著者 : 野中柊
生糸の貿易会社を営む父のもと、慧子と蒼は横浜で生まれた。洋館の建ち並ぶ街、頬を撫でる潮風、ミッションスクール、ジャズの響き、そしてダンス!ヨコハマ文化を存分に味わいつつ、恋を知るふたり。しかし、戦争の暗雲が美しい港町を覆い尽くすー。関東大震災後の横浜に生まれ、昭和と共に成長した異母姉妹、慧子と蒼。戦争と平和、恋と友情、祈りを描く大長篇。
恋する気持ちは、咲いては散り、そして再び咲き誇る桜の花のよう。父親より年上の男性と結婚した17歳の少女、亡くなった妹との約束を果たすため幾度となく行きずりの関係に身を任せる女性、兄の妻に密かに想いを寄せる青年…さまざまな恋模様の中に、生きることの至福と切なさを描く6つの連作短編。
美世と小学一年生の息子・太朗はふたり暮らし。周囲の人々に支えられ、懸命に明るく生きる日々。ところが、思いがけない出来事がー。傷心の美世を迎えてくれたのは、同じマンションに住む女の子とその父親。いちぶを欠いた二つの家族の出会いは、新たな物語の予感へとつながる。喪失の悲しみと傷みを、魂が受容し昇華するまでを、透明感に満ちた筆致で描き、温かな幸福感と希望を呼ぶ。
フランクザッパ・ストリート再び!動物と人間たちが暮らすファンキー&ポップな街の物語。待望の続編。ニューキャラ、占い師のムイちゃんと、二人の男の子の恋の行方は?ペンギンのグレース・ケリーが生んだ卵の父親は誰?スーパーモデルのパンダのワイワイは、実はサンタクロースだった?…ここでは、誰もがひたすらに愛を信じて生きている。そうすれば、ほらね。行き着く先は、きっと、とびっきりの幸福。
フランクザッパ・ストリートで暮らす人間と動物が繰り広げる、ほのぼの楽しく、ちょっぴりせつない物語。恋愛あり、友情あり、食欲あり!キャラクターたちもキュートで魅力的。映画監督志望のハル、ウェイトレスのミミ、アイスクリーム屋のペンギン・グレース、女の子にモテモテのパンダ・ワイワイ、謎のパカラナ兄弟…そのほかにも、いっぱい。誰もが伸びやかに生きている。そして、もちろんHAPPY ENDING!ファンキー&ポップな街へようこそ。
太朗の様子がおかしい。夏だから?奴も恋した?それとも…?予定外の妊娠で子宝を授かってしまった私。母ひとり子ひとりの毎日はにぎやかで、香ばしい。でも、ひと夏の終わりはどこか危うい…。こどもの天国と大人の現実を描く表題作と短篇「ボーイ ミーツ ガール」。
日曜の昼下がり、鎌倉駅で鹿の子を待つのは三年前に別れた夫。ふたりは江ノ電に揺られ、愛猫ユキオを埋葬にゆく。初夏の空と海、汐風が、ほろ苦くも輝かしい、あの日々へと誘う。傷みの果てにふとこみあげる生への愛しさ、そして切実な祈り…。疲れた心と躰がほぐれる佳品。
まり子は美脚を誇るサーカスの花形スター。彼女は、三人の男性に等分に恋をした。ふわふわと甘い綿菓子のような恋を。ところが、恋の魔法は突然解かれてしまう。まり子が妊娠したために。恋は身を軽くするものなのに、どうして生命は身を重くするのだろう。まり子は憂鬱になった。いつまでも恋をしていたい。だけど、どうすればいいの?恋の向こうにある日常の重さ…甘く残酷な恋愛小説。
ひとりぼっちでは幸せになれないけれど、皆で一緒に幸せになるのもとても難しい。親の決めた結婚ゆえに自分の人生を歩むことができず、夢見がちに恋に恋することでしか自分を支えられない母。猫を溺愛して寂しさと痛みを紛らそうとする父。そんな両親に反発し、家を出てしまった兄。そして今度は姉までも。家族の再生を願う末っ子シューコの思いを綴ったノスタルジックでせつない長篇小説。
おムコを捜しに来たの。だって、こっちには日本のエリートが沢山いるでしょーそういって幼稚園以来のくされ縁の仲、憎たらしくもほれぼれするほど美しいヒカルが、留学先のアメリカにまでおしかけてきた。男の所有物になるのはご免、女も男と対等にならなきゃ、と常々思っていたマユキだけれど…。本当はどうすれば幸せになれるのか、鋭く問いかけるビタースィートストーリー。
恋があなたのパパなのに、恋は身を軽くするものなのに…。まり子は三人の男性に等分に恋をして、妊娠して、結婚した。ふわふわと膨らむ女の子の夢、膨らんだお腹、「生命」と「日常」の重さ。恋する「人魚姫」のせつない想いを結晶させた、野中柊ワールド。
アメリカまで来ても、やっぱりヨメなわけ。彼を愛してる、それだけで万事OKのはずだったのに、このしがらみときたら…。日本の元気娘マドコが、「自由」の国アメリカで出合った思いがけない出来事を痛快に描いた表題作ほか、第10回「海燕」新人文学賞受賞作「ヨモギ・アイス」収録。野中柊デビュー作品集。