著者 : 諸田玲子
矢島家はおめでたつづきだった。お鳥見役の務めで遠国の密偵に出た嫡男は命からがら戻り、嫁は懐妊、長女も初子に恵まれた。が、来る者は拒まずで誰でも受け容れる珠世のもとには、難題が持ち込まれる…。めぐりあえた喜び、好評シリーズ第七弾。
将軍家治の安永年間、京の禁裏での出費が異常に膨らみ、経費を負担する幕府は公家たちに不正があるのではないかと睨む。密命が下り、御徒目付の姪・利津が女隠密として下級公家のもとへ嫁ぐ。闘いが始まる!
売れっ子芸者のお袖との仲も円満、親友に恋の指南もするとびきりの色男・瓢六。智恵と愛嬌を買われかりだされたある事件の聞き込みで、致命的なミスを犯してしまう。自分には何かが欠けているーお袖とも離れ、重い心を抱えた瓢六は、事件の陰にいる謎の美女を追い詰められるのか。人気シリーズ新展開。
江戸末期、駿河の小藩。その岩場からは、美しくも怪しい紺碧の渦が川面に見えた。流れゆく時と川と人。男女は渦に巻き込まれるように人生を移ろわせ、時に後悔し、時に鬱屈を抱え、あるいは平凡でも底光りするような日常を過ごし、いつしか果てていく。それもあり、これもあり。しみじみと美しい七つの物語。
八代将軍・吉宗の時代、質素倹約を強いる幕府に対抗して、尾張名古屋は遊興を奨励し、空前の繁栄を見せていた。異人との出会いから、夫をすて福岡を出たこなぎと、女敵討ちのために江戸を離れた鉄太郎。長い旅路の末に名古屋の地でめぐり逢った二人は、それぞれの秘密を胸に秘めたまま接近する。巨大な政争の具となっていることも知らずにー。著者渾身の傑作歴史時代小説。
事件が恋を深めていく、ほのぼの連作時代小説 かつて火盗改与力として豪腕をふるった祖父と暮らす結寿。ひょんなことで知り合った隠密廻り・妻木と共に麻布狸穴界隈で起きる不思議な事件の解決に力をつくす連作時代小説。(解説/青木千恵)
不義の恋の果てにこの世に生まれた美しい娘・おさい。江戸を襲った大火によって彼女の数奇な運命は回り始める。遊女、女スリ、大盗賊の娘、そして若き天才戯作者ー出会った人の心を少しずつ揺らし、救いながら、おさいは誰かをずっと待っている。果たして誰が、いつ?謎と人情が心に染みる七つの物語。
侠客・清水次郎長一家に2人の「松吉」がいた。一の子分、「森の石松」こと三州の松吉は美男で博打も喧嘩も強い兄貴分、いっぽう並外れた巨体で「豚松」と呼ばれた三保の松吉は女も博打も苦手な愛嬌者。好対照ながら同じように親と別れ、一家に身を寄せた2人は互いに認め合う。幕末の苛酷な運命が、2人と一家を待ち受けていたー。初夏、青葉のころに吹く「青嵐」のように、東海道を駆け抜けた最後の侠客を描く、傑作時代長編。
時は平安。都では、東宮と契った女は物怪にとりつかれるという噂が流れていた。東三条家、温子姫の女房・弥生は、母・近江の死に関する妙な噂を耳にする。真相を探るため、旧知の人々を訪ねる弥生。母の遺した和歌が二つの噂に関係しているらしいと突き止めるが、周囲で次々と怪死事件が発生し…。愛憎と欲望渦巻く宮中を舞台に描く、時代ミステリー。
井伊直弼の密偵として、その美貌と才気で幕末の嵐を駆け抜けた女・村山たかの、一途な恋と数奇な一生を描いた長篇小説。彦根・多賀大社で忍びとして生まれ育ったたかは、内情を探るために近づいた井伊家の直弼と恋仲になる。しかしその後、苛酷な運命が二人を襲う…。第26回新田次郎文学賞受賞作。
天一坊事件、加賀騒動、桜田門外の変、新撰組、坂本龍馬、高杉晋作、上野戦争と彰義隊ーー。享保年間から幕末維新まで、迫りくる国内外の危機と、新たな時代への鳴動を描く秀逸な八編。上巻『江戸騒乱編』
黒船来航、台場建造で騒然とする江戸品川。川越藩樋口家の主・杢右衛門と妻・沙代は、台場守備の陣屋築造のため、下屋敷に移り住むことになった。砂塵が舞う仮住まいの暮らしに、みおという砂まみれの女が下女としてやってくる。そして夫の朋友彦三郎も同居することに…。夫と妻と女と男、妖しく揺らぐ恋情を、新たな時代の息吹のなかに濃やかに描き出す長編小説。
小藩の江戸詰め藩士、倉田家に突然現れた女。若き当主・勇之助の腹違いの妹だというが、妻の幸江は疑念を抱く。「江戸褄の女」他、男女・夫婦のかたちを描く全6編。人気作家の原点、オリジナル時代短編集。
徳川の中期、将軍綱吉の時代。零落した公家の娘染子は侍女として大奥に出仕する。綱吉に見初められてその寵愛を受けるが、大奥に囚われるのを拒んだ染子は、重臣柳沢吉保の側室となり、綱吉の子を生す。二人の男との三つ巴の関係のなかで激しい恋情に身を焦がす染子。絢爛な元禄の歴史を背景に、権謀術数の渦中でも、志に燃え恋に心解き放つ女と男の、強靱な恋愛を描く長編小説。
夫を捨てた女は博多から、妻に逃げられた男は江戸から。女は家を飛び出した。男は女敵討ちの旅に出た。質素倹約を強いる将軍吉宗に対抗し、遊興が奨励され、空前の繁栄を謳歌する尾張名古屋へ。男も女も、夢に酔い痴れる。罠が待っているとも知らずに。歴史小説でしか味わえない、壮大な女と男の人間ドラマ。ロマンあふれる時代小説。
粋で婀娜な、天女湯の女あるじ・おれん23歳。お江戸八丁堀の真ん中にあるこの湯屋には仕掛けがあった。男湯に隠し階段、女湯には隠し戸、どちらも隠し部屋につながっている。おれんは番台に座って男女の仲を取り持つという案配。辻斬り、窃盗、心中、お家騒動。次々と起こる騒動の中、おれんの恋は実るか。
松の廊下の刃傷で内匠頭は切腹、浅野家はお取り潰し。後室瑶泉院は、夫の墓参に泉岳寺を訪れる。そこに、なぜか吉良上野介の妻・富子の姿が。吉良への憎悪をたぎらせる瑶泉院と、静かな晩年を過ごす富子に降ってわいた夫の危機…。妻心を切なく描く表題作他、小伝馬町牢屋敷を預かる囚獄の家に生まれた青年が出逢った女との「悲恋」など全4篇を収録。実在の人物をテーマにした傑作時代小説集。
色男・瓢六が、北町奉行所の同心・篠崎弥左衛門とともに、江戸の町の難事件を鮮やかに解決する捕物帖シリーズ第二弾。晴れて無罪放免となった瓢六だが、お袖と熱々の平和な日々も長くは続かない。わけありの母子を匿ったり、瓦版を作ったり、そして今度はお袖が牢に入れられる…!?痛快無比の時代小説。