著者 : 諸田玲子
享保19年夏、旗本・根来長時の妻せつは、屋敷を突然訪れた町奉行、大岡越前守を出迎える。大岡は夫に『兼山秘策』を読んだかと問う。そこには二十余年前に勘定奉行・荻原重秀が幽閉されて死んだとあった。死の直前、せつは生家の庭で彼を見かけたのだった。殺めたのは、佐渡奉行に昇りつめた父なのか。真相を追い、せつは佐渡へ。重厚な構成で描く堂々の歴史ミステリー!
八年前の天保九年の大火で、恋女房のお袖とお腹の子が、行方知れずにー。少しずつ、気力を取り戻していた瓢六のもとに、「梅の木を眺めている女がお袖にそっくりだった」という話が届く。瓢六の心は、お袖と、武家の女性・奈緒の間で揺れ動く。島流しから江戸にもどり、妻との再会を願う武士など、魅かれあえども結ばれない男女を描いた、「人を想う」ことの哀歓を情感豊かに描き出したシリーズ最高傑作!元悪党にして稀代の色男の「人生の決断」、人気シリーズ第六作。
中野で犬小屋支配の助役を勤める森橋家の娘・知世は、母の療養のため、祖父、弟ともども小石川の剣術稽古場・堀内家の離れに移り住む。彼女は、どんな犬でも手なずけてしまうことから「お犬姫」と呼ばれている。家族や道場の人びととの語らい、仇を追う浪人への恋心、盗賊一味との対決、そして忠臣蔵事件。知世の周囲で織りなされる、さまざまな人間模様、犬模様を、やわらかに、あたたかく描いた時代小説。
侠客として名を馳せた次郎長は幕軍・官軍入り乱れる駿河・清水で名士となり、波止場をつくる時も先頭にたった。養女となった「おけんちゃん」が少女時代に出会った白皙明眸の西洋医との関係が深まるにつれて、やがて…。港に生きる人たち、廓の女たちそれぞれの愛別離苦。作家自らのルーツを遡る、町の物語、恋の物語。
次郎長の死を境に世情は様変わり。戦争が始まり、けん自身にも驚天動地の出来事が襲いかかり、希望にあふれた日々は暗転。明治から大正へと激しく動く。忍苦を強いられる市井の人々、苦界の女たちや子供たちをけんは放っておけない。二十年前に姿を消した西洋医がなぜ清水に戻ったのか?次郎長の娘の恋の行方は。
平安の中頃、物売りのナツメ、物乞いのナマス爺さん、女房づとめをしていたシコン、貴族の子息コオニ、太宰府がえりの勇将・ニシタカの五人がひょんなことから、ある有力貴族の依頼で疑似家族として町屋で暮らし始め、最近、都に起きた、鬼に纏わる難事件を解決しようと、それぞれ密かに探索を開始するが。
夢枕獏が、山本一力が、諸田玲子が……「忠臣蔵」を描く! いままで戦国時代を舞台にすることが多かった「決戦!」シリーズだが、今回の舞台は江戸は元禄、テーマは「忠臣蔵」。当代きっての名手・七人が、日本人が愛し続ける物語に挑む。義挙を前にした人々の悲哀、本懐を遂げた男たちの晴れ晴れとした思い。そして、主君を守れなかった吉良方の無念……。今までにはない、”涙”の「決戦!」シリーズの誕生。 夢枕獏が、山本一力が、諸田玲子が……「忠臣蔵」を描く! いままで戦国時代を舞台にすることが多かった「決戦!」シリーズだが、今回の舞台は江戸は元禄、テーマは「忠臣蔵」。当代きっての名手・七人が、日本人が愛し続ける物語に挑む。 義挙を前にした人々の悲哀、本懐を遂げた男たちの晴れ晴れとした思い。そして、主君を守れなかった吉良方の無念……。今までにはない、”涙”の「決戦!」シリーズの誕生。 鬼の影 葉室麟 妻の一分 朝井まかて 首無し幽霊 夢枕獏 冥土の契り 長浦京 雪の橋 梶よう子 与五郎の妻 諸田玲子 笹の雪 山本一力
式部とわたしは、もしかしたら、前世からの縁で結ばれているのかもしれないー。童女御覧の日、怯えた自分を御簾の間から抱きとめてくれた女性、それが和泉式部だったー。式部の養父母である大江匡衡と赤染衛門の娘・江侍従は式部に魅せられ、「和泉式部物語」からあえて省かれてしまった真実を探ろうと奔走する。そして辿りついた、恐ろしくも哀しい結末とは…。
小町娘と評判の舞は『東海道中膝栗毛』の作者・十返舎一九の娘。酒びたりで奇行ばかりの父、押しかけ弟子の今井尚武、葛飾北斎の娘・お栄など、いつも奇人変人たちが巻き起こす騒動の後始末ばかり。恋を邪魔され縁談は壊され、二十歳になった舞は焦り気味。だが、居候の今井尚武ともいい感じになってきて…。ユーモアと人情たっぷりに描く時代連作集、第二弾!
文化人を弾圧し悪名高い「天保の改革」。瓢六は弥左衛門やお奈緒らと陰に陽に立ち向かうが、やがて圧政者たちも決して一枚岩ではないことに気付く。「妖怪」こと鳥居耀蔵の裏切り、それによる水野越前守の失脚と復活。一方瓢六は勝家の若き当主・麟太郎と親交を深める。時代はうねり、活劇シリーズいよいよ佳境へ。
天保の大火でお袖を失い自堕落な生活をおくる色男・瓢六。しかし老中・水野忠邦と“妖怪”鳥居耀蔵の陰謀に苦しむ人々を見ていられず、また謎の武家女性・お奈緒の魅力に導かれるように、相棒の堅物同心・篠崎弥左衛門と幕政の理不尽に立ち向かう。大切な人を喪った者のみが知る優しさが漂うシリーズ第四弾。
道三郎への恋を諦め、旗本・小山田家へ嫁いだ結寿。心優しい家族に恵まれ、平穏に過ごしていたが、居候の老女のもとへ親戚を名乗る男が転がり込んで……。恋と事件の人気連作シリーズ。(解説/八代有子)
“美濃のマムシ”斎藤道三の娘で、美濃衆の期待を一身に集めて織田信長に嫁いだ帰蝶。天下人へと近づくにつれて残虐さをあらわにしていく夫におびえながらも、織田家の奥を取り仕切り、戦乱の世をたくましく生きていくがー。女の目線から、信長の天下布武と本能寺の変を描き切った力作長編。
将軍の鷹狩りの下準備を担うお鳥見役の矢島家。あるじの伴之助と妻・珠世の周りには嬉しい知らせが続いていた。次女の初産、嫁の懐妊、幼い頃から親しくしてきた石塚家長女の結婚ー。幾多の苦難と辛い別れを乗り越え、やっと訪れた穏やかな日々。だが「来る者は拒まず」が信条の珠世のもとには、またも次々と難題が降りかかり…。新しい命が絆を強める、大好評シリーズ第七弾。
赤穂浅野家に仕えるきよは浅草小町と謳われる美女。当主内匠頭の寵臣礒貝十郎佐衛門と、夫婦の約束をしている。だが、内匠頭が吉良上野介を殿中で斬り付け、お家は断絶。礒貝は、家老大石らとあだ討ちを画策する。きよは恋と忠義のはざまで、討ち入りの日を迎える。本懐後も忠義を貫き、遺族の赦免と浅野家再興を目指し将軍家へ近づいていく…。歴史に名を残した実在の女性を描く全く新しい忠臣蔵誕生!
火盗改方与力の娘結寿と八丁堀同心の妻木道三郎は、狸穴界隈で起こる事件の謎を解くうち、思いあう仲になる。だが、旗本と町方では身分違いの上、妻木は子持ちの寡夫。ままならない恋に悩む結寿に縁談が持ち上がる。妻木に話すことが出来ず思いつめるころ、旗本の火事が付け火だったと噂を聞き…。不思議な事件を解決するため奔走するふたりの活躍と恋の行方は!?ほのぼのと心温まる連作時代小説。
万寿二年(一〇二五年)、人喰い鬼の出没する京の都。出世抗争に明け暮れ贅沢にも飽いた宮廷をしりめに、物売女、博学爺さん、貴族の元女房、不良少年、貧民窟の用心棒が結束した。時代小説の名手がおくる根無し草たちのサバイバル譚。縁もゆかりもない老若男女に白羽の矢!?千年前に繰り広げられた闘いと愛の物語。
小町娘と評判の舞は十返舎一九の娘。なぜか父や葛飾北斎の娘、お栄ら、奇人変人たちの大騒動の後始末ばかり。恋を邪魔され、縁談は壊され、いつも唱えるまじないは、「奇人気まぐれ、きりきり舞い!」。
武士、庶民の区別なく、季節はめぐり、夏の陽光が江戸にふりそそぐ。『御宿かわせみ』より、俳諧師の死の謎を追う「二十六夜待の殺人」(平岩弓枝)。『隅田川御用帳』より、因業な質屋の隠居を改心させた真相に迫る「ひぐらし」(藤原緋沙子)。夏の記憶と武士の生き様を描く「似非侍」(諸田玲子)。『人形佐七捕物帳』より、永代橋崩落に端を発した転落の物語「夢の浮橋」(横溝正史)。因果はめぐる「怪談累ケ淵」(柴田錬三郎)。江戸の夏、5編を厳選。