著者 : 青山遼子
ストウ侯爵はバーナム卿の夫人と、秘密の情事を重ねていた。ところが、妻の浮気に気づいたバーナム卿は、情事を逆手に、妻に離婚を迫り、真相を暴露すると脅迫し始めた。スキャンダルの渦中に巻きこまれるのを恐れた侯爵は、バーナム卿の疑念を晴らして、窮地から逃れるため、侯爵自身、実際に誰かと婚約することを思いたった。
1816年、ナポレオン戦争の余波を受け、イギリスでは相次いで銀行が閉鎖。ランボーン卿一家は、全財産を失いまさに崖っぷちに立たされていた。そこへ持ち込まれたのが、卿の娘カミラをメルデンステイン王国の皇太子妃に、という願ってもない縁談話。カミラは父母を救いたい一心で、不安を胸に、見も知らぬ皇太子に嫁ぐ決心をする。しかし、王国までの護衛官として遣わされた男を見たカミラは、ひそかに驚きの声を漏らしていた…。
燃えるような赤毛にグリーンの瞳の美しいイヴァンジェリン。彼女はほとんど世間から隔絶された状態で養母に育てられた。やがて養母が死ぬと、予想とは裏腹に甥の外交官クリストファがすべての財産を相続する。イヴァンジェリンに魅せられた彼は結婚を申し込んだ。だが、彼女はそのプロポーズを退け、わずか1000ポンドとダイヤの指輪ひとつだけを持って「女冒険家」としてロンドンに向かった-。いつか愛する人に出会うために。
イサ・マクナヴァーはロンドンで歌手として活躍していたが静養のため、二年ぶりにスコットランドへ帰郷した。ある日、幼い頃よく行った洞窟に入りこんだイサはそこで、三人組の男たちの密談を耳にする。どうやら、秘宝探しの相談らしい。さらに驚いたことに、かれらは、マクナヴァー一族の族長であるストラスナヴァー公爵の暗殺を企だてていた。
第4代オッターバーン公爵は、バッキンガムシャーにある城と領地を継承するため、東洋より帰国した。しかし、父の浪費によってオッターバーン家は破綻し、巨額の負債を負うことになった。途方に暮れた公爵に従姉のレディ・エディスが打開策を提案する。ヨーロッパの貴族の称号を手に入れようと野心を抱くアメリカ富豪の令嬢との結婚話だった。
フォード家は、エリザベス女王の治世に建てられた、広大な屋敷で、代々、暮らしていた。しかし、ジェレミーとマリオタの父親である。フォードカム卿は、称号と領地を継承した時、共に巨額の負債も抱えこみ、貧しさにあえいでいた。ある日、ジェレミーは、貧困に焦燥感を募らせ、妹のマリオタに、窮状の打開策を持ちかけた。それは、なんと、強盗をはたらくということだった。マリオタは、呆れ果て、とり合おうとしなかった。が、ジェレミーは一向にあきらめず、ついに、マリオタは、計画に加担することになった-。ワーセスター街道で、2人が息をひそめていると、向こうから、パッケンハム伯爵の馬車が来た。
19世紀。イングランド南東部では「魔女伝説」が広まっていた。ある日、アルドリッジ侯爵は、エセツクス州にある城に向かった。途中、スティープル村を通りかかると、村人たちが瀕死の女を囲み、虐待を加えている。女は魔女なので水責めにするところだという。見れば、端正な顔だちの若く、美しい娘だった。侯爵は、村人たちを非難し、そのまま彼女を城に、連れていった。侯爵の手厚い看護に彼女は次第に回復していくが、アイディラという名前以外、いっさいの記憶を失っていた。焦燥感にとらわれ、沈みがちな彼女を見かねた侯爵は、アイディラの謎を解こうと乗り出すのだが…。
伯爵の父を持つライナは、結婚によって爵位を得ようとするヘクター卿の執拗な求愛から逃れ、ひとりロンドンに向かった。職を求めるライナは、キティ・バーチントンの侍女としてパリの舞踏会へ行く仕事を得た。しかし、その仕事の裏には意外な事実が隠されていた。
ブルーの瞳に、黒いまつ毛。8年ぶりに会うブラッドは、以前にも増して輝いている。しかい、キャサリンの胸は重かった。父から会社を受け継いだキャサリンは、立派に社長業をこなしていたが、父は決定的な遺言を残していた。それは、彼女が1年以内に結婚しなければ、社長の地位を追われるというものだ。「私と結婚して」やっとの想いでささやいたキャサリンに待っていた答えは-。
ケンウィン伯爵の娘サマラはとても父親思いで、借金をかかえた苦しい生活にも明るさを失わない。ある日、屋敷の前に豪華な馬車が横づけにされた。訪問者は見知らぬ年配のレディだったが、弟の結婚相手としてサマラを迎えたいと切り出した。しかも、結婚式は半月ほど後に決まっているという。会ったことも話したこともない人と結婚だなんて!サマラは当惑するが、相手がバックハースト公爵ときいたとたんすらすらと返事していた。「喜んで申し出をお受けします」。