出版社 : ベネッセコーポレーション
家に帰ってみると、パパがいなかった。働いているママに、ちゃんと食器を洗っとくって約束したのに。骨のおれるパパを持つことは骨のおれることだー。不安から働くことができなくなった父をみつめる少年ヨアキムの日々を描く連作の第1作。1990年国際アンデルセン賞作家賞受賞作。
東京郊外に移り住んだ家族は、4年生の男の子を頭に2年生の女の子、そして幼稚園前の男の子のいる賑やかな5人家族。奔放な3人の子供達を中心に若々しい父母、近隣の人々、夕方になるとなぜか吠え出す愛犬ベルらの優しく温かな交流ー。子供達の華やぎと移りゆく自然の美しさの中に生の原風景を紡ぎ出す庄野文学の記念碑的長篇。
白ギツネの谷に生まれた4匹の仔ギツネたちは、盲目の老ギツネ、セージブラシに導かれ、生きのびる知恵を学んでいく。親元をはなれ、新しい世界へ旅立つ時が近づいていたー。アイルランド児童文学の最高傑作、感動のクライマックス。
ダンディズムと軽さのエレガンスを基調とする渋沢文学の出発を告知する表題作ほか、才能の萌芽が燦たる処女作「撲滅の賦」、功緻で〓@56F5洒な小品「錬金術的コント」の三篇を収録する。著者自らが、死の直前に発掘を予言していた最初期作品集。
息子を禅僧への道に送り出した変哲もない家族の戸惑いと型破りな師匠の尼僧をユーモラスに描き、「現代の子捨て物語」と評された第98回芥川賞受賞の表題作ほか、「トンボ眼鏡」「黒い海水着」の2篇を収録。
インドでは蛇使いに会い、グリーンランドではエスキモーに魚釣りを教え、中国では皇帝のお茶に呼ばれるー。一人のしがない釣りびとの奇想天外な旅物語「セーヌの釣りびととヨナス」。本邦初訳の中篇「いばりんぼの白馬」併録。
オックスフォード大学の学生ポール・ペニフェザーは、酒を飲んでのドンチャン騒ぎに巻きこまれて放校処分を受けたことから、うさんくさい連中ばかりいる妙な私立学校に勤めたり、売春斡旋の嫌疑で刑務所送りになったりする破目になり、やがて…。イギリス流の苦いユーモアに彩られた波瀾万丈の物語。本邦初訳。
ユダヤ民族離散の過程で死語と化していたヘブライ語を日常語として再生させ、故国再興への道を開いたエリエゼル・ベン・イェフダとその家族の苦闘を長男ベン・ツィオンの目から描いた異色のセミドキュメント。本邦初訳。
貨物用にすえられたクレーンに住みつき、女たちが誘っても、戦争が始まってさえ、そこを離れようとしなかった男の奇妙な物語「クレーン」。よりよい暮らしをもとめて旅を続ける夢想家たちの寓話「タイコたたきの夢」。寓意にあふれた物語の底に、深いペーソスをたたえたチムニクの代表作二編を収録。
強引にポーランドに侵攻したナチス・ドイツを、占星学でいう白羊宮(牡羊座)の守護星、軍神マルス(火星)になぞらえて象徴的に描いた、ホレーニアの代表作。当然のごとくナチスの逆鱗にふれ、発禁処分にもなった幻の小説。
うらぶれた場末の遊園地、「下高井戸オリンピック遊戯場」は双子の天才、藤島宙一・宙二兄弟の卓越した経営手腕により急成長を遂げ、「ゼウスガーデン」と名を変えて、ありとあらゆる欲望を吸収した巨大な快楽の王国となってゆく。果てなき人間の欲望と快楽の狂走を20世紀末から21世紀までの百年という壮大なスケールで描く快作長篇。
気位ばかり高い俗物貴族を皮肉たっぷりに描いた「陣中の邂逅」、酒で身をもちくずす天才音楽家への共感のまなざしに満ちた「アリベルト」、ヨーロッパ旅行中に目撃した死刑執行など西欧文明への批判をこめた「リュツェルン」ほか、「三つの死」「ポリクーシカ」の計5篇を厳選。文庫本初収録。
この湖にボート禁止!せっかく「旗の湖」に引っ越してきたのに、せっかくフェイの残したボートを見つけたのに……。ビルと仲間たちは、ボート禁止の張本人、アルフレッド卿の身辺を探るうちに、奇妙な事件にまきこまれてゆくー。謎解きと宝探しの縦糸に、考古学と生活描写の横糸を織りこんだトゥリーズの傑作小説。
ぼくたちの意識の迷宮を探検しよう。時代は神経痛だ。永遠の船酔いと関節のうずきの中でぼくたちは死ぬことも許されない。あらゆる言葉を駆使して自分をユートピアそのものとしようとした真理男は言葉を失ってもなお、歌う。-島田文学の集大成長篇小説。
子供は作らないと決めていたジャックとドロシーに思いもかけない赤ん坊が生まれ、理想の夫婦関係に微妙な翳が差し始める。育児疲れでヒステリックになっている妻に手を焼くジャックのもとに、仲の良い友人夫婦の妻ステラが訪れたことから…。表題作はじめ、男と女の関係を4つのヴァリエーションで描き分けた短篇集。本邦初訳。