ジャンル : 外国の小説
ユーゴスラヴィアの作家ダニロ・キシュの代表作。 ボルヘスの『汚辱の世界史』への「対本」としてーーオマージュとして、かつアンチテーゼとしてーー構想された7つの連作短編集。 スターリン時代の粛清に取材しながら、全体主義社会での個人の苦闘を描く。 ボリス・ダヴィドヴィチのための墓 紫檀柄のナイフ 仔をむさぼり食らう雌豚 機械仕掛けのライオン めぐる魔術のカード ボリス・ダヴィドヴィチのための墓 犬と書物 A・A・ダルモラトフ小伝(一八九二ー一九六八) 訳者あとがき
稀代の作家高橋昌久氏による「マテーシス古典翻訳シリーズ」第11弾は、アンドレ・ジッドの「大地の糧」です。本作はジッドがまだ三十にならぬ、まだ若さを有していた頃の作品で、若者の作品と言えるだろう。技法や思想として円熟は見られないが、中庸を知らぬ獅子が粗々しさを省みずただ猪突に猛進していく様は読み手に大きな印象を残すだろう。少なくとも代表作であり技法的には円熟したであろうが何処かなよなよした『狭き門』よりも遥かに好感が持てる作品である。 凡例/訳者序文/第一書(1、2、3)/第二書/第三書/第四書(1、2、3、4)/第五書(1、2、3)/第六書/第七書/第八書/エピロゴス
作家・哲学者の高橋昌久氏による「マテーシス古典翻訳シリーズ」第15弾は、『カルメン』で知られるフランス人作家プロスペル・メリメによる、ナポレオンの故郷としても知られるコルシカ島を舞台とした作品『コロンバ』です。今回も氏本人が原典より翻訳したものを収録しています。 凡例/訳者序文/一/二/三/四/五/六/七/八/九/十/十一/十二/十三/十四/十五/十六/十七/十八/十九/二十/二十一
作家・哲学者の高橋昌久氏による「マテーシス古典翻訳シリーズ」第17弾は、ルートヴィヒ・ティーク著『ブロンドのエックベルト』、『人生の余剰』です。『人生の余剰』は本邦初翻訳です。 凡例/訳者序文/ブロンドのエックベルト/人生の余剰/エピロゴス
冴えない掃除人と、洗練された弁護士。 こんな形で再会するだなんて……。 ミランダが希望を抱いて都会に出てきたのは3カ月前のこと。 それなのに、彼女の夢はすでにしぼみかけていた。 就職難のご時世に、学歴も資格もない田舎娘が職を得るのは難しいのだ。 おまけにミランダは不慣れな都会で交通事故を起こしてしまう。 だが罰金よりもショックだったのは、相手側の弁護士ニコラスが、 彼女の洗練されていない雰囲気といかにも女性らしい容姿を 揶揄しているのを耳にしてしまったことだった。 長身で魅力的な彼のことが気になっていたなんて、私、ばかみたい! そんなある日、ミランダが掃除人の仕事で高級マンションを訪ねるとーー なんとそこは、ニコラスのオフィス。ミランダは慌てて回れ右をした! 職業紹介所から掃除人の求人があると紹介され、運悪くニコラスと再会してしまったミランダ。ところが意外にも彼に引き留められ、料理の得意な彼女は週3日の家政婦の仕事を引き受けることになります。ところが、ニコラスの恋人らしき女性にも軽んじられ……。
幸せの絶頂から、不幸のどん底へーー 何も言わずにいなくなってしまうなんて。 図書館に勤めるロビンは、イギリスの小さな村に住む18歳。 ある日、近くの空き家の庭で遊ぶ弟をたしなめていたところ、 高級車で乗りつけた精悍な男性に鋭くにらまれ、追い払われた。 リックという名の彼はどうやらその家に引っ越してきたらしい。 倍も年上で傲慢な彼に、どうしてこんなにも惹きつけられるのかしら。 何度か会ううち、ロビンはときめきを抑えきれなくなっていった。 そんな娘を心配した父親から彼とつき合うことを反対され、 泣きながら家を飛び出したロビンは、リックの胸にすがった。 だが冷たく拒まれて喧嘩別れに。好きなのに、なぜこうなるの……? やがて彼女は悲報を耳にするーーリックが交通事故に遭ったというのだ! イギリス女王の故エリザベス2世に認められたキャロル・モーティマーによる、純真無垢なヒロインと大人の魅力を放つヒーローとの年の差ラブストーリー! “ロマンス界の話巧者”が綴る、主人公たちの生き生きとした会話やロマンティックな展開をご堪能あれ。
公爵様と踊った思い出を胸に、 明日から私は家庭教師になる……。 駆け落ちして伯爵家を勘当された母のもとに生まれたアンナ。 今は亡き母が手持ちの宝石を売って行かせてくれた学校で教育を受け、 明日からは家庭教師として一生働くつもりだった。 だが今夜、伯爵令嬢である親友マリアの計らいにより、 アムスコット公爵家で催される舞踏会に代理出席することになったーー すてきなドレスをまとい、“レディ・マリア”の名を借りて。 思いがけず、アンナは主役の公爵ジェームズにダンスを2度申し込まれ、 さらにはキスもされて、こう告げられた。「明日、君の家を訪ねる」 だめよ! 私はレディ・マリアではないし、明日からは働く身なのだから。 公爵への恋心を封印し、アンナは慌てて舞踏会をあとにした! 真夜中に逃げるように去った魅力的な“レディ・マリア”に求婚するため、公爵は翌日に家を訪問し、気に入った女性がレディ・マリアではなかったことを知ります。やがて公園で再会を果たす二人ですが、公爵と家庭教師は普通は友人にさえなりえない関係で……。
いつしかこの心を占めていたのは、 あなたの優しい声と、笑顔でした。 イギリスとオランダの病院間で交流が行われることになり、 赤毛が印象的な小児科の看護師アデレイドが推薦される。 候補者を視察しにオランダから来た医師のファン・エッセン男爵も、 彼女の献身的な働きぶりを見て、ぜひ来てほしいと声をかけてくれた。 無口だけれど、穏やかで魅力的な声で完璧な英語を話す彼。 長身で、笑うと得も言われぬすてきな表情になるハンサムな人……。 アデレイドは気づけば彼のことを考えてしまう自分を戒めつつ、 彼の役に立って喜んでもらいたい一心で、オランダ行きを承諾した。 ところがそこには、金髪に青い瞳のみごとな美貌をそなえた、 彼の“恋人”を自任する上流階級の令嬢が待っていた! 時代を遡って懐かしのロマンスや色褪せない恋物語を味わえるコレクション《ハーレクイン・ロマンス・タイムマシン》。本作は世界中の読者のみならず、数多くの作家たちから愛されるベティ・ニールズが1969年に書いたデビュー作で、2007年に惜しくもこの世を去った友人のアン・ウィールが生前に寄せた賛辞も掲載されていますので、お見逃しなく!
プラネタ賞受賞のスペイン・亡命作家の幻の名作が甦る! フラメンコに象徴される『情熱的実体』の解明に奔走する女子大生……レヴィ=ストロースを始め文化人類学の時代の風を受け、迷信、呪術、生活習慣などに大きな関心が向いた時代に、アメリカの女子大生ナンシーがスペインのセビーリャに留学したとの設定で、アメリカの娘からすれば、スペイン社会は「ジプシーの世界(情熱的実体)」そのものであるとするナンシーの博士論文を巡って、人や社会、歴史が縦横無尽に疾走する様がユーモアあふれる筆致で描かれる、スペイン社会のもう一つの世界“ロマ社会”を表現しきった長編ロマン! 第1部 アンダルシアがナンシーを発見する 手紙 I ナンシー、セビーリャを発見する 手紙 2 ナンシー、ジプシー世界に入る 手紙 III ナンシーと映画館の冒険 手紙 IV ナンシーのハイキングとカフェの集会 手紙 V ナンシーならびにしゃべる鹿 手紙 VI ナンシーと金色スズメ蜂 手紙 VII 中庭、ライバルそして魔法の井戸 手紙 VIII ナンシーと花 手紙 IX ガスーレスでの通夜 手紙 X ガスーレスでの顛末 第2部 ナンシーの博士論文『ジプシーの世界』 I 方向指定の座標 II ニューヨークからの手紙とバルデペーニャのジプシー III バル1・2・3にて IV 移り気なナンシーとブッダ V アカデミックでドラマチックなナンシー VI 歴史的考察 VII ジプシーの弁証法ならびに《ホッカノ・バロ》 VIII いくつかの適切な代理人 IX ブレリアス、ファルッカ、グラナディーナス X ソレアとトリアーナのジプシー XI 《毒》、ボレロとログローニョの書肆 XII カルセレラと彷徨える魂 XIII サエタ XIV 笑いと戦慄の幕間 XV 《大悪霊》、ベルセブブと隻眼達 XVI カントゥエソがガンディーについて意見を言う
《メグレ警視》シリーズの作者ジョルジュ・シムノンの未邦訳傑作長篇選集刊行! 本叢書は、作家であり、シムノン研究の第一人者でもある瀬名秀明が監修と解説を担当。日本でこれまで紹介されてこなかった“世界作家”シムノンの魅力を発見してほしい。 エキゾチックな空気がたまらない異郷小説 伯父の口利きでアフリカのリーブルヴィルに働きにやってきた育ちのよい青年ジョゼフ・ティマールは、到着して間もない朝、ホテルのオーナーの妻アデルに誘惑され、彼女の虜になってしまう。パーティーの夜に黒人のボーイが銃殺される事件が起こり、ティマールはアデルが犯人ではないかと疑うが言わずにいる。アデルの亭主も続いて感染症で亡くなり、葬儀の夜、ふたりは再び激しく愛し合う。翌朝アデルはティマールに、伯父の立場を利用しジャングルの借地権を得て一緒に事業を始めるよう仕向け、ティマールは同意するが次第に無気力に襲われ自制心を失っていく……。1930年代初頭のフランス植民地ガボンを舞台にした、キャリア最初期の野心的な作品。 パリの霧も雨も出てこない本作『月射病』は、最初のうち多くの読者の目には異色作と映るかもしれない。しかし実際にシムノンの経歴を振り返れば、本作が異色どころかシムノンという作家にとって本道の一篇であり、しかも彼が本当に[「本当に」に傍点]作家として、もっというならばひとりの人間として、大きな一歩を踏み出した直後の、彼にとって人生の方向を決めるほど重要な一篇であったことがおわかりいただけることと思う。--「解説」より
老いた父をめぐる風景 北フランスの町、ペリクールで一人暮らしをしている老父アブー。旧家の末裔である父、絶対的な家父長として君臨していた父が、今や老いて認知症になっている。この父をどうしたらいいか。子どもたちにとって必ずしも愛しい父ではないが、立派に生きた過去を持つ父を交代で世話をし、その様子をメールで報告し合う。そこに子どもたち一人ひとりのこれまでの人生が自然と浮かび上がる。 父と子どもたちの関係、老い、介護を巡る物語。
暴風にさらされ、北朝鮮という樹木から外の世界へ飛び出した青い落ち葉、それが脱北民だ。2000年代から韓国で活動する女性作家が、国境を挟んで揺れ動く人々の哀歓と希望を九つのストーリーで描き出す。[解説=高島淑郎]
学生時代の友人に再会した作家は、「最期の時間を一緒に過ごしてほしい」と頼まれる。友人は末期がんだった。そして、心の準備ができたら薬を飲んで死を選ぶという。思いがけぬ日々のなかで作家が見たものはーー。全米図書賞受賞作家による感動作。映画化原作
アメリカ文学の金字塔に、もう一度息を吹き込む 小林秀雄や谷崎潤一郎らも注目した小説『アメリカの悲劇』。「死刑制度」「中絶の権利」「宗教二世」などを描いたこの先駆的名作は、今や忘れられつつあった。 百年の時を経て新訳に取り組んだドライサー研究の第一人者が、研究者として再発見した〈メッセージ性〉と、翻訳家として格闘したその〈難解さ〉を語る。 海外文学を研究/翻訳する時の〈落とし穴〉とはーー? はじめに 第一章 主題論 一 凡夫の悲劇 現代でも悲劇創造は可能か/悲劇的英雄のリアリティ/凡人の悲劇/悲劇的小説のメカニズム/自然主義文学と悲劇的小説と/悲劇的凡人の実存/クライドが背負う法的問題/リチャード・ライト『アメリカの息子』/理知への失望、「民主の花形」への期待はずれ 二 「宗教二世」の悲劇 宗教大国アメリカ/ドライサーの自伝性 三 人工妊娠中絶禁止の悲劇 妊娠中絶禁止狙いの検閲、弾圧/フェミニスト運動家エルシー・メアリー・ヒル 四 リンチ、さもなければ陪審制か 潜在するリンチ衝動/衆庶群民の質 第二章 文体論 一 ドライサー流自由間接話法の繁茂 自由間接話法の訳し方/バフチン流「ポリフォニー小説」/小林秀雄、谷崎潤一郎の誤読 二 「意識の流れ」の流れ エリオット『荒野』の「非在の都市」/フィッツジェラルド『偉大なギャツビー』/ウィリアム・ジェイムズ心理学の「意識の流れ」/「意識の流れ」とドライサー/ドライサーはジョイス、フォークナーの先駆け?/ルカーチの前衛主義批判とドライサー称賛/ヘンリー・ミラーのドライサー評 第三章 本文批評 ドライサー小説の制作過程/ペンシルヴェニア大学図書館ドライサー・コレクション/英語版四書の校合から見えてくるもの/単純な誤植/前出語句と後出語句の不一致/引用符の誤植/校訂困難な食い違い/架空の地図から生じる混乱/大胆な校訂 引用文献書誌 あとがき 人名索引
古代・中世の日本において、書物を読み、解釈し、伝えていくことは、限られた人びとにのみ許される特権的な営みであった。 特に中国大陸ないしは朝鮮半島経由で伝えられた漢籍(漢語で書かれた書物)は、国家を支える政治や法、さらには思想や文化体系を伝える最先端のものとして重要視された。 中国の文化全般を学ぶことを目的としたこれらの学問ー漢学ーは、国家の制度のなかにも位置付けられ、それを担う家では、書写・刊行された諸種の漢籍を入手し、独自の学問を形成していった。 書物に残された注釈の書き入れ、来歴を伝える識語、古記録や説話に残された漢学者の逸話など、漢籍の読書の高まりをいまに伝える諸資料から古代・中世における日本人の読書の歴史を明らかにする。 貴重資料の図版収録点数総50超!
英国の美しい田舎に現れた女は八年前に失踪した遺産相続人なのか? 蔦の木だけが知る「誰も知らない昨日の噓」とは? 謎めいた女の出現が〈ホワイトスカー牧場〉に波乱の渦を巻き起こす……。M・スチュアートの長編第六作にして浪漫サスペンスの傑作を初邦訳! 誰も知らない昨日の噓 訳者あとがき
作家の名前も小説のタイトルも忘れたが 宮本武蔵が登場する児童文学の作品が知りたい あんりという子が登場する児童文学のお話はあるか そんな読者の要求に答える、登場人物から引ける日本の児童文学作品の索引。 2018〜2020年に刊行された単行本1,729作品の登場人物から引ける索引
シリーズ第2巻「マッチ売りの少女」は、表題作のほか、「雪の女王」「モミの木」「雪だるま」「年とったカシワの木のさいごの夢」「影」「カラー」「いいなずけ」「とびくらべ」の9篇を収載している。なかでも「雪の女王」は、アンデルセンの代表作の一つで今でも多くの人々に愛されている名作。また「影」は、数ある作品の中でも異彩を放つ大人の童話である。主人公の学者が自分の影に乗っ取られ、やがて恐ろしい結末が訪れる。切なく美しい物語からミステリアスな物語まで、多彩なアンデルセン童話が堪能できる一冊。 マッチ売りの少女 雪の女王 モミの木 雪だるま 年とったカシワの木のさいごの夢 影 カラー いいなずけ とびくらべ
なぜハン・ガンは、アジア人女性として初めて、ノーベル文学賞を受賞したのか? 大きな話題を呼んだ原著に、この2年、激動する韓国文学の重要作の解説を加筆、40頁増の新版登場! 韓国文学は、なぜこんなにも面白く、パワフルで魅力的なのか。その謎を解くキーは「戦争」にある。 ・著者メッセージ 本書の初版は二〇二二年七月に刊行された。その後二年と少しの間に、新たに多くの韓国文学が翻訳出版された。増補新版ではその中から注目すべきものを追加すると同時に、初版時に紙幅の関係などで見送った作品にも触れることにした。特に「第7章 朝鮮戦争は韓国文学の背骨である」の章に多くを追補している。 その作業を進めていた二〇二四年十月に、ハン・ガンがアジア人女性として初のノーベ ル文学賞を受賞した。本書を読めば、ハン・ガンが決して孤立した天才ではなく、韓国文学の豊かな鉱床から生まれた結晶の一つであることがわかっていただけると思う。 海外文学には、それが書かれた地域の人々の思いの蓄積が表れている。隣国でもあり、かつて日本が植民地にした土地でもある韓国の文学は、日本に生きる私たちを最も近くから励まし、また省みさせてくれる存在だ。それを受け止めるための読書案内として、本書を使っていただけたらと思う。(「まえがき」より)