著者 : 赤瀬川隼
思春期の頃、年齢の近い叔母に密かに寄せた熱い恋心。亡くして初めて知った父の意外な一面。トレードに出されたベテラン・プロ野球選手とリストラ進行中の会社に勤める中堅社員という、岐路に立たされた男二人の友情。輝かしい成績を残しながらも突如プロ球界を去った名投手の秘密ー野球をモチーフに、野球少年なら誰しもが通過するホロ苦い挫折、郷愁などをさわやかに描いた短編集(野球描写がない作品を一編収録)。じんわりと野球ファンの胸にしみる第113回直木賞受賞作。
戦国の世に豊後領主の子として生まれながら、父や既成の権威に反発していた青年・大友義鎮(宗麟)の心をとらえたのは宣教師ザビエルだった…。九州に覇を唱えた乱世の雄である一方、芸術家肌で、常に進取の精神を失わなかったキリシタン大名・宗麟の多面的な魅力と波瀾の生涯に迫る。
明治政府に、村田新八という男がいた。外国視察から帰ると、政府の重鎮の西郷隆盛と大久保利通が意見の対立から袂を分けていた。西郷を師と仰ぐ新八だが、大久保も知らぬ仲ではない。二人の間で驚き、戸惑い、心は揺れる。国に戻った西郷のもとを新八は尋ねるが…。動乱の時代を生きた傑物を描く長編歴史小説。
ダイヤモンドの出来事に写しとられた、様々な喜びと悲しみー。古ぼけたファーストミットに死んだ兄の青春を辿る少年、ホームプレートに戦災で失くした家と家族への思いを重ねる老審判など、生涯の四季それぞれを迎えた人々の姿を描く表題作など三編を収録。一投一打に宿った記憶が、いつしかそれぞれの人生への優しいオマージュを語り始める。直木賞作家による珠玉の作品集。
新直木賞作家の最新小説集。街で偶然出会った男との逢びきに胸をときめかせる人妻…「うつせみの夢」。一年ぶりに思い出の土地にやってきたセールスマンの哀しみ…「入り日」。映画を観ているうちにスクリーンに突入していった男の不思議な体験…「ワイルド・シング」。仕事場のビルの窓から作家が目撃した出来事とは…「窓」など、名作映画を素材にした八編の作品集。
ソウル・オリンピック最終日、メインスタジアムにわきあがる歓声とどよめき、なんと胸に日の丸を付けた黒人が男子マラソンで優勝!?-オリンピックとナショナリズムの問題を扱った表題作の他、日本全土が5日間、全ての経済活動を停止する「無名の日」、住宅展示場のモデルハウスに住む家族の顛末を描く「ホモ・アピアランス」など、大胆な設定で常識のイカガワシさを突く短編5編。