出版社 : ハーパーコリンズ・ジャパン
テキサス州ダラスのオフィスビル。半年前までつき合っていたクインランとエレベーターに乗り合わせたエリザベスは、気まずくて仕方がなかった。クインランはセキュリティ会社の経営者で、強引で魅力的すぎて一緒にいると怖くなる人。早く1階に着かないかしら。そのとき、がたんと音がしてエレベーターが止まった。199X年7月21日、午後5時23分、大停電発生。かくして二人は密室に閉じ込められた。L・ハワード『大停電に祝福を』他、D・パーマー『恋と冒険とカウボーイ』、A・メイジャー『欲しいのはあなただけ』を豪華収録!
「あの夜のことをまだ根に持っているのか?」思いがけないダンテの言葉に、カリーナはたじろいだ。彼は私の18歳の誕生日の夜を覚えていたんだわ…。10年前、カリーナはダンテに純潔を捧げた。彼は私のものーそう信じたのに、彼女は冷たく部屋から追い出されてしまった。もう二度と会うこともないと思っていたのに、ダンテは今、厚かましくも平然と、カリーナにある仕事を頼みたいと言ってきた。彼は私が失ったものについて、何か知っているのだろうか?カリーナは妊娠して流産し、独りで耐えた年月を思い出していた。
新婚当時、シャーロットは良い妻にはなれなかった。大富豪の夫ラウルに甘やかされ、自分を見失ってしまったのだ。結局、夫婦関係は壊れて別居となり、もう2年がたつ。いまシャーロットは障害児の施設で身を粉にして働き、以前とは別人のように、地に足のついた生活を送っていた。もう昔の私に戻るつもりはない。でも、夫に会わなければ……。実は施設は困窮していて、すぐにも金銭的援助が必要なのだ。恥を忍んで金の無心に来た妻に、容赦ないラウルの言葉が飛んだ。「資金は出す。だが4カ月間、昼も夜も完璧な妻として尽くすんだ」
ロンドン郊外に立つ由緒ある豪壮な屋敷、マニオン邸──この屋敷の正統な継承者はあなたなのよ。デイナは亡き母から、繰り返しそう説かれ、それはまるで呪いの言葉のように、その後のデイナの人生をがんじがらめに支配していくことになる。彼女は屋敷の家政婦である伯母に引き取られた貧しい少女だった。母のためにも、かならずこの屋敷を手に入れてみせるわ。だがその企みも、屋敷に出入りする敏腕実業家ザックに見破られ、非難されたあげく、デイナは屋敷を追い出されてしまう。そして7年後、ふたりは予想外の再会を果たすことになるが……。
アナは旅の途中で所持金を盗まれ、働き口をさがしていた。ようやくある屋敷の家庭教師の職を見つけ、面接に行く途中、アナは海で溺れた少女を救い、そのまま意識を失ってしまう。気づくと、彼女は豪奢な屋敷で寝かされていた。そばで当主のリチャードが、娘の命の恩人である彼女に冷ややかな目を向けている。アナは、はっと気づいた。彼とは先日、偶然出会っている。しかも、キスまで奪われて……。この人は、私が愛人志願で現れたとでも思いこんでいるんだわ。なんて傲慢なの! 私は家庭教師になりたいだけなのに。
シーラは大きなお腹を抱え、9カ月前の運命の夜に思いを馳せていた。とあるパーティで、高級なタキシードを着こなす男性と出会った。スレイドと名乗る彼は世界を股にかけて仕事をしており、ハンサムな容姿もさることながら、知性とユーモアで彼女を魅了した。たちまち惹かれ合い、月明かりの下で情熱的に結ばれたのもつかの間、夜明けとともに彼は旅立っていったーー彼女の身に、小さな命を残して。でも、スレイドは永遠の関係や子どもを望むタイプじゃないわ。シーラは彼に妊娠を知らせず、独りで産み育てる決意をした。それなのに今、なんの前触れ
両親亡き後、アンは鬼のような大伯母のもとで家政婦同然にこき使われ、20歳になった今、好きでもない男性と結婚させられそうになっていた。もう我慢できない……。アンは古い車に乗って家を飛び出し、カリフォルニアに向かおうとしたが、途中で車が故障してしまった。窮地を救ってくれたのは、ローリーとアンジェラの若夫婦。学生結婚した二人は夫婦で初めてローリーの実家へ行くところだという。二人の車に同乗してほっとした矢先、衝突事故に巻き込まれ、アンは病院のベッドの上で意識を取り戻した。そばにいたローリーの兄マットの言葉で、驚き
和平のため敵対するマッキントッシュの城を訪れた族長の娘ベラは、花婿候補として、2人の男に引き合わされた。寡黙で野性味溢れるブローディ。女あしらいの上手い美男子ケイラン。氏族同士の争いに終止符を打つには、どちらかと結婚しなければならない。だが翌朝、ベラの弟が殺害され、犯人と断罪されたブローディは即刻追放、ケイランが次期後継者に指名された。4カ月後、ケイランとの婚礼を翌日に控えた嵐の夜、突然、ベラの寝室に侵入者がーー!暗く険しいブローディの視線に瞳をとらえられた次の瞬間、ベラはたくましい腕で軽々と抱えあげられ
10年前、富豪の一人娘エミリアは、アポロ像のようにハンサムでエレガントなドミニクに恋をした。太っていて不器量なエミリアに、彼はとても優しくしてくれた。だが、ドミニクに求婚されたとき、彼女は断ったーーそれが財産目当てと知ったから。その後、父親が破産して自殺。エミリアの人生は一変した。今は痩せて、見違えるほど美しい女性に生まれ変わり、エマという名で家庭教師をしている。そして今度の雇い主は……伯爵となったドミニク!変貌したわたしを見て、彼は過去を思い出すだろうか?
パーティ会場で男に言い寄られ、困り果てているジュリアを、サイラス・カボット・カーターは思惑ありげに見つめていた。彼は近い将来、爵位と広大な領地を受け継ぐ名家の御曹司で、常に絶対の自信を持ち、大勢の女性に取り囲まれている。ジュリアが幼い頃から憧れながら、反発も感じていた年上の男性だ。サイラスは「きみもあの男に気があるんだろう?」などと言って軽蔑をあらわにし、違うというなら証明してみせろとたたみかけた。「いったいどうやって?」ジュリアが憤慨して問うと、サイラスは平然と彼女の腰に手をまわし、こんな提案をした。「僕の恋人を演じて、あの男を追い払えばいい」
地中海の島国アルマの王女ベラは落胆していた。父に強いられた、石油王の御曹司ウィリアムとの政略結婚。兄たちのように恋におちた相手と幸せになれたらよかったのに……。そんなときベラは、浜辺で偶然でくわした魅惑的な男性が、驚くことにほかならぬ許婚ウィリアムだと気づく。たくましい体。きらめくアクアブルーの瞳。写真で見た、ハンサムだけれど真面目そうな印象の彼とはまるで違う。なんて快活でセクシーな人なのかしら。にわかに胸躍らせるベラだったが、すぐにそれが勘違いだとわかる。彼の名はジェームズーー父が決めた結婚相手の双子の
アイルランドの美しい古城のホテルで働くアーニャは、ホテルを買収した新オーナーのブレイディに呼びだされ、カリフォルニアを訪れた。出迎えにも来ないブレイディに腹をたてるが、やがて現れた彼をひと目見るなり、その野性的な魅力に圧倒されてしまった。人を寄せつけない謎めいたまなざしーアーニャは魔法にかかったように、彼に誘われるままベッドをともにした。だがその直後、ブレイディの言葉に凍りつく。「昇給は約束する。もうアイルランドに帰るといい」2ヵ月後…アーニャのおなかには新しい命が宿っていた。
「夏のふれあい」ノーラ・ロバーツ/ニューヨークで働くグウェンは、母の手紙にルークという男性の名がよく出てくるのを不審に思い帰省する。「愛していると伝えたい」リンダ・ハワード/ボスのサクソンの愛人となる道を選んで2年。彼の子を妊娠したアンナは、どんなしがらみも拒む彼に涙をのんで別れを告げた。「恋人たちのシエスタ」リンダ・ラエル・ミラー/オリヴィアはメキシコで仕事中、砂漠の山賊に誘拐され意識を失う。だが目覚めるとそこは海辺の邸宅で、謎めいた美しい男性がいた。
トレシーは金持ちの伯父一家と、南フランスへやってきた。わがままな従姉の、休暇中の世話係として雇われたのだ。実は伯父たちにはバカンス以上の大事な目的があり、従姉が未来の花婿として狙いを定め熱を上げている大富豪、クリスピン・フォクスの豪華クルーザーの後を追ってきたのだった。生粋の上流階級の男性クリスピンを目の当たりにしたトレシーは、そのゴージャスなオーラに圧倒され、つい従姉に同情した。あのような男性には、とても相手にされないのでは…。予想に反して、クリスピンは度々訪ねてくるようになる。だが彼の目的は着飾った従姉ではなく、世話係のトレシーだった。
「ぼくはきみが憎い」マットの緑色の瞳がぎらりと光った。「きみに、ぼくが味わったのと同じ苦しみを味わわせてやる」憎しみに満ちた義兄の言葉に、フランセスカは震えあがった。ロンドンからはるばるカリブ海までやってきたのに、8年ぶりの邂逅はぞっとするほど残酷で、禍々しい。フランセスカは、静かに悲しみにうち沈んだ。8年前のあの夜、たしかに義兄と義妹は過ちを犯した。だがあれはもう、過去の記憶に埋めたのではなかったのか。フランセスの脳裏に、15歳の禁断の夜がありありと甦った。
その日、ガズビヤ王国では国王のハーレムに女性を集めていた。ハリス王国の王女ナディアは踊り子として宮殿に忍びこみ、寝室でザイード王が現れるのを待っていた。彼女には、どうしても国王にかなえてほしい願いがあった。ガズビヤと長年敵対しているハリスを攻めないでほしい。そのために、ナディアは家族に黙って国を飛び出した。無慈悲な権力者がどうすれば喜ぶかなら、よく知っている。自分が差し出せる唯一のものー純潔を捧げるのだ。たとえ、ハーレムで愛の奴隷にされるとしても…。
5年前、リリーは車の事故で死んだー。しかし本当は、名前を変え、別の場所で暮らしていた。血のつながらない兄ラファエルとの愛に溺れていた彼女にとって、そうするしか、中毒のような関係から抜け出すすべはなかったのだ。しかしあるとき、リリーはとうとう彼に見つかってしまう。昔、二人の関係を“汚れた秘密”と呼んだラファエルに、私がひそかに産んだ息子のことを知られるわけにはいかない。突然のキスに心は動揺していても、彼女はとっさに嘘をついた。「私はリリーじゃないわ。あなたは誰…?」
元モデルの母親が自殺し、チェルシーはマスコミに追われる。父親は娘を守るため、彼女をロンドンに送り出した。一家の古い友人である、弁護士のルーカスに託したのだ。「チェルシー!本当にきみなのか?」19歳になった彼女に驚く彼の顔が、恥ずかしくて見られない。ルーカスは、幼いころからチェルシーにとって憧れの人だった。彼のペントハウスに身を寄せ、寝食をともにするようになるが、ルーカスはいつまでも彼女を子ども扱いしかしてくれない。わたしでは、あなたの恋人になれないの…?
ナースのクララは15歳で両親を失い、胸に孤独を抱え生きてきた。幼なじみの男性を心の支えにしてきたが、所詮報われない片思いだった。だがそんなクララの前に、イギリスから来た医師のティモシーが現れ、ある夜、強引に彼女の唇を奪って叶わぬ恋から目を覚まさせた。誰をも惹きつけてやまない人柄とハンサムな容貌に魅了され、いつしかクララは彼に身も心もささげていた。けれども、彼は3カ月したらまた別の地へ向かう身…。クララはここにとどまってくれることを密かに願ったが、非情にもティモシーは別れを告げ、去っていったー彼女のおなかに、わが子の命が宿っているとも知らずに。