出版社 : 小学館
はじまりは、美人研究者の記者会見だった。だが次々に明らかになる論文不正はついに最悪の事態を迎える。彼女は、絶世の天才科学者か、世紀の悪女かー関係者の証言を積み重ねて浮かび上がる事件の真相。
ささやかな幸せなど、浦から離れられん跡取りたちにくれてやれ。宝暦十三年(一七六三)、周防国の小さな海村で、二人は出会った。廻船屋敷の二男坊と、網元の末っ子ー長男が家を継ぐと決まっていたその村で、跡取り以外は皆「厄介」と呼ばれた。日本初の巨大沈船引き揚げに挑んだ男の生涯ー。
小悪魔的女学生と、理知的な女教師の間で 「私は男を知りたい。その男を通して私の父を感じたい」--。容姿端麗、頭脳明晰だが、たびたび問題を起こす女学生・江波恵子。理知的で美しい女教師・橋本スミ。北国のミッション系女子校で国語教師をしている間崎慎太郎は、橋本に惹かれながらも、早熟で危うい魅力を放つ江波からも目が離せない。 江波たちの学年の修学旅行に同行することになった間崎は、旅先で橋本の義母に会うことになり……。 何度も映画化、テレビドラマ化された青春文学の金字塔にして、第1回三田文学賞に輝いた石坂洋次郎の出世作・前篇。
2万人以上の日本兵が亡くなった硫黄島で辛くも生き残り、終戦後も3年以上穴居生活を続けた片桐正俊。「投降時に岩穴に隠した日記を取りに行けることになったので、そのことを記事にしてほしい」と新聞記者である“私”に依頼する。だが、片桐はせっかく再上陸できた硫黄島で、自死してしまう。その原因を探るべく奔走する“私”は、やがて戦争が片桐の心に刻みつけた傷の深さを知ることになるー。第37回芥川賞を受賞した「硫黄島」のほか、海軍兵学校に通う若者の葛藤を描き、映画化もされた青春群像「あゝ江田島」など、戦争文学の名作短編6篇を収録。
福永乙子は、大臣就任会見の場での男社会への歯に衣着せぬ発言で一躍時の人となる。総理経験者の養女として、3回目の当選で初入閣。しかし、彼女は驚くべき過去を抱えていた。戦慄と驚愕の悪女小説!
小泉今日子さん推薦!心温まる家族の物語 人生の旅を豊かにするのは、大切な記憶。 人生の旅を愉快にするのは、大切な仲間。 旅はいつか終わっても仲間が記憶を繋いでくれる。 心が温かくなる一冊です。 ー小泉今日子 10歳の「僕」の親友は、元ボクサーで85歳の祖父、ナポレオン。ふたりは「皇帝」と「副官」としていつも行動を共にする。スーパー高齢者の祖父はボウリングでストライクを連発し、失礼なチンピラを殴り倒し、エスペラント語で会話し、ディスコミュージックに合わせノリノリで踊る。だがこの頃様子がおかしい。長年連れ添った妻ジョゼフィーヌとの離婚を一方的に決めたり、ボクサー時代のライバルのことで隠し事もあるようだ。もともと折り合いの悪い息子(「僕」の父親)への態度も、どんどん悪くなっている。やがて、そんなナポレオンに「最後の戦い」の時がやってくる……。 破天荒な最強祖父と家族の秘密、老いを、相棒である10歳の孫目線で綴る、笑って泣けるフランス発家族小説。
品川留希子は、幼い頃から後継者の道が決まっている雰囲気や、学園の方針への抵抗があり、大学卒業後は企業にSEとして就職した。でも、料理は好きだった。SNSでの発信をきっかけに、料理研究家として活動を始め、令和元年のゴールデンウィークに向けたレシピ企画を立ち上げる。一方、昭和二年。品川料理教習所の台所では、女中奉公に来て半年の山田しずえが、西洋野菜のセロリーと格闘していたー。心をほぐす“家庭料理”小説。
30歳無職、山田田助。駄女神によって人生をめちゃくちゃにされるも、救済措置でチートスキルをもらい、さらには大事な家族もできました。今日もダンジョンライフを満喫する田助だが、ふと思い立つ。「異世界みたいな魔法を使ってみたい!」だが、魔法の使い方なんて分かるわけもない。だったら教えてもらおう、異世界の魔法使いに!異世界ストアで購入したのは、緑髪が特徴的な奴隷のウェネフ。そして、諸悪の根源である駄女神シャルハラートが神の世界から落ちてきて!?一発逆転自由気ままな現代ダンジョンライフ、第二弾!
東京・根津の元団扇屋の主人・山中信介は戦時中、無実の罪で特高に捕らえられ、刑務所で終戦を迎えた。久々に自宅に戻ってみると、同居していた5人の女性に加えて2人の娘までも、GHQの将校たちに囲われてしまっていた。さらに、GHQによる「日本語のローマ字化計画」を知った信介は怒り心頭に発し、なんとか阻止しようとするが、逆に捕まってしまって…。「それでも日本人から漢字や假名を取り上げようだなんてあんまりぢゃないかしら」-。家族や家を失い、プライドもズタズタにされた日本人のなかから、七人の名花・東京セブンローズが立ち上がる。第47回菊池寛賞を受賞した名作長編の完結編。
薩摩人・谷真人と牟田口隆夫は、同い年で幼なじみ。ふたりは旧制中学に入ると、ともに海軍に強いあこがれを抱く。真人は首尾よく兵学校に合格し、どん亀と呼ばれながらも着実に力をつけていく。しかし、隆夫は軍人になれず、やがて画家の弟子に。別々の道に進んだかと思われたふたりだったが、何かに導かれたように再会し、真人の口利きで隆夫は軍属として軍艦を描く仕事を得る。そして昭和16年12月8日、真人たちは真珠湾で勝利を収め、隆夫はその光景を描くがー。モデルは真珠湾攻撃で殉死した横山正治少佐。戦時中の1942年に「朝日新聞」に連載され、第14回朝日文化賞を受賞した、“青春小説”というべき傑作に、単行本未収録の「戦時随筆」9篇と、『海軍』の後日談「軍神」を収録。
江戸深川に建つ、小さな船宿山谷屋の女王・志津は、亡き父の跡を継ぎ、大叔父の捨蔵と宿を営んでいる。ある日、船頭の百助が、川面に浮かんでいた若い女を担ぎ込んできた。生気を取り戻した女は小声で呟く。復讐してやるー。おみねと名乗る女に何があったのか?志津と捨蔵、百助は、手をかけた料理と絞った知恵で、おみねを絶望の淵から救おうと奔走する。三人をよく知る同心の後藤多一郎からの助太刀も得たが、予期せぬ困難が訪れてしまい…。辛い過去を持つ客を癒し、新しい人生への旅立ちを手伝う、温かい船宿の人々を描く、ぬくもりと感動の連作時代小説。
国際指名手配のテロリストを追い詰め、ルワンダ政府から1億円の報奨金を手に入れた藪下、淳太郎、一花の3人は、日本初の刑事事件専門調査会社「チーム・トラッカー」を立ち上げた。警察庁による捜査特別報奨金制度が適用された事件を独自に調査する。早速扉を叩いたのは、3年半前に起きた「夫婦相討ち事件」の遺族だ。死亡した男は警察官僚一族の息子で、事件は「殺し合い」ということで決着しているというー。
東京の下町で団扇屋を営んでいた山中信介は、戦時中でも体制べったりではない、ちょっと気骨のある一市民。戦火に焼かれて変わりゆく町の姿や、それでもめげずに生きている市井の人たちの様子を、ときにはユーモラスに、ときにはシニカルに日記に記していく。終戦直前、特高警察に捕まった信介が、敗戦で出所してきたところから物語は大きく動き始めるー。「別冊文藝春秋」に足かけ15年間にわたって連載され、第47回菊池寛賞を受賞した名作長編の上巻。あえて旧仮名遣いで書かれているが、読みやすさを損なうことは一切なく、“これぞ井上ひさし”という世界に没頭できる。
「天上の花」は、詩人・三好達治を、幼いころから三好にかわいがられていた著者ならではの目線で切り取ったもの。三好は前妻(佐藤春夫の姪)と別れ、朔太郎の妹・慶子と付き合うようになるが、きらびやかな生活を好む慶子と、貧しくても平和な暮らしを望む三好の愛の生活は、やがて破滅的な最後を迎えるー。第55回芥川賞候補作。「蕁麻の家」は母親が他の男のもとに走ったことが原因で、幼少期から祖父、叔母など家族みんなに疎まれ、頼みの父親からも避けられてしまう主人公の、まさに棘に囲まれているような生活を描いた秀作。第15回女流文学賞を受賞。
「ロメリア伯爵令嬢。君との婚約を破棄する」冒険の旅路の末に魔王を倒した直後、アンリ王子はそう宣言した。婚約者を失い、仲間からも見捨てられたロメリアだったが、彼女はくじけなかった。祖国にはいまだ魔王軍がはびこり、魔族に囚われ奴隷となった人たちがいたからだ。彼らを救うため、行動を開始したロメリアの前に、数々の困難が立ちはだかる。だが、彼女はアグレッシブに解決していく。「軍隊がない?地方領主を脅して砦を乗っ取りましょう」「新兵ばかりで使いものにならない?魔物を退治して経験を積ませましょう」「お金がない?商人たちと商談して、資金を出させましょう」そして、ロメリアは忠誠を誓う者たちとともに、いま出陣する!