著者 : 鳥越碧
阿修羅と化して「天を唸らす茶碗」に挑む陶工。凌辱された夜から恋に落ちた女。忘れえぬ初恋を再燃させる男。-三つ巴の、男女の絡み合う炎!捕虜の陶工に身を捧げた武家の女の運命ー藩窯の秘史を繙く長編歴史小説。
文豪・谷崎潤一郎に愛され、世間の羨望の的となった、妻・松子。『春琴抄』や『細雪』のモデルにもなった彼女は、常に谷崎が望む女性であり続けようとした。その生涯は、果たして幸せだと言えただろうか?愛と芸術の狭間で悩む、谷崎夫妻の姿を描いた長編恋愛小説。恋多き男の、理想の女性像が明かされる!
正岡子規の妹・律は、幼いころ「私は兄さまのお嫁さんになるんよ」が口癖だった。実際、二度結婚し、二度とも離婚して実家に戻る律。やがて、脊椎カリエスを病み、激痛にのたうちまわりながら仕事を続ける子規の闘病生活を、彼女は命を燃やすかのような献身的な看病で支える。壮絶な兄妹愛を描く傑作長編!
悪妻として知られる夏目漱石の妻・鏡子。潔癖症の漱石と、おおらかで大雑把な鏡子の夫婦生活は、船出から食い違い、英国留学を経て重度の神経症を患った漱石との暮らしは大波に揺れる。鏡子はなぜ悪妻と呼ばれたのか?二人はどうして別れなかったのか?余人には窺い知れない夫婦の絆を妻の視点で描く。
天保一四年、新島襄は上州安中藩江戸屋敷詰の祐筆の家に生まれる。尊皇攘夷運動の中、西洋文明に触れてアメリカへの密航を決意する。他方、八重は会津藩の砲術指南役の家に生まれる。藩主・松平容保が京都守護職に任ぜられ、鳥羽伏見の戦いが勃発する。-日本を文明国に変えるために単身渡米した襄。会津城で銃を取り最後まで戦った八重。後にキリスト教精神に基づく私立大学創設という形で実を結ぶそれぞれの人生は、じつはまったく別々のレールの上にあった。
「染」と「織」に一意専心の思いを込めた人々が紡ぎだす、清廉な愛の旋律。加賀友禅、結城紬、有松絞、仙台平、鍋島更紗、佐賀錦、小千谷縮、久留米絣-今も残る伝統工芸の歴史に刻まれた男女の愛と生きざまを、情感豊かに描いた時代小説集。
自分を囲っていた男が危篤になったときに抱く熱い恋心、年若の同僚に躰をゆだねられない切なさ、夫の不義を許してしまった妻の寂しさー。曲がり角で愛に揺れる女性たちの心の襞を描いた、八つの連作集。
艶やかな黒髪、すき透る白い肌、もの言いたげに光る瞳ー美しい女人に成長した許子は、少女の頃から憧れていた皇子たちと恋におちる。幼い日の秘密が匂う甘い恋に始まる、「浮かれ女」の華麗な恋の遍歴。夫や子供を持ちながら、恋人たちとの愛の姿を熱くうたいあげた官能の歌人、和泉式部の生涯を描く長編。
藤原道長と二人妻の波乱の生涯。権勢をほしいままにした道長が、唯一、その愛を得ることに苦悩した美貌の女・明子(めいし)。正妻・倫子(りんし)を加えた三人の愛の交錯。絢爛たる王朝絵巻の中に描き出す書下ろし長編歴史小説。
奈津が奉公先雁金屋の次男光琳と出会ったのは光琳八歳、奈津十歳のときだった。早くも逸材の片鱗を見せる光琳に奈津は胸をときめかすが、それは果たせぬ恋の始まりだった。尾形光琳・乾山兄弟の間で揺れる女ごころ。京の大呉服商雁金屋を舞台に展開する絢爛豪華な時代絵巻。第一回時代小説大賞受賞作。