著者 : 谷恒生
“稲妻の竜”と恐れられる抜刀田宮流の影月竜四郎は、その光景に慄然とした。小柄で、女と見まごうばかりの色若衆が、陰流の達人を一刀のもとに斬り伏せたのだ。京・鞍馬山で乱八流を極めた栗本新之丞であった。やがて、初めて吉原に登楼し、花魁・夕霧の魔性の肌の虜になった新之丞は、金のため殺人鬼と化す。竜四郎危うし!官能と撃剣凄まじい時代活劇の第三弾。
“稲妻の竜”こと影月竜四郎は、よろずやの娘・由香里が袱紗を掏摸取られるところを救った。直後、掏摸は何者かに吹矢で射殺された。不審に思い、他人から預かったという袱紗を調べると、夜叉の絵が描かれた歌留多と白い散薬…白面が!錦繍の袱紗に隠された巨大な密謀とは!一方、竜四郎に一目惚れした由香里は、愛欲の海に溺れていく…。決定版、官能時代活劇。
新宿区内でOLの他殺死体が発見された。女は勤務する新宿中央信用金庫の理事長萩原の愛人だった。事件を知って執拗に萩原をつけ回す迷彩服姿の不気味な男がいた。歌舞伎町分室の警視ムラマサは、男がかつてあと一歩のところで海外逃亡を許した殺人鬼梶応毅ではないかと直感した。傭兵経験もある梶応なら歌舞伎町にまた血の雨が降る-ムラマサの想像はすぐに現実のものとなった…。圧倒的迫力のハード・サスペンス。
十二月三日に新宿公園、一月十三日に代々木公園、そして今日、一月二十三日に大久保公園で女性の絞殺死体が発見された。手口はすべて同じで抵抗した跡はなく、媾合しながらロープで首を締められ、また、現場の情況から、別の場所で殺された後そこに捨てられて、わざわざ局部をむき出しにされているのだ。被害者は、OLの山内幸代、女子大生の武田弥生、そして今日は、予備校で英語を教える佐々原明子だった。ムラマサこと警視庁歌舞伎町分室の村木正警視の必死の捜査が始った…!圧倒的迫力で描く迫真の書下し長篇。
田沼意次ワイロ政治の最盛期、あるときは吉原の美妓、奇術師の蛍火乱紅、またあるときは謎の美剣士紅頭巾と、艶やかに変身をとげ、江戸の悪を懲らしめる美貌の雪姫の正体とは?-はたして雪姫は、吉原通いを重ねる極悪坊主のサディスティックな欲望から、旗本のお嬢様を救い出すことができるのか!?そしてまた、淫らな役者遊びにふける女盛りの大奥の美女に、雪姫の剣が向けられた。
西新宿にある東和信用金庫が三人組の男に襲われた。行員三人が射殺され、現金一億八千万円が強奪される。事件を追う新宿西署の暮林刑事は、三人組の一人が中国人・張狼元であることをつきとめ、張が情婦の石原ひろみと暮らすアパートを張り込んだ。が、ひろみが張を殺してしまったのだ!ひろみの境遇に同情した暮林は、彼女のために部屋を借り、愛欲に溺れる…。一方、三人組のもう一人、李冲虎を割り出した歌舞伎町分室だったが、その背後に、香港黒社会の巨魁・蛇駄逵の影がちらつき始めた…。
九百年昔、宋王朝の末期、風狂皇帝・徽宗の治世-。金権腐敗の悪政に背いて梁山泊に翔け参じた義賊、豪傑、悪漢、曲者、美女、謀反人たちが繰り広げる痛快壮絶な叛乱のドラマ。『三国志』とならぶ、中国歴史文学の傑作が、鬼才の筆で現代に蘇る。
天文十七年(一五四八)五月、十五歳の若き信長は自由都市・堺に足を踏み入れた。はじめて知る異国文化の衝撃、想像を絶する世界の広さ…革命児誕生の記念すべき日であった。堺で千宗易(利休)やザビエルの知遇を得た信長は、新時代を拓く歴史的使命を自覚し、群雄割拠する戦国乱世に立向かっていく。
天下を狙う今川義元を討ち取り歴史の桧舞台に躍り出た信長は、周囲の宿敵を次々と制し、ついには旧時代の象徴ともいうべき比叡山延暦寺を焼打ちし、足利幕府を打倒する。“魔王”と怖れられながら、新時代建設に邁進する革命児。しかしその足下にいつしか黒い影が…本能寺でこの偉大な才能を潰した黒幕は何者か?新解釈で挑む。
排水量七万二千トンの巨大要塞として生れ変った長門改は、昭和18年8月、東部ニューギニアの拠点ポートモレスビーを目指して、米内光政提督指揮の下、サンゴ海を進撃していた。折から、ポートモレスビー上陸作戦の参謀長として石原莞爾が現役復帰をはたした。石原はかつて、その才を妬んだ東条英機と対立、予備役に編入されていたのだ。しかも、山下奉之大将が上陸作戦の軍司令官を務め、15万から20万の大兵力を率いることになったのだ!迎え撃つマッカーサーの戦略とは?決戦の行方は?怒涛の完結篇。
時は昭和25年、朝鮮動乱でわきたつみなと神戸。戦後の混乱期を抜けだしようやく飛躍成長をとげようとする時代のうねりの中で、主人公・元海軍中尉不動征四郎の行く手にたちはだかった謀略の渦。霧雨けむるみなと神戸に男が帰って来た。
敗色迫る昭和一九年五月、突如姿を現わした巨大航空戦艦華厳・雷峰。マリアナ諸島制圧をめざすスプルアンス大将の米高速航空艦隊を、みごとに撤退させるが、依然として戦況は苦しい。はたして、フィリピン奪回に燃えるマッカーサーの大船団が迫りくる。ニューギニア沖ビアク島海上を邁進するマッカーサー艦隊へ、遠州竜一郎長官は、決然と黎明の奇襲を仕かけた。至近距離で激突する烈風とF6F。天山隊は800キロ魚雷を空母群にはなち、彗星隊は250キロ爆弾をかかえ、米戦艦へ突入していく。わき立つ海面に軽巡ナッシュビル艦上でなすすべもなく震えるマッカーサー。退却をはじめた米艦隊に、緒戦は完勝の超機動航空艦隊だが…。フィリピン沖はさらに戦雲がたれこめる-。
太平洋戦線で苦境に立たされた日本は、日米戦の命運を賭けて、密かに建造していた巨大な戦艦空母摩利支天を投入した。起死回生の秘密兵器は、台湾沖でハルゼー艦隊に打撃を与えると、比島奪還を目論むマッカーサーの大上陸軍を撃破した。敗色濃厚であった日本は、恐るべき戦艦空母の破壊力によって活路を見いだせるのか。次なる目標はミンダナオ島、摩利支天はハルゼー艦隊追撃に向かった。
警視庁歌舞伎町分室の警視・村木正は、妖刀“村正”と恐れられる強者。その村木の許にOL全裸殺人の知らせが入った。だが、被害者の藤咲霧子は、過去に傷害事件を起こし、村木が更生させた女だった。新しい就職先で、順調に勤めていたはずの霧子に何があったのか。彼女を殺した憎き犯人を追い、村正が闇の世界に戦いを挑む。長篇バイオレンス・アクション。
原平合戦絵巻のハイライトともいうべき屋島の戦いで、歴史の表舞台に突如登場し、扇の的を射落とした若武者とは何者か。わずか十三歳で大熊を射とめ、その名を下野一帯に轟かせたと伝承は告げる。那須在住の鬼才谷恒生が、土地に残る数少ない言い伝えや文献を渉猟して謎の麒麟児の実像に迫る歴史大作。上巻では、その生い立たから、義経に邂逅するまでを描く。
与一と那須党がいなければ、この義経の軍法は成り立たぬー。義経の戦略の中核となり、先鋒となって、与一は駆ける。木曽義仲との宇治川の合戦、平家との一ノ谷鵯越えの決戦、そして那須与一の名を歴史に残す屋島の戦い、あの扇の的…。だがその後の与一はどうなったか。大転換期を華やかに駆け抜け、再び歴史の闇に消えた天才児の謎の生涯を描く鬼才の長篇傑作。
ドイツ軍の英本土上陸作戦を完膚なきまでに打ち砕いた超ド級戦艦『凄王』。大日本帝国の威信をかけた彼らの次なる戦いは、V2号ミサイルの脅威にさらされる英国を防衛し、連合軍のノルマンディ上陸作戦を成功に導くことだ。だが『凄王』の活躍に激怒したヒトラーが、史上最強の敵-ハーケンクロイツ艦隊を送り込んできた。『凄王』に匹敵する超ド級戦艦で編成された大艦隊が襲いかかる。巨大戦艦同士の激突、史上最大の上陸作戦を描く、迫真の海洋戦記シミュレーション。