出版社 : パレード
夜の街を流離う青年。あてもなく。何かを求めるように。朧げな電燈に照らされたそこで、哀しき殺人者の姿を見た。ナイフが彼の心臓をとらえ、僕の目の前で彼は死んだ。人が死ぬという瞬間を初めて見た。深淵に滴る朱殷にどうしようもなく惹きつけられた。その美しさに夢を見たような気がした。霞んでいた星が初めて輝いて見えたような気がした。生命の螺旋が解けるとき、僕はとろけるほどの快楽に満たされる。生きること。生きていること。たったそれだけのことが。たったそれだけのことなのに。たまらなく苦しいと感じてしまうのはなぜだろうか?これは、純粋な悪に陶酔した青年の物語。
画家の歌楽は、旅先で旧友の川東とその妻文絵に再会する。文絵は35年前に歌楽の出世作のモデルになった芸者だった。川東に再び文絵を描くよう頼まれた歌楽だが、突然川東に襲われて刺し違えてしまう。その時、キャンバスの中に描かれた文絵の顔は、まるで鬼のように変化していた…。事件の後、自身の絵と共に姿を消した文絵。
野球が必要とされない時代があったなんて、しらなかった。八月六日のことも、しらないことがいっぱいあった。ふしぎなスケッチブックがギラリと光るとき、過去と現在がつながって…。ショウと伊介の時空を超えた友情の物語。
動物公園のオオカミ放餌場で、服を着た若い女性の白骨遺体が見つかった。次々に各地で発見される同様の遺体と、ボイスレコーダーに遺された「レッド・マウンテン・ストーン」という謎めいた言葉。その裏に渦巻く現代社会の闇と因襲とは。弁理士探偵羽生絹シリーズ、ここに開幕。
現代社会を風刺する大人のための童話集。150歳のバッタと少女の友情の行方。誰にでも親切な男を夫にした女の不幸。罪を犯し路上で生活する男が起こす奇跡。心に沁みるハートフル童話15編…喜劇が悲劇に反転し、悲劇が喜劇に反転する。読者の予想を裏切るスリリングな展開に、ページをめくる手が止まらなくなるはず…。
通り過ぎる瞬間に少し目を上げ、相手の顔を見て驚いた。(え!女の子?)(「新聞少女」) 今まで見たことのない風景、これまでの日常とは違う世界が見たかった。(「忘れられない旅」) 「君の言葉は私に届きました。君の気持ちは受け取りました。ありがとう」(「伝えられた言葉」)
子供たちが謎を解くために奔走し、バスケットボールを通じて成長していく。一方、大人たちはそんな子供たちから掛け替えのない時間と大きなエネルギーを貰っている。笑い、涙、ミステリ、ほのかな恋心が詰まった物語。
高校生の拓哉は、家族5人、海の見える田舎町で仲睦まじく暮らしていた。ある日、看護師である母・明子の献身的な姿を思い出し、拓哉はネット掲示板でヘルプライン『桜の樹の下で』を立ち上げる。そのとき、苦しむ人々に「最後まで寄り添い続ける」という約束を明子と交わす。様々な相談者に寄り添う拓哉。そんな拓哉の卒業が近づいた頃、モンスター相談者の少女Aがマンションの屋上から飛び降りようとする。そして、まさにそのとき、あの日が訪れる…。月日は流れて十年後、拓哉はおにぎり屋ヤッピーで、店主の荒川とバイトのカトウと共に働きながら、耐え忍ぶ日々を送っていた。カトウの謎に触れたその日、ヤッピーでは売上盗難事件が発生し…。七転八倒から明かされるあの日の「空白の10分間」。すべてを知った拓哉がとった行動はー途切れた絆を結び直す、感動の物語。
時は平安。越後の山村で暮らす童女ヒナの前に不思議なひとが落ちてきた。そのひとの名はフェノエレーゼ。悪行三昧の末、罰として翼を封じられた天狗でした。翼を取り戻すには人間の願いを叶えなければならず。しぶしぶ旅立つフェノエレーゼに、ヒナもついていく。果たしてフェノエレーゼは、翼封じの呪いを解くことができるでしょうか。
ある事件によって伯母の養子となる梢。悲しい過去を乗り越え平穏な日常を過ごしていたある日、同年代の謙太と恋仲になるが…。交差する人間関係をそれぞれの視点で描く、「生」と「死」と「人生」の人間小説。