著者 : 角川書店装丁室
ラブホテルの一室で殺人事件が起きた。殺人現場で犯人として名乗り出たのは、まだあどけなさの残る女子高生。この事件の捜査にあたった三河刑事のもとに、「事件から手を引け」という脅迫状や爆発物が届けられて(「明日なき十代」)。表題作「明日なき十代」をはじめ、「泳ぐひと」「たそがれの維納」「愛情の瞬間」と、懐しの名画からタイトルを借りた珠玉の短編ミステリー四作を収録。
次期首相の本命と目される大物代議士を父にもつ柴田龍彦。彼は、四年前に起こした不祥事の結果、精神に失調をきたし、父の秘書を務めながらも、日々の生活費にさえ事欠く不遇な状況にあった。父の総裁選出馬を契機に、政界の深部に呑み込まれていく彼は、徐々に自分を取り戻し始めるが、再生の過程で人生最大の選択を迫られる…。一度きりの人生で彼が本当に求めていたものとは果して何だったのか。『一瞬の光』『不自由な心』に続く、気鋭の傑作長編。
昭和十六年十二月八日、貧しい東洋の島国が営々と築き上げた強大な海軍力は、米国太平洋艦隊を撃滅した。だがわずか四年後、日本人の誇りでもあったこの海軍が消滅してしまうとは、誰が想像し得たであろう。攻撃前日まで、米軍の動きを刻刻と伝えた実在の諜報員と、連合艦隊司令長官山本五十六。世紀の大作戦を担った二人の海軍軍人に、壮絶な近代日本の宿命を重ねて描く長編戦史小説。
役所勤めの浅井が、妻の死を知ったのは、出張先の宴会の席であった。外出中、心臓麻痺を起こし急死だったという。発作は、どこでどう起きたのか。義妹によって知らされた死に場所は、妻から一度も聞いたことがなかった地名であったー。死の真相を探るうちに、思わぬ運命に巻き込まれていった男の悲劇を描く復讐サスペンス。
二十年ぶりに再会した泰子に溺れていく私は、同時に彼女の幼い息子の不信な目に怯えていたー「潜在光景」。借金苦で自殺した社長はなぜ八十通もの遺書を残していたのかー「八十通の遺書」。わが子をさりげなく殺そうとする父親。が、息子はそれを察知していたー「鬼畜」。日常のちょっとした躓きがその後の運命を大きく変えた世にも怖ろしい六つの結末。
邪馬台国の研究に生涯を費やした孤高の考古学者・小池拓郎が殺された。その直後、彼の発掘していた古墳から邪馬台国の手がかりと思われる銅鏡が発見され、考古学界は騒然となる。浅見光彦は、小池が寄宿していた当麻寺の住職から事件解決を依頼され、早春の大和路へ向かった。老考古学者が遺した一通の古い手紙と色褪せた写真ー住職の娘・有里とともに事件を追う浅見は、いつしか時を超えた女達の妄執に搦め捕られてゆく。古代史のロマンを背景に展開する格調高い文芸ミステリー。
妊娠22週目の胎児の卵巣に存在する700万個の卵子。この生物学上の事実が、巨額の金をもたらすプロジェクトを生んだ! その神を冒涜する所業に一人の男が立ち向かうが……。
自由と開放の地を求め、相棒の黒人ジムとミシシッピ川を下る筏の旅に出るハックルベリ。様々な人種や身分の人々との触れ合いを通して、人間として本当に大切なもの、かけがえのない真実を見出してゆく。
霧の中、公園でデート中のカップルが、暴漢に襲われた。二人を助けようとした警察官は、逆にナイフで刺殺されてしまう。そして、助かった二人もなぜか現場から逃げ去ってしまった。数日後、男は女から別れを告げられた。「卑怯者!」という言葉を残して。男は自身の「罪」を償うために刑事に転職するがー。全てを懸けて意地を貫き徹した男を描く、白眉の“証明”シリーズ。
山村で起こった大量殺人事件の三日後、集落唯一の生存者の少女が発見された。少女は両親を目前で殺されたショックで“青い服を着た男の人”という以外の記憶を失っていた。多くの人命を奪った事件であったが、まったく手がかりは残されていなかった。しかし意外な所から、事件の糸口が見つかり…。人間の心奥に潜んだ野性を鋭く追求し、映画化され大反響を呼んだ傑作“証明”シリーズ。
子供を妊娠し浮かれているサエコの家に、夫の姉・実夏子が突然訪れる。長い間消息不明だったという実夏子は、そのまま勝手に住み着いてしまった。真夜中に化粧をしたり、冷蔵庫のハムを丸ごと食べたり、と不審な行動を繰り返す実夏子。何も言わない夫に苛つき、サエコの心はかき乱されていく…。出産を目前に控えた女性の心の揺れを描いた表題作ほか、一篇を収録。瑞々しい筆致で描き出された、心に染みる極上中篇集。
あの女性を、自分のものにしてみせるーー。奔放な愛と性のゲームに明け暮れた、最後のフランス貴族文化の爛熟と退廃を通して、エゴイズムと献身、人間の心の闇と普遍的な真実の愛の形を描く、不朽の名作。
ゲーム制作会社で働く汐路は、同僚がビルから転落死する瞬間を目撃する。衝撃を受ける彼女に、故郷・早瀬で暮らす姉から電話が入る。故郷の中学で女学生が同級生を猟銃で射殺するという事件が起きたのだ。汐路は同僚と女学生が同一のキャラクターグッズを身に着けていたことに気づき、故郷に戻って事件の調査を始めるのだが…。現代社会の「歪み」を描き切った衝撃のミステリ!第二十一回横溝正史ミステリ大賞受賞作。
「母さん、僕のあの帽子、どうしたでせうね?」西条八十の詩集をタクシーに忘れた黒人が、ナイフで刺され、ホテルの最上階に向かうエレベーターの中で死亡した。棟居刑事は被害者の過去を追って、霧積温泉から富山県へと向かい、ニューヨークでは被害者の父の過去をつきとめる。日米共同の捜査の中であがった意外な容疑者とは…!?映画化、ドラマ化され、大反響を呼んだ、森村誠一の代表作。
暗黒の森の中で銃声とともにこだまするうめき声。「来た。鬼が来たんじゃ」。昭和十三年、岡山県北部で起こった伝説の「三十三人殺傷事件」。おとなしく、「利発でええ子」だったはずの辰男は、なぜ前代未聞の凶行へと至ったのか。狂気か?憤怒か?怨恨か?古い村の因習と閉ざされた家族の歪な様相、人間の業と性の深淵を掘り下げながら、満月の晩に異形の「鬼」となって疾駆する主人公を濃密な文体で描き出した戦慄の長編小説。話題の女流作家が切り拓いた圧倒的迫力の新境地。
「葬式は人生最後の花道、最後のイベントだ」-そう言って自らの葬式の総合演出・プロデュースに取り組んでいた源田金蔵が急死した。菊島真ら五人の老人ホームの仲間が見守るなか、つつがなく葬式は進行しているかに見えたが、火葬の際に奇妙な事件が発生した。北多摩署の捜査から意外な真実が判明し、大きな衝撃を受ける菊島たち。「老い先はわずかだ。死に花を咲かせよう」と一念発起し、彼らは人生最後の大バクチに出ることを決意するが…。「老い」の概念を根底から覆す、痛快エンターテイメント小説。
新宿で助けた藤村雅子と、金沢高一はホテルで一夜を過ごしてしまう。雅子との一夜は、あまりにも甘美で金沢の心を揺さぶるものであったが、翌朝、手紙も残さずに雅子は消えてしまう。ところがその夜、金沢の妻の愛人が新宿で殺されていた。金沢のアリバイを証明できるのは雅子だけだったー。そして驚くべきことに、同じ頃、雅子の夫も殺されていた!事件を追う棟居刑事は、二人の間に隠された事実に、捜査の糸口を見つけるが…。森村誠一が男と女の間の奇妙な関係を描いた、長編・社会派ミステリ。
大手企業の総務部に勤務する江川一郎は、妹からある日、夫が同僚の女性と不倫を続け、滅多に家に帰らなかったことを告げられる。その夫とは、江川が紹介した同じ会社の後輩社員だった。怒りに捉えられた江川だったが、彼自身もかつては結婚後に複数の女性と関係を持ち、そのひとつが原因で妻は今も大きな障害を背負い続けていた…。(「不自由な心」)人は何のために人を愛するのか?その愛とは?幸福とは?死とは何なのか?透徹した視線で人間存在の根源を凝視め、緊密な文体を駆使してリアルかつ独自の物語世界を構築した、話題の著者のデビュー第二作、会心の作品集。