著者 : 雨沢泰
突然目が見えなくなる「白の闇」事件から4年後、首都の総選挙は土砂降りに見舞われる。午後4時になると人びとは投票所に押し寄せるが、7割以上が白票、再投票では白票が8割を超える。政府は非常事態宣言を発し、首都を封鎖する。政府組織が市外に脱出する一方、首都では市民たちの自治が始まるが、彼らを組織する首謀者は見えず地下鉄中央駅で大規模なテロが発生する。市民たちの平和的なデモ、地下鉄前広場での共同葬儀、権力維持と自己保身に走る閣僚たち…。やがて1通の手紙が大統領に届き、「白の闇」事件でみんなを勇気づけた優しい女性の捜査が始まる。傑作『白の闇』と対をなすノーベル賞作家による警鐘の書。
新年の始まり以降、この国ではだれも死ななくなった。高齢で衰弱する皇太后陛下、成功確実な自殺者、交通事故で十二分に息絶えたはずの人体、致命的な墜落事故…。死の活動停止を寿ぐ歓喜の高波の一方で、商売の材料を奪われた葬儀業界、死の不在によってベッドが不足する病院経営者、生と死の循環が滞る老人ホームなど、危機に陥る人々。国境の村では、生死の需要と供給を補うためにマーフィアが暗躍し、死を求める人々を国外に運びだす。悲喜こもごもの事態の中、テレビ局の会長の手元に紫色の封書が届く…。ノーベル賞作家による驚愕の思考小説。
今日も妻ギャビーの眠る病室を訪れ、手を握って語り掛ける夫トラヴィス。十一年前に運命の出逢いをして結ばれた二人を待ち受けていた、あまりにも残酷な運命。選択を迫られた夫は、愛する人のために、どこまでできるのだろうかー。『きみに読む物語』の著者であり、累計一億冊といま世界で最も読まれている恋愛小説家ニコラス・スパークスが、「自身の最高傑作」と謳うベストセラーが文庫化。二〇一六年夏に公開の映画『きみがくれた物語』の原作小説です。「スパークスのファン」を自認する作家・市川拓司さんによる解説「もうひとつの『きみに読む物語』」も必読!
トロント大学医学部を目指すミンとフィッツ。二人は、さまざまな紆余曲折を経て、医学生となるのだが…。過酷な医療現場の最前線で、若き医師たちはいくつもの困難に立ち向かい、挫折を繰り返し、そして成長していく。張りつめた空気のなかで行われる心肺蘇生、帝王切開手術、そして猛威をふるうSARSの恐怖。医師として人間として味わう喜びと苦悩を迫真の筆致で描き尽くした連作短篇集。
コンピュータ・ネットワーク『EROS』の会員が次々と殺される。愛の行為、テレフォンセックス、乳房整形、近親相姦、HIV…。サイトでは五千人の男女が匿名でセックスに関するあらゆる情報を交換していた。ネット上を自在に動き回る天才殺人鬼の出現に、全米は震えあがった。’90年代最高のサイコ・スリラー巨編。
『EROS』サイトで獲物を探す恐怖のモンスターは、鉄壁のはずのFBIのコンピュータにも侵入し「お前は私の敵ではない」と大胆不敵な宣言!システム・オペレーターの“僕”は女性になりすまし殺人鬼に挑む。ネット上で全人格を賭けての両者の会話が行き交う。「羊たちの沈黙」にも匹敵する興奮のスリラー。
1839年、アフリカ人シンケはキューバに向かう奴隷船アミスタッド号で52人の仲間と反乱を起こし、成功した。しかし船は迷走し、結局彼らは米海軍の手に落ちて乗組員殺害の罪で裁かれることになった。故郷に帰ることだけを願った彼らに罪はあるのか。そもそも奴隷売買は違法であるはずだ。自由と平等の国アメリカ、その威信をかけた史上最も重要な裁判を扱った感動大作。
ぼくたちはもうすぐ12歳の兄妹。この夏立派な木の砦を作った。父さんもベトナムから戻ってきた。戦争後遺症に悩まされている父さんの働き口は決まらないけど、ぼくたちは父さんが一緒にいるだけで満足してる。ぼくたちの砦がもとで、近所の乱暴者七兄弟との間に、本格的な戦争が始まった。父さんは戦うことの虚しさをしきりに説くけど、ぼくたちはどうしてもあの砦を守りたいんだ。
「わたし」アーニーは成功した宝石商だが、外見には全く自身がない。ある日、唯一の親友レッゾが演劇学校をやめ、女友達のビリーを連れて、彼の家へ転がり込んできた。異様な集中力で戯曲を書きまくるレッゾ、甲斐甲斐しくその世話を焼くビリー、そして美男美女の二人をまぶしく眺めるアーニーの、奇妙な共同生活が始まったー。真実の愛の形を探ろうとする著者の、待望久しい第二作。
1969年、ニューヨーク市クィーンズ。そろそろ初老にさしかかる年令のパールは、こともあろうに夫の葬式の日に、長年に及ぶ片想いを告白される。相手は夫の友人ジョー。悪い気はしないが、彼を受け入れるにはあまりにも問題がありすぎる。とりわけ離婚経験をもつ2人の娘、年老いた母は心配の種だ。そうした状況の中で、パールの心は揺れ動く…。そして、彼女は生きている限り、新たなステップを踏み出すことの大切さを学んでゆく。
私立探偵カーヴァーは親友の警部補デソトの依頼で、サンヘヴン老人ホームへ赴く。そこに入居中のこの世を去ったデソトの叔父が、サンヘヴンには不審な点があると生前洩らしていたからだ。初め半信半疑だったカーヴァーだが、なぜか彼の調査は凶悪な犯罪者の妨害を受ける。果たしてサンヘヴンに潜む秘密とは?アメリカ私立探偵作家クラブ最優秀長篇賞に輝く入魂のハードボイルド。
27歳のエリート広告マンと41歳のハンバーガー店売り子ー容姿・年齢・学歴・地位、すべて不釣合な2人が恋に落ちてしまったら…。男は2人の仲を公けにできない自分に嫌悪し、女は将来を絶望する。男はこれまでの建前生活に嫌気がさし、本音で生きる女にますます魅かれる。人が人を愛した時、どこまで相手に正直に誠実になれるかー永遠の主題を新しい感覚で捉えた話題作。
「ハハ シンゾウホッサ」の電報で急遽帰国した息子のわたしを待っていたのは、呆然としている父親だった。父は身の回りのことすべてを母に頼って暮してきた。車の運転も、着替えも、電話さえ一人で掛けたことがない。わたしは父を自立させる計画を立てたが老い、死の恐怖、世代断絶への焦燥など、誰も避けて通れない重い主題と真正面から取り組む。
父は簡単な料理を作れるまでになった。退院した母を看ながらの毎日も、順調のように思われた。しかし、身体の不調を訴えて検査入院した父が、病気への恐怖から、突然痴呆症になる。病院の処置に憤ったわたしは強引に父を帰宅させるが、病人との生活は想像以上に厳しかった。-現代社会が克服しなければならない大きな問題を捉え、家族の姿と生きることの意味を問う、愛と感動のドラマ。
自分の使命は神に代わってマフィアを殲滅することだー新聞記者のヴィンスはそう盲信した。いつからか狂気に蝕まれ、妻の姿を鳥と錯視することもある彼にとって、現実と妄想の判別はもはや不可能だった。そして犯罪組織の人間を次々と虐殺しては、犯行声明を新聞社に送りつけた。やがて市民のあいだから犯人を英雄視する声まであがる中、警部補のデラは執拗な捜査をつづけるが…。冬のシカゴに展開される戦慄の犯罪サスペンス!
ピーター・フィンレーはケーブル・テレビ局のリポーター。ジョークとウィットでは誰にも負けないニューヨーカーだ。そんな彼のところにひとりの男がやってきた。8日前から行方不明の美人テレビ・スター、ベギー・リンの前夫だという。そして彼女はすでに死んでいるはずだと爆弾発言。フィンレーはさっそく調査にのりだすが、翌日から巻き起こるのはアイスピックを使った残虐な連続殺人だった!MWA新人賞候補の都会派ミステリ。