出版社 : 叢文社
魔の深淵に金山の女娼を投げ込んだものは何か?魔の深淵に糸取り工女と恋人を追い込んだものは何か?その魔性は今もなお、大手を振って生きつづけてはいないか?多摩川の源流、おいらん淵の底から、あなたによびかける怨霊の叫び。
「われは孔明の生まれ変わりなり」…確信が官兵衛(如水)を比類なき軍師に成長させた。天下統一を目前にして信長が狂った。苦言する者を殺し大量殺人を好み猜疑心は頂点に…遂に自己制御力を失っておのれを神と信じるに至る。万民の幸せをはかる器量は秀吉一人と信じる官兵衛のもとに「朝廷の密命で明智光秀が信長反逆の機をねらっている」の情報が入った。反逆成功は信長の一瞬の隙を突く以外にない。今井宗久・嶋井宗室とはかった官兵衛は信長の隙をつくるべく本能寺の茶会を工作する。その夜、彗星が尾を曳いて流れるー。すずやかな軍師竹中半兵衛の義侠。姿を現しはじめた秀吉の陰の素顔。
光り輝く英傑宗麟が「国くずしの大砲」を先頭に九州の大半を制圧すると、なぜか一転、王国崩壊につながる「国くずしの愚挙」を重ねはじめる。離縁の命令をはねつけ、強圧を押し返して、決然と妻の砦を守り抜く火の女のたたかい-。使命観を喪失した現代の夫と妻に問う。
鎌倉に流れ込んだ何万とも知れない飢えた病者の大群。傍観するだけの幕府と朝廷。人間救済は口にするが手をこまねいているだけの宗教各派。なぜ忍性とその弟子たちだけが炎となって、「どん底びとの救済」に立ち上がったかーその原動力は?らい患者を背負い、病者を抱き、いかに治療し、いかに希望を持たせたか?天変地異、蒙古襲来の国家存亡の危機の中、幕府をいかにして動かし困窮の民を救済したか。鎌倉中期、極楽寺・悲田院・療病院、馬病舎を開き何十万の困民から父と慕われた中世日本のマザーテレサの愛(慈悲)と英知と行動力。
貧困武士の盗みの手から「いのちのタネ小豆」を守って斬殺された少年。藩の名誉のために犯人探索を続ける母親を斬らせた重臣たち-。強いて長男を切腹させ、介錯を次男に命じて、家門の繁栄をはかる非情の父親-。出世のために非道の藩命を疑いもせず強行して百姓一揆を招いた侍-。餓死する村人を守るために一揆の先頭に立ち獄門になった男の首を盗み出し、その顔を石地蔵に刻む若き唐津焼き陶工の怨念-。お上の「涙なきオキテ」と「愚かしき思想・シキタリ」がつくり出す地獄の世界をえぐる感動の名作短篇集。
中国大陸の流れがゆっくりと変質した…人々は血みどろの混乱に突入していった。先例のない暗中模索の前進、流れつく先を正確に読めるはずもなかった。しかし、歴史の潮流は人智を越えて落ちつくべき場所に中国大陸を運んでゆく。蒋介石軍の将軍の孫…共産中国の新聞人の子に生まれ、女性紅衛兵として血をたぎらせ、やがて文学への熱い夢を抱いて日本に移り住んだ著者が数奇の体験をもとに中国激動史の深層を活写。
旅の夜に妖しく迫って消えた蔭のある女のかぐわしい香りが、巨大な白鯉のひそむ沼から流れる…みいられた名人釣り侍の危機(妖鯉)/嵐に死んだはずの謎の女毛鉤師が愛児を連れて…甦る炎の夜(女毛鉤師の恋)/元禄の女は哀し…ある愛の道…(浪人竿師)/生気まさに消えなんとするとき…(釣道無心)/武家の二、三男に生きる場を与えない幕府。川釣りの技と道具づくりに活路を-。華の釣り文化を拓いた「はみだし侍とその時代」を描く入魂の釣り時代小説。
敗れて当然。勝てたら奇蹟。敗れたら日本は植民地の運命。地上最強のロシア陸軍と対決した貧乏日本の陸軍は「命知らずの将兵の勇」と「神謀奇略の児玉源太郎」に賭ける。生きた空もない明治政府。ロシア軍司令官を手玉に取る源太郎-。神謀は「神の心」に宿り、奇略は「異端の心」に宿る。
「新しい日本国は俺の頭脳から生まれる」。佐賀鍋島藩のどん底武士の家に生まれた新平は、八面六臂、彗星のように維新政府の司法卿に躍り出ると強烈な自信と学才を駆使して僅か一年で法治国家の礎をつくったが-。官僚制国家を目ざす大久保と、自由民権国家を理想として燃える新平の間の亀裂-「維新の志を忘れ腐敗の限りを尽くす巨悪」にただ一人で挑戦した新平は、佐賀の乱の鎮静のために西下、大久保によって首魁にされ、太政官法廷での大論陣の計画も空しく、暗黒裁判で梟首刑に-。現代の病根の源流に肉迫。
南部藩の村井一族を破滅させ尾去沢銅山を奪い取った大蔵大臣。貧しい密猟者を屯田兵に射殺させて楽しんだ北海道長官。朝鮮女帝閔姫を斬殺した日本壮士団の黒幕。待合政治のパイオニヤ、横浜富貴楼の勤王芸者。批判する者は地獄の北海道監獄にたたき込み、大商人と結んだ高官たちの夜ごとの酒池肉林。昨日までの志士たちのこのあさましき転落の背景は?。乱舞する怪盗悪女。神出鬼没の鹿鳴館小僧。民権の志士の北海道監獄、死の脱走。明治維新とは、一体なんだったのか?。現代日本の病根の源流に肉迫-。
日本一といわれる名人鮎師光本に友釣りの手ほどきを受け、持ち前の旺盛な探求心で短期間に秘術を身に付けたサラリーマンの中村の頭に、一瞬、セセラギの音とともにひらめいたものは-。「才能も人間性も頂点に達していながら、活かす場所のない定年退職者」を集めて「国際社会で通用する心ゆたかな人材をつくる釣り理想郷」の夢が-。
群雄割拠から統一の時代へ。武略から政略の時代へ。毛利元就の三男隆景は、強敵尼子大友大内との合戦に明け暮れの中で「歴史の底流を見抜く哲人武将」に成長する。本能寺の変-中国大返しの秀吉軍追撃を制止した隆景は、五大老に選ばれ毛利一門は全盛期に-。占領地の民に「神の軍」としたわれた治政の手法は?50倍の明の大軍を撃破したヘキテイカンの鬼謀。毛利乗っ取りをはかる秀吉との外交戦。大転換の時代を敗れることを知らずに駆け抜けた名将の生きざまに奇才の筆が迫る。