著者 : 高木晶子
美しいドレスを着て、完璧な大富豪の夫に寄り添うジアンナは幸せに見えたが、真実は違った。この結婚は、巨大企業を盤石にするための見せかけ。十代の頃から夫のフランコに恋している彼女は、それでもいいと心に言い聞かせてきた。昼は冷たくとも、情熱的に愛される夜だけをよすがに。そんなある日、夫の元恋人が現れて…(『まやかしの社交界』)。父が決めた結婚を余儀なくされた17歳のアリダ。相手はキプロス一の資産家の御曹司ダリウスだというが顔さえ知らない。必死の抵抗も空しく、1週間後に式が挙げられ、初夜を迎えた。だが、夫に所有物のように扱われて傷ついたアリダは、翌日、隙を見て逃げ出した。その身に、子を宿したかもしれないという不安を抱えて…(『キプロスを逃れて』)。
両親亡き後、姉たちとわびしい家でつましく暮らすジュリア。ある日、姉の婚約者の上司であるオランダ貴族、ヘラルト・ヴァン・ダー・マース教授の訪問を受けた。ちょうど、さるパーティに出席するため、必要な迫られてカーテン生地でドレスを作ろうとしているところだった。それを教授に笑われ、ジュリアは顔を赤らめた。なんて意地悪な人…。けれどその後も、なぜか彼のことを考えてしまうのだった。パーティ当日、手製のドレスに母の形見のショールを羽織った彼女は、会場にたどり着いたとたん、思いがけない人物の姿に驚くーああ、ヴァン・ダー・マース教授が、どうしてここに!
受付係のスージーは会社の新オーナーでギリシア富豪のレオスの到着に怯えていた。以前、彼の下で働いたとき、二人は恋仲になったーつかのまで終わった恋だった。9カ月後、スージーは彼の子を密かに産んだ。妊娠を利用する女を忌み嫌うレオスには言えなかったから。だが今、リムジンを降りた彼の目がスージーをとらえ…(『魅せられた富豪』)。仕事でギリシアの島を訪れたエンジェルは、島の所有者に出迎えられ、凍りついた。アレックス!6年前、初めて恋をし純潔を捧げた翌朝、手酷く私を捨てた億万長者。目が合った瞬間、エンジェルにはわかった。アレックスは自分を覚えていると。でも、彼は知らないーあの夜宿した彼の子を、私が産み育てていることは…(『億万長者の残酷な嘘』)。親友を亡くした痛みに耐えかね、ホテルで睡眠薬をのみ眠りについたダイアナ。気づくと見知らぬセクシーな男性に見つめられていたが、悲しみをひととき忘れたくて情熱に身をゆだねてしまった。やがて、彼女は予期せぬ命を授かる。仕事を辞め、田舎町でひっそりと暮らし始めた矢先、実は富豪だったあの夜の男性が訪ねてきた!(『刻まれた記憶』)。大スター作家が贈るシークレットベビー・ロマンス。
ひと月前に赴任してきたばかりの高校教師メアリーはある日、成績トップでありながら学校に来なくなった生徒の存在を知る。このまま放ってはおけず家庭訪問をすることにしたが、3月でも氷点下のこの地で、運悪く車が故障してしまい、あわや凍死という絶体絶命の危機に追いこまれた。するとそこに現れたのは、人狼を思わせる野性的な男性ー彼こそ、件の生徒を男手一つで育てる、ウルフ・マッケンジーだった。この命の恩人はみずからの体温でメアリーを温め、さらには、これまで一度も異性に興味を持たれなかった彼女の美しさに気づいた。欲望を隠さないウルフに圧倒されつつも、メアリーは歓びすら覚え…。
ビッキーは一人で小さな宿を経営しながら幼い双子を育てている。ある日、知人から、辣腕実業家ジェイを宿に滞在させてほしいと頼まれ、喜んで受け入れたものの、彼をひと目見るなり早くも後悔し始めた。強く惹かれて、落ち着かないのだ。私はいったいどうしてしまったの?初めて会った人なのに。動揺するビッキーをよそに、ジェイは子供たちとすぐにうちとけ、ついには彼女にプロポーズしてきた。戸惑いながらもジェイとの将来を描き始めたビッキーは、やがて彼が何者かを思い出す。若き日にたった一度犯した過ちージェイは、子供たちの父親…。
イモジェンは18歳の時、ドラッコと婚約した。10歳年上で、亡き父の右腕だったドラッコは、子供の頃からの憧れの人。すばらしい男性、そしてやっと実った初恋。彼女は幸せを感じていた。だが結婚式の日、ドラッコとのただならぬ関係をほのめかす義母の言葉を否定しようともしない彼に失望して、イモジェンは教会から走って逃げた。4年後、一度は放棄した父の遺産が必要になり、弁護士に連絡をとってイモジェンは帰郷することに。だが、待ち合わせ場所に現れたのはードラッコだった。とまどうイモジェンにドラッコは言い放つ。「君と僕はまだ婚姻関係にある。妻として僕の子供を産んでもらう」
かつては“地上の楽園”に見えたクリストフォロ島ー今のサマにとっては一刻も早く逃げだしたい場所だ。母が亡くなり、サマは冷酷な義父の経営するホテルで、ただ同然にこき使われたあげく学費さえ出してもらえないのだ。母と暮らしたイギリスへ帰りたい。彼女はその一心で観光客相手に似顔絵を描き、費用を貯め始めた。その日も仕事で港にいたサマは、妙な視線を感じて苛立った。海賊のような荒っぽい男。なぜ彼は私をあんな目つきで見るの?男はサマ近づくや絵をこき下ろし、強引に彼女を誘惑しだした。
父の死後、ペイジは妹とふたり、叔母の家で貧しい暮らしに耐えていた。ある日、再会したのは、ギリシア海運王ニコラス・ペトロニデスー4年前、18歳だったペイジがひと目で虜になり、純潔を捧げた男性。夢の日々を過ごし、その後悲嘆のどん底に突き落とされるとも知らず。彼は資金難の父の事業に投資するふりをして近づいてきただけだったのだ。あんな仕打ちをした彼が、なぜ今になって現れたのだろう?「友人の娘の家庭教師としてギリシアに来てほしい」ニコラスの言葉にとまどうペイジだったが、折悪しく妹の非行が叔母の逆鱗に触れて家を追い出され、やむなく仕事を引き受けることに。二度と彼に心を奪われてはいけない。ペイジは固く胸に誓うが…。
ある夜、ピッパは車の接触事故に巻き込まれてしまう。対向車から降りてきた男性を見て、彼女ははっと息をのんだ。ランダル!ピッパの胸が疼いたーもう4年も経っているのに。彼は当時勤めていた会社の社長で、ピッパは彼を心から崇拝していた。妻子がいると知ったのは、彼に恋をしていると悟ったあと。罪悪感に苛まれたピッパは即座に会社を辞め、姿を消した。彼は逃げ出そうとしたピッパを追いかけてきて言った。「ぼくはもう、結婚していない」いいえ、違うのよーピッパは皮肉な運命を呪った。ランダルを忘れるため、別の男性の求婚を受けたばかりだったのだ。
パーティでケータリングをするサマンサに、男性が声をかけてきた。マシュー!ハンサムな彼はイギリスとギリシアの血を引く、船舶会社アポロニアス・コーポレーション後継者という有名人だ。彼は、祖父の誕生日パーティの手伝いをしてほしいのだという。仕事の話にしては、まなざしや態度が親密すぎる気がしたが、彼のような男性がわたしなんかに興味を持つはずがないと、サマンサは恥ずかしくなり、慌てて仕事を請け負った。まさかそのパーティが、ギリシアの美しい孤島で催され、その間ずっと、マシューと寝食をともにすることになるとはーそしてそれこそが彼の思惑だったなど、彼女はまだ知らなかった。
豪奢な屋敷で何不自由なく育ったチェシーだったが、父亡きあとは使用人部屋に移り、マイルズに雇われていた。頬に傷跡が残る孤独な主人の影に、チェシーは心惹かれるが、ある日、マイルズに求婚されて、悩んだ末、退職届をだした。彼に愛などないのは明白だったから…。だがマイルズは、仕事を辞めるまでの4週間は少なくとも僕に従うべきだと、執拗に婚約指輪を買おうとする。だから、チェシーは値崩れしないアンティークものを選んだのだ。別れてから彼が売れるように。凍りついた涙のような結晶を。