ジャンル : ノンフィクション > 文庫(ノンフィクション)
昭和十六年、シンガポールに在住する日本人に引き上げ命令が下りた。台湾生まれの客家の青年・梁光前は、その日から己の存在を問い続けることになる。中華の民か、大日本帝国の臣民か。どちらでもあり、どちらにもなれない己とは何か?ふとしたことから中華義勇軍に入ることとなった光前は…。
夏休み。いなかのおばあさんの家ですごす、さゆりと洋介の姉弟には、毎日父からの手紙が届く。そこには、一日一話の小さな「お話」が書かれているのだった。物語を通して生まれる、新しい家族の姿。
限りある生を惜しみ、その“永遠の姿”を地上にとどめようと描き続けるボッティチェルリだが、あるがままに描くという時代の流行との差異に苦悩する日々が続いていた。そんなある日、ジュリアーノ・デ・メディチの禁じられた恋人、美しきシモネッタに捧げられた壮麗な騎馬祭がフィオレンツァ全市を挙げて催される。
京都・勧学院別曹の主、藤原純友。坂東への旅で若き日の平将門との邂逅を経て、伊予の地に赴任する。かの地で待っていたのは、藤原北家の私欲のために生活の手段を奪われ、海賊とされた海の民であった。「藤原一族のはぐれ者」は己の生きる場所を海と定め、律令の世に牙を剥く!渾身の歴史巨篇。
承平・天慶の乱の首謀者として将門とともにその名を知られる瀬戸内の「海賊」純友。海の民を率い、ついに朝廷の水軍との対決が!夢を追い、心のままに生きた男の生涯を描く歴史巨篇。
情報屋に続き、警視庁公安部の山口が殺された。再び鳴沢に嫌疑がかかる状況で…。身の潔白を証明しようと奔走するも、同僚に警察内部の圧力がかかり、いよいよ孤立無援の状況に。ようやく謎の言葉「ABC」が大規模な国際犯罪に繋がることを掴むが、捜査は行き詰まる。ついに敵の銃弾は、鳴沢に向け放たれたのだった。
ベストセラーとなった北方謙三の『水滸伝』。その読本がついに文庫化。人物事典や年表といった貴重な資料をはじめ、著者のエッセイ、編集者からの手紙などレアな文章が満載。読めば北方水滸の全てが解るファン必携の一冊。文庫化にあたり、著者から読者へのメッセージや、司馬遼太郎賞受賞記念エッセイなど、さらに特別なコンテンツを追加。100ページ以上増補した完全版。
新田隆弘は鬱屈をため込んでいた。かつては渋谷で伝説のチームと言われた“金狼”の元メンバーも、今ではヤクザの下っ端。兄貴分の命令で高校生が作った売春組織を探っていた隆弘は、中心人物の渡辺栄司に辿り着く。さして喧嘩が強そうでもない、進学校に通う色白の優男。だが、栄司は仲間を圧倒的な恐怖で支配していた。いったい何故。隆弘が栄司の全く異質な狂気に触れたとき、破滅への扉が開かれたー。
雀プロ、成金、僧侶、医者、愛人、弁護士、学生に警察官…。風俗営業が数多ひしめくピンクゾーンに、今夜もギャンブル好きが集まってくる。東風戦、ワレ目あり、動くカネは数億円!?命の運より博打運。カタギだってヤクザだって、いやがおうにも血が騒ぐ!殺人前科はあるものの、物腰柔らかで男前の天才勝負師「オレンプ」。そして、ギャンブルを愛してやまない面々が、痺れるような勝負の世界特有の、興奮の坩堝に引き込まれていく。阿佐田哲也のギャンブルセオリー満載の、“一話完結形”連作長編麻雀小説。
急逝した親友の告別式の夜、その不倫相手と、二人で飲んだのをきっかけに、エリカは、いつしか彼との恋愛にのめり込んでいく。逢瀬を重ねていった先には何が…。高ぶるほど空虚、充たされるほど孤独。現代の愛の不毛に迫る長篇。
朝敵とされた会津を救うため、秋月悌次郎は左遷の地より復帰、戊辰戦争の苦難が始まった…。後年、ラフカディオ・ハーンに「神のような人」と評されたサムライの物語。全一二〇〇枚、完結。新田次郎文学賞受賞作。
幕末の会津藩に、「日本一の学生」と呼ばれたサムライがいた。公用方として京で活躍する秋月悌次郎は、薩摩と結び長州排除に成功するも、直後、謎の左遷に遭う…。激動の時代を誠実に生きた文官を描く歴史長篇。新田次郎文学賞受賞作。
江戸・浅草で一膳飯屋「だいこん」を営むつばきとその家族の物語。腕のいい大工だが、博打好きの父・安治、貧しい暮らしのなかで夫を支える母・みのぶ、二人の妹さくらとかえでー。飯炊きの技と抜きん出た商才を持ったつばきが、温かな家族や周囲の情深い人々の助けを借りながら、困難を乗り越え店とともに成長していく。直木賞作家が贈る下町人情溢れる細腕繁盛記。
会話が通じない。ひょっとしたらおかしいのは自分?「コミュニケーション・ブレイクダウン」「陽気な僕ら浮気なあんたら。ハッピーなデイズ」「反省の色って何色ですか?」ほか、日常で噛みしめる人生の味は、苦虫の味。文筆の荒法師、町田康の叫びを聞け。
「ゴビラサ…」道尾の前で謎の言葉を呟いた男は、数日後に刺殺体で発見された。やがて、彼の残した言葉と度重なる霊現象が結びついた時、孤独な少年の死に端を発した一連の事件にまつわる驚愕の真実が明らかになる。美貌の助手を伴う怜悧な霊現象探求家・真備と、売れないホラー作家・道尾のコンビが難事件に挑む。
若くして死んだ母そっくりの継母。主人公は継母へのあこがれと生母への思慕から、二人の存在を意識のなかでしだいに混同させてゆく。谷崎文学における母恋物語の白眉。ほかに晩年のエッセイ四篇を収載。初文庫化。
宝永4(1707)年突然大爆発を起こした富士山は16日間にわたり砂を降らし続け、山麓農民に甚大な被害をもたらした。時の関東郡代伊奈半左衛門忠順はこうした農民の窮状を救うべく強く幕府に援助を要請した。だが、彼が見たものは被災農民を道具にした醜い政権争いだったー。大自然の恐怖を背景に描く長篇時代小説。
故郷を捨て、過去を消し、ひたすら悪事を働いてきた日系ブラジル人の高木耕一は、コロンビア人の出稼ぎ売春婦DDと出逢う。気分屋でアタマが悪く、金に汚い女。だが耕一はどうしようもなくDDに惹かれ、引き摺られていく。DDのために大金を獲ようと、耕一はかつて自分を捨てた仲間ー裏金強奪のプロである柿沢に接触する。
愛ー、それは気高く美しきもの。そして、この世で最も恐ろしいもの。毒島半蔵の歪んだ妄想が、この世を地獄へと塗り替える。虚ろな心を抱える吉美が、浮気を続ける亭主に狂気をぶつける。傷を負い言葉を失った、薄幸の美少女・まゆか。実の娘に虐待され続けている、寝たきり老人・英吉。暴風のような愛情が、人びとを壊してゆく!新堂冬樹にしか描けなかった、暗黒純愛小説集。