小説むすび | 著者 : 高樹のぶ子

著者 : 高樹のぶ子

小町はどんな女(ひと)小町はどんな女(ひと)

ひたむきに、一途に生きた、小町の美しい人生ーー 小町の歌を手掛かりに紡がれた物語『百夜』 とともに、平安の「雅とあはれ」をたどる旅 「彼女の率直で必死な言の葉が描き出す真(まこと)の姿は、芯の強い、自分に率直な女性です。哀しみを友としながらも毅然として愛を全うした人。  私の中では、大きく豊かな女性として成長して行きました。  多くのしがらみや宿世(すくせ)に翻弄されながらも、最後まで自尊心を保ち、自らの心に忠実に生きた女性の、なんと魅力的なことでしょう。  私はぐいぐい引っ張られながら、小町の人生にのめり込んで行きました」 (本文より) 第一章 私の中の小町  第二章 小野小町の人生    母・大町との別れ 雄勝・多賀城  父親との融和と理解の場 六道珍皇寺   小町の能力 神泉苑  愛の真実を知る場所 雲林院   桜を扇に乗せて思いを伝える 仁明帝 深草陵  竹林と愛の悲劇 欣浄寺  小町は惨めに年老いたのか  山科の花と雪の里 随心院  平安時代の婚姻関係  香は男と女を結ぶ  業平と小町の出会い 慈恩院  魂を鎮めるところ 下出雲寺  父・篁との和解  笛を吹くということ  小町の歌の変遷  母恋い  鄙と都    出家というもの 石上寺  平安時代の暮らし 第三章 [対談]叶わぬところにあはれがある           高樹のぶ子×歌人・小島ゆかり

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2020年の新型コロナ禍による緊急事態宣言中に刊行し、大きな反響を呼んだ『小説伊勢物語 業平』。泉鏡花文学賞と毎日芸術賞をW受賞した「日本の美の源流をたどる」小説として、次に紡がれたのは、同じく平安時代の「六歌仙」のひとり、優れた歌の才に加えて、絶世の美女としても数々の伝説が残る小野小町の一代記である。本作も『業平』に続き、日本画家・大野俊明氏のカラー挿絵が「みやび」の世界に色を添える。 能楽の演目でも重くあつかわれる観阿弥作「卒塔婆小町」が元にしたとされる伝説「百夜(ももよ)通い」。小町を恋する男に、百夜通ってくれば共寝してもいいと無理難題をつきつける。男は通いつづけ、百夜目に悲劇的な死に見舞われる。思いが叶わなかった男の恨みはやがて小町の身の上に残され、惨めに老いさらばえるーー小町はなぜこのような姿に描かれ後世に伝えられねばならなかったのか。古今和歌集と後撰集に残された数少ない小野小町の実作とされる和歌をより深く翫味すれば、そこに隠された本当の小町の姿が立ち現れてくる。 小町の歌の世界はけして甘美ではない。しかし、「日本の美の源流」が「もののあはれ」、哀れから来るとなぜ言われてきたのか。五感を研ぎ澄まして、この小説の音律に身を委ね、時に声に出して読んでいけば、読後にかつて経験したことのない深い感動が待っている。「もののあはれ」が体感できる小説と言っても過言ではないだろう。 <前篇 花の色は> 高麗笛 一夜契り 夢と知りせば あはれてふ 六道の辻 月と雲 慈雨 算賀の菊 花ひとひら……など <後篇 我が身世にふる> うつろふもの 鄙の月 熾火 遺戒 梅花 春霞 海松布 懸想文 誘ふ水 母恋ひ 浦こぐ舟 慈恩院 百の文……など

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