著者 : 高野史緒
作家は、小説は、本は、どういう未来に向かっているのかー。読書に関する特殊な法律が課された世界の作家(「ハンノキのある島で」)。正確に訳すことが限りなく不可能なマイナー言語の日本で一人の翻訳者(「バベルより遠く離れて」)。あらゆる小説を斬りまくる文芸評論家が出会った、絶対に書評できない本(「木曜日のルリユール」)。書けなくなった元「天才美人女子大生」詩人のたったひとつの願い(「詩人になれますように」)。「本の魔窟」に暮らす蔵書家が訪れた不思議な古本屋(「本の泉 泉の本」)。いろいろな書き手のもとを巡っていくダブルクリップの旅と、本にまつわる5つの物語。
伊藤計劃+円城塔『屍者の帝国』の世界観に、ドストエフスキー『白痴』から『アルジャーノンに花束を』「ブレードランナー」までを投入した「小ねずみと童貞と復活した女」、江戸川乱歩の短篇「心理試験」とドストエフスキー『罪と罰』に、意外な符号を見出す「プシホロギーチェスキー・テスト」、佐々木淳子の時間SFコミックと、チェーホフの戯曲『桜の園』とを組み合わせた「桜の園のリディヤ」、そして、書き下ろしの「ドグラートフ・マグラノフスキー」までーロシア文学+SFの超絶リミックス全6篇。
時価2億のヴァイオリンが消えた。ヴァイオリンの名器“ミモザ”が消失!パトロンのマダム、実直なヴァイオリン職人、ヨーロッパ貴族、才媛の秘書、イケメンコーディネーター…。誰にも不可能で、誰もが怪しい。アラフォー地味美人×天才(?)高校生コンビにこのトリックは解けるのか!?
1662年晩夏のアムステルダム。宝石商ホーヘフェーンがペストで死んだ。しかし遺体が埋葬された翌日、その館の鉄格子がはまった部屋で、ホーヘフェーンに瓜二つの男が意識不明で発見される。画家レンブラントの息子ティトゥスと、記憶を失った男ナンドはひょんなことから事態に巻き込まれ、謎の解明に乗り出すが。17世紀ネーデルラントの濃い闇の中から浮かび上がる真相とは。
江戸川乱歩賞受賞作家7名が放つ最強の競作アンソロジーが、乱歩賞60周年の2014年、文庫化! 七人のミステリ作家に届いた挑戦状。「テーマはデッド・オア・アライヴ、生死の危機。2013年9月7日正午、主要人物が帝国ホテルにいる短編ミステリーを執筆せよ」その場所は天国か地獄か、その選択は生か死か。彼らの出した珠玉の“答え”がここにある。 江戸川乱歩賞受賞作家7名が放つ最強の競作アンソロジーが、 乱歩賞60周年の2014年、文庫化! 七人の作家に届いた挑戦状。 「テーマはデッド・オア・アライヴ、生死の危機。 2013年9月7日正午、主要人物が帝国ホテルにいる短編ミステリーを執筆せよ」 その場所は天国か地獄か、その選択は生か死か。彼らの出した珠玉の「答え」がここにある。 薬丸岳「不惑」 とある事件が原因で13年間眠り続ける恋人をもつ窪田。彼は今日行われる結婚式で復讐を企てるが、同級生の夏目が違和感に気付く。夏目シリーズ最新作。 竹吉優輔「イーストウッドに助けはこない」 違法スレスレの街金で働くコージは、ヤクザの女に手を出した「そのスジ」の叔父を拉致してリンチする羽目になるが、ダメ叔父とコージには大切な思い出があった。 高野史緒「悪魔的暗示」 1918年、帝国ホテルで天才少年は米国スパイの会話を耳にする。各国スパイが血眼になって追う、滅亡したロシア・ロマノフ王朝の“秘宝”の行方は。 横関大「クイズ&ドリーム」 とある目的でホテルに泊まっている川尻の客室を突然訪れた、銀色の仮面をつけた男。彼は「負けたほうが謎のカプセルを飲む」ルールのクイズゲームを強要する。 遠藤武文「平和への祈り」 ケセランパサランを追いかけた先の公園で、ミステリー作家・“遠藤武文”はミカエルを名乗る天使に出会う。自分の肩に世界の滅亡がかかっているとしった作家は……。 翔田寛「墓石の呼ぶ声」 雨宮勇吉は、9月頭の7日間を必ずホテルで過ごす常連客だ。ホテルマンが聞いた彼の過去と、墓石に刻まれた秘密とは。 鏑木蓮「水の泡〜死を受けいれるまで〜」 ナノバブルと呼ばれる微細な気泡を作る技術で会社を興した凜子。会社は大きくなったが、婿養子の夫には愛想が尽きた。一人酒を楽しむ夜、急に体中をしびれが襲い……。 薬丸 岳「不惑」 竹吉優輔「イーストウッドに助けはこない」 高野史緒「悪魔的暗示(Наваждение)」 横関 大「クイズ&ドリーム」 遠藤武文「平和への祈り」 翔田 寛「墓石の呼ぶ声」 鏑木 蓮「水の泡〜死を受けいれるまで〜」
ロシア帝国を震撼させた『カラマーゾフ家の父殺し事件』から十三年、内務省の特別捜査官となった次男イワン・カラマーゾフはある確信を抱いて故郷に舞い戻った。真犯人は異母弟スメルジャコフの他に必ずいる、と。再捜査が開始されるや否や、第二の殺人が起こる。世界文学の金字塔に挑む江戸川乱歩賞受賞作。
バチカンから逃げたカストラートの謎を知った枢機卿は彼をパリに追い、変死する。天使の美声はなぜ危険なのか。著者が驚愕の想像力により創り出した世界のなかで、十八世紀パリは、鮮やかな照明の煌めきに彩られ、惨劇の幕は開く。物語の力で、歴史をも塗り替える、江戸川乱歩賞作家によるSF大賞候補の傑作。
ピラミッドの謎に魅せられ、その生涯を“タイムマシン”の開発に費やした現代人ジェディは、紀元前2624年への時間跳躍に成功する。だが、クフ王の治世下にあるエジプトで彼が目にしたのは、建造途上にあるはずのピラミッドが発掘されている現場だった。なぜかジェディを崇拝する監督官のメトフェルもまた、その秘密については固く口を閉ざす。ピラミッドとは何か?その目的とは?-帰還期限が迫るなか煩悶するジェディは、ついにクフ王その人への謁見の機会を得るが…古代エジプト哲学とSF的奇想を融合させた、『アイオーン』の著者による新境地。
かつて古代ローマ帝国は、人工衛星を打ち上げるほどの高度な科学文明を享受していた。だが、その没落から数百年、13世紀暗黒時代の西欧では、物質の力を行使する科学を悪とし、人間の魂は生涯に積んだ功徳によって天に召されるという信仰が支配していた。南仏トゥールーズ市の若き医師ファビアンは、放浪の科学者アルフォンスに出会ったことにより、みずからの信仰に疑問を抱く。それは、やがてコンスタンティノポリスから中央アジアへといたる、生涯を賭けた探求の始まりであった…異形の中世を舞台に、信仰と科学の狭間に世界の真実を求める者たちを描く、壮大なる叙事詩。
時は1870年。理想の音楽を求めて止まぬベルシュタイン公爵。公爵が目をかける新進音楽家フランツ・マイヤー。クラブ・ハウス「プレジャー・ドーム」の経営者である外国人興行師モーリィとパトロンのセントルークス卿。音楽を絶対的な快楽に変える麻薬「魔笛」と、人々を恐怖に陥れる音楽機械をめぐって暗躍する彼らは、その果てに何を見たのか。日本ファンタジーノベル大賞選考会にて選考委員を驚嘆させた、虚実混淆、波瀾万丈の物語。82歳にして博覧強記を誇る著者が、様々な仕掛けをこめて描く世紀末小説。