著者 : 菊池寛
※ 本書は「ワイド本」で、A5サイズ(単行本サイズ)で、「BIZ UDフォント」の明朝体で12ポイント程度と通常より大きめの文字で、読みやすくなっています。 他方、「大活字本」シリーズでも発刊していますが、それはB5サイズ(週刊誌サイズ)で、MS明朝体で20-22ポイント程度のより大きな文字になっています。 【解説】 菊池寛は、歴史物を多数執筆しています。「日本歴史物語全集」や「大衆明治史」「大衆維新史読本」など素晴らしい作品群です。その菊池が、日本の歴史の通史的な作品となっているのが、『新日本外史』であり、それを簡単にとりまとめた『二千六百年史抄』となります。いずれも昭和15年(1940年)の紀元二千六百年を記念して執筆されたものです。 『二千六百年史抄』はその執筆背景から神武天皇の御代からの説き起こしたものになっていますが、各時代時代の動きが簡潔にまとめられており、菊池の作品の特色の通り、人物に焦点を当てたものになっています。菊池は本作品の前書きで、「僕は、史学者でもない、歴史研究者でもない。しかし、歴史を愛し、歴史上の諸人物に親しみを持つ点に於ては、多く人後に落ちないつもりである。」と述べています。 紀元2600年を記念しての作品という性格から、記述ぶりがそれを感じさせる部分はありますが、それは措くとして日本の歴史全体を俯瞰した優れた通史的作品になっています。 【目次】 序/神武天皇の御創業/皇威の海外発展と支那文化の伝来/ 氏族制度と祭政一致/聖徳太子と中大兄皇子/奈良時代の文化と仏教 平安時代/院政と武士の擡頭/鎌倉幕府と元寇 建武中興/吉野時代/足利時代と海外発展 戦国時代/信長、秀吉、家康/鎖国 江戸幕府の構成/尊皇思想の勃興/国学の興隆 江戸幕府の衰亡/勤皇思想の勃興/勤皇志士と薩長同盟 明治維新と国体観念/廃藩置県と征韓論/立憲政治 日露戦争以後
もし『不思議の国のアリス』を日本の文豪が翻訳したら? そんな夢のような構想が現実となったのが、1927年刊行の『アリス物語』。 芥川龍之介と菊池寛による訳文は、アリスや不思議の国の登場人物たちがいきいきとユーモラスに描かれ、今なお色あせない魅力にあふれています。本書は、原書にあったいくつかの不足な点を補い、注釈や解説を付加して甦らせた『完全版 アリス物語』。アリスや芥川・菊池ファンの方はもちろん、『不思議の国のアリス』をはじめて読む方にもおすすめできる一冊です。 ◆はじめに ◆完全版 アリス物語 一章 兎の穴に落ちて 二章 涙の池 三章 コーカスレースと長い話 四章 兎が蜥蜴のビルを送り出す 五章 芋虫の忠告 六章 豚と胡椒 七章 気違いの茶話会 八章 女王の球打場 九章 まがい海亀の物語 十章 海老の四組舞踏 十一章 誰がお饅頭を盗んだか 十二章 アリスの証言 ◆注釈 ◆解説 本書の成り立ち ◆あとがき 文豪たちのアリスーー “お饅頭”はどこからやって来た?
最愛の妻を自死に追い込んだ理由を探る軽輩・友助の闘いを描く「木綿触れ」。家族に売られ島送りにされた渡世人・忠七が切なる願いを叶えるべく帰郷する「生国は地獄にござんす」。盗賊団頭首・角右衛門が活躍し、鬼平シリーズの先駆をなした「看板」。彼らが命を懸けてでも守りたかったもの、成し遂げたかったことは何だったのか。“男の死”をテーマに編まれた飲泣呑声の時代小説アンソロジー。
楽器を持った黒人が三名漂着した。牢で騒音をたてる彼らに興味を持った殿さまは、日頃嗜む篳篥の奏法を援用しクラリネットでセッションに加わり、やがて…(「ジャズ大名」)。春の夕刻、井戸端で身体を拭う百姓の女房の裸身を覗き見て、思わず突撃した大名は、減封国替の憂き目に遭うのだが…(「晩春の夕暮れに」)。小名から関白・将軍まで、選び抜かれたバカ殿たちが繰り広げる大狂宴。
芝居に夢中な知的美女の圭子、聖母の清らかさと娼婦のエロスを備えた新子、蠱惑的魅力で男を翻弄するベビーエロの美和子の三姉妹。生活を顧みない姉妹のため、家庭教師となった新子は、軽井沢の別荘へ。元子爵令嬢の妻に辛くあたられるうちに、新子は夫と心を通わせてしまう。新聞連載中から評判をよんだ幻の名作。
真珠のように美しく気高い、男爵の娘・瑠璃子は、子爵の息子・直也と潔い交際をしていた。が、家の借金と名誉のため、成金である勝平の妻に。体を許さぬうちに勝平も死に、未亡人となった瑠璃子。サロンに集う男たちを弄び、孔雀のように嫣然と微笑む妖婦と化した彼女の心の内とは。話題騒然のTVドラマの原作。
貧しい殿上人の娘・六の宮の姫君は、新婚のつかの間のしあわせもむなしく、陸奥へ赴く夫と五年の約束で悲しい別れを強いられてしまったが…。『今昔物語集』を中心に、『古事記』や『お伽草子』、江戸時代の書物などに材を得て、原話の持つ自然の面白さを新鮮な語り口で描き、説話文学のおおらかなロマンを堪能させる好読物。
元禄期の名優坂田藤十郎の偽りの恋を描いた『藤十郎の恋』、耶馬渓にまつわる伝説を素材に、仇討ちをその非人間性のゆえに否定した『恩讐の彼方に』、ほか『忠直卿行状記』『入れ札』『俊寛』など、初期の作品中、歴史物の佳作10編を収める。著者は創作によって封建性の打破に努めたが、博覧多読の収穫である題材の広さと異色あるテーマはその作風の大きな特色をなしている。
有名な九州耶馬渓、青の洞門の伝説を小説化した『恩讐の彼方に』、封建制下のいわゆる殿様の人間的悲劇を描いた『忠直卿行状記』は、テーマ小説の創始者たる菊池寛の多くの作品中の傑作として知られる。他に『三浦右衛門の最後』『藤十郎の恋』『形』『名君』『蘭学事始』『入れ札』『俊寛』『頚縊り上人』を収める。