著者 : 高野裕美子
ワシントン郊外のみすぼらしい小屋に、人の過去を見とおし、病をなおす説教師がいる-そんな噂を聞きつけて、ホーキンズ大統領夫妻は、謎めいたブラザー・クリストスを別荘に招いた。血友病の息子ジョージがなおるかもしれないという期待があったからだ。その矢先、ジョージが脚を切り、傷口から血が止めどなく流れだした。だが、クリストスが触れるだけで、出血は嘘のようにとまってしまったのだ。クリストスの神秘的な力に魅了された大統領は、やがて政策の決定にまでクリストスの意見を求めはじめる。一躍ワシントンの寵児となり、近づく女たちとつぎつぎに関係をもっていくクリストス。そんな事態に危機感を抱いたホワイトハウスのスタッフは、クリストスの暗殺を決意するが…。稀代のストーリーテラーが、権力の中枢を舞台に繰り広げる聖と肉欲のサスペンス大作。全米で二百万部を売った大ベストセラー。
米国のスペースシャトル・イントレピッド号を奪えー自国のシャトルのたび重なる失敗に業を煮やしたソ連指導部は、ついに決断した。打ち上げられたイントレピッド号に機長として送り込まれたソ連のスパイ・カプシスキ大佐は、軌道上で乗組員を殺害し、機の乗っ取りには成功するのだがー。スペースシャトルをめぐり米ソ双方が死力を尽くした攻防を展開する。近未来軍事スリラー。
米国は救難用シャトルを打上げ、さらにステルス爆撃機、ハッブル望遠鏡、宇宙戦闘機などを繰り出してイントレピッド号を奪回せんとするが、ソ連も衛星攻撃兵器などで対抗し一歩も譲らない。地上ではホワイトハウスとクレムリンの双方で懸命の対策が立てられていく…。宇宙での対決を縦糸に、地上での双方の策略を横糸に織りなす大スペクタクルが迎える緊迫のクライマックス。
不器用な生き方しかできないけれど、誰からも愛されてきた、ハンガリア移民の父。その武骨な手で世の荒波から守られ、美しく成長して法律家になった娘。だがこの幸せな家庭を、米連邦移民局からの一通の召喚状が粉々に打ち砕いたー。1990年度ベルリン映画祭・金熊賞に輝く感動の名画完全小説化。
世界の目が集まる華麗なパリのファッション界。今そこに、二人の女性がデビューを飾ろうとしていた。たぐいまれな美貌と天性の経営手腕に恵まれた日本人、中村由紀と、その娘ドーン。二人の斬新なデザインは、すでにパリ中の話題になっていた。だがファッション・ショウを目前にして、何者かが卑劣な妨害の手を伸ばしてきた。窮地に陥った由紀の脳裏に、五十年前、十六歳で上海に渡つた自分の姿が甦る…。戦火の中国大陸から世界のファッション界へのしあがつてゆく一人の日本人女性と、彼女をめぐる男達の愛と戦いを描く感動の大河ロマン。
1931年の上海で、由紀はアメリカ副領事のサムと激しい恋に落ち、愛の結晶を身篭った。だが自分との関係がサムの経歴に傷をつけることを恐れ、由紀は彼の前から姿を消す。身重の体で路頭に迷った彼女に手を差しのべたのは、サムの友人でもある日本領事館の伊藤大佐だった。やがて中国大陸の戦火が上海を覆い、激しい戦闘の中で由紀はドーンを出産。サムと伊藤が和平工作に全力を傾ける一方で、彼女は念願のファッション・サロンを開き、自立への道を歩みはじめるー。戦争の荒波の中で逞しく成長してゆく由紀の姿を歴史的事件を織りまぜて描く。
中国への侵略を止めるよう首相に直言した伊藤は満州に左遷された。彼とともに満州へ赴いた由紀とドーンは、太平洋戦争、ソ連軍の侵攻そして東京裁判と、数数の試練を経て、日本のファッション界で地位を築いてゆく。苦難を乗り越え、今パリの桧舞台に踊り出た二人は、ファッション・ショウに全てを賭けていた。その成功を妨害しようとする者は一体誰なのか?由紀は自分の夢を実現するため、立ち塞がる敵に敢然と戦いを挑む。二人の男性への愛の狭間で揺れ動きながら、自分の生き方を発見してゆく日本人女性の波瀾の半生を描く壮大なドラマ。