容疑者として逮捕された事件の調査を依頼された。容疑者のスティーヴは一貫して犯行を否認しており、事件には不自然な点も多かった。調べを始めたカディは、四人が別荘地にやってきては地元民から顰蹙を買っていた事実を知る。さらにスティーヴが勤める会社の商売敵の陰謀説や、四人に利害関係を有する肉親の存在も浮かび上がってきた。残忍な手口の背後にはいったいどんな動機が。友情の裏に隠された歪んだ人間関係に迫るカディ。
「私は無実です。真犯人を探し出してほしい」夫殺しの容疑で起訴された美しい女性は、元警官の私立探偵フェイガンに訴えた。情況は彼女に圧倒的に不利。だが高額の報酬、それに警官を免職された汚名をそそぐ証拠が手に入ると知り、彼は引き受ける。しかし、事件は驚くほど奥深かった。サンフランシスコを舞台に、意表をつく展開で描く出色のハードボイルド。
エキゾチックな顔立ちに小麦色の肌-写真の娘はまるで生きているように美しく見えた。見開かれた紫色の瞳は、なにかを訴えかけるようにカディを見つめている…。保険会社の依頼で人気モデルが絞殺された事件の調査を始めた私立探偵のジョン・カディは、警察で彼女の写真を目にした。どうやら警察は強盗の仕業と考えているようだが、五十万ドルもの保険金が掛けられていたことから、計画殺人の疑いもあった。折しもカディはマフィアのボス、トミー・ダヌッチから接触を受ける。殺されたモデルは実は彼の孫娘で、カディに犯人を見つけだしてくれというのだ。関係者の証言からしだいに明らかになっていく娘の意外な素顔。執拗な調査を試みるカディが突き当たったものは、マフィア一族の隠された過去と錯綜した人間関係だった…。アメリカ私立探偵作家クラブ賞を受賞した筆者が放つ、話題のハードボイルド・シリーズ第七作。
私立探偵ジョン・カディは昔を思い出していた。最愛の妻が脳腫瘍にかかり、長いこと苦しみながら生死の境をさまよいつづけた日々。あのとき、安楽死という選択肢が頭に思い浮かばなかったといえば嘘になる。だが、ふたりでその件について話しあったことは一度もなかった…。今になってふたたび安楽死のことを考えるようになったのは、“死ぬ権利”を唱える法学教授メイジー・アンドラスの関係者から調査を依頼されたからだった。教授の死を予告する脅迫状が届いたので、差出人を突き止めてくれというのだ。教授は脳卒中で倒れた夫の自殺を幇助した過去があり、その体験をもとに始めた“死ぬ権利”を広める運動には、反対者が大勢いた。脅迫者はそのなかの一人なのか?それとも、内部事情に詳しいことからみて、教授の身辺の人間なのか?生と死のはざまで揺れ動く人間心理を繊細なタッチで描き、生きることの意味を問いかけた問題作。
サイゴンの広報室に勤務する下士官ペインは、いま軍事法廷の裁きを待っていた。彼は、同僚の元特殊部隊員ウイリンガムを戦場で射殺した罪に問われていたのだ。ウイリンガムは、特殊部隊中佐が組織した私兵部隊の不正行為に関係した疑いをもたれていた。ペインはそのウイリンガムの調査を軍とCIAから要請されていたのだ。だが、いったいなぜ、ペインは同僚を射殺しなければならなかったのか?戦場の闇に潜む秘密とは?