著者 : 谷恒生
徳川幕府の天下平定は成った。が、豊臣家恩顧の武士の多くは、豊家再興を願って全国に散っている。その時期が到来するまで。薄田隼人こと岩見重太郎は、その剣名をもって諸国を巡り、豊家恩顧の武将に、大阪城にひとたび千成瓢箪の幟が立つ時は、秀頼公の許に駆せ参ずる様、盟約を結んでいた。いよいよ徳川、豊臣が覇を争う慶長水滸伝も佳境に。
ドイツ新大海艦隊は台湾海峡から東シナ海へ入ろうとしていた。すでに沖縄は目前にせまっている。超戦艦ニーベルングは異様であった。『ニーベルングの指環』を高らかにひびかせながら驀進してくるのだ。ヒトラーの大逆襲が始まった。大和が米・英連合軍の先鋒としてハンブルクに乗りこみ、ドイツ本土を砲撃し、ナチス・ドイツを危機におとしいれたのだから、日本への憎悪はピークに達している。大和はヨーロッパの海で釘付けになっている。大和ぬきの日本連合艦隊で、祖国は守れるのか?風雲急をつげる日本近海。
慶長16年5月10日…、一人の嫖客が、江戸大橋の柳町を典雅な風情で歩く。豊臣・徳川の天下わけ目の戦いは東軍の勝ち。西軍の将は千々に身を処していた。岩見重太郎も、大坂城の茶々を偲びつつ諸国を歩き、やがて嫖客の歩みに合わせるが、その先にこそ。大御所・家康を睥睨する錬金術師と重太郎の不動剣が真田の六連銭とおり重なって時代に舞う。
太平洋戦争さなか、起死回生をはかるべく投入された超ド級戦艦『凄王』はその威力をいかんなく発揮、米太平洋艦隊に壊滅的敗北を与え、マッカーサーを恐怖に陥れた。そして『凄王』に与えられた次なる特命は、敵の物資補給路を分断すべくパナマ運河を破壊することだった。しかし、さすがの無敵を誇る『凄王』も鉄壁の防御網には苦戦を予想された…。大日本帝国海軍の威信を賭け建造された巨大戦艦の戦いを迫力の筆致で描く書下ろし長篇海洋戦記シミュレーション。
「この赤子は八幡神の生まれ変わりじゃ。武門二流、源平両家の血が流れている。すなわち、武門の頭領ということじゃて」はるばる鎌倉を訪ねてきた京都の大学者小野大雪は、八幡太郎の生涯を見事に予見していた。前九年の役の若きヒーローとして、歴史の表舞台におどり出た八幡太郎に対する、王朝貴族体制のさまざまな迫害と圧迫。太郎を支える新興武士勢力と陸奥の傀儡たち。そして太郎をめぐる美女の群れ…。新しい時代の魁として、歴史の過渡期を悠然と闊歩していった神話的巨人の雄渾で痛快無比な生涯が、鬼才谷恒生により初めて蘇る。
「戦艦大和、わが最大の敵ぞ。大和がわが第三帝国の前にたちはだかったとき、第三帝国は滅亡の危機を迎えよう」ヒトラーはかっと眼をみひらき、ゲーリング元帥を睨んだ。英霊・山本五十六が指揮する大和は、日本軍としてではなく“超大本営”としてヨーロッパ戦線に参戦すべく北大西洋上を一路、ドーバー海峡にむかった。これに対し、ドイツは飛行大隊をさしむけ、大和とユンカースは壮絶な死闘を繰り広げた。その先には超戦艦「ウォータン」が待ち受けている。決戦近し。世界の命運は「大和」にかかっていた。
慶長5年、豊臣・徳川「天下わけ目の関ケ原」は東軍・徳川に凱歌があがった。豊臣の将・石田三成は加茂の河原に首をさらされ、小西行長はしかし、京の遊廓に美女を求めたー。何故か?敗けても夢は咲かせたいのだ。この戦いは、数多の豪傑・怪士を渦にまきこんだ。その「豪傑繚乱」の道なき道を岩見重太郎は辿った…。茶々を偲びつつ。
慶長5年、美濃大垣城、三層総塗りの壮麗な天守閣の奥座敷に、3人の武将が絵図面をひろげ談合していた。「決戦場は関ケ原になろうな」とけわしい面付きで低くつぶやいたのは石田三成であった。その関ケ原に日本六十余州の大名が持てる軍勢凡てを結集した天下わけ目の大決戦、豊臣・徳川の戦いが始まったのだ。絢爛豪華な水滸伝である。
織田信長と武田勢の決戦は刻一刻と近づきつつあった。若き小西行長は信長の密命を帯び、自由貿易都市堺の命運を担って黒潮猛ける大海原を一路マラッカへ向けて押し渡ってゆく。苛酷な宿業の綾に翻弄される戦国の貴婦人や、青雲の野望を一剣に託した武芸者を乗せて。歴史の転換期を描く壮大な戦国ロマン。
網走刑務所から悪魔が解き放たれた。6年前、兄と共に7人の女性を惨殺し、日本中を震撼させたかつての少年・Kが出所した。兄を射殺した警視庁歌舞伎町分室の辣腕警視、村木正-通称“村正”への復讐に燃えるK=朽木田公明は、旭川でソープランドの社長を殺害。直ちに東京に向かい、魔性の女・相沢知子と出会った。淫蕩で残忍な2人は、凄絶な報復を開始する。執拗かつ容赦のない攻撃に、歌舞伎町分室の刑事までも犠牲者に…。厳重な警戒態勢の中、狂気の魔手は遂に村木を捕えた。警視“村正”最大の危機。
木星丸への突然の乗船命令を受けた陣内一等航海士は、急遽パナマへと赴くが、到着直後、東都物産駐在員の野方から積み荷の不正移動をもちかけられた。一方CIAとおぼしき人物が出現、さらに中南米に勢力を張る謎のドイツ人に拉致され、続いて野方が銃殺された。木星丸に何が起きているのか!?中南米を舞台に、軍事政権と革命ゲリラ、商社、各国諜報機関の凄絶な闘いを描く、長篇海洋冒険小説。