出版社 : 小学館
理想的な医療を目指す院長や看護部長と個性豊かな患者たちが繰り広げるユーモアとペーソス溢れる物語ー。ときどき痴呆の出る元眼科医の湯浅マキ(76歳)が息子夫婦にドライブに誘われ、ウキウキ出かけてみたら、連れていかれたのは老人病院の痴呆病棟。何度も病院からの脱出を企てるが、看護師に見破られる。ときどきふつうの状態に戻るのを幸いに、看護師や入院患者たちの日々を観察し始めた彼女の目を通して痴呆病棟の内情が描かれる。
「21世紀の007」というべき新しいエンターテインメントシリーズの誕生。主人公の名、セス・コルトン、36歳。スコットランドの古城に中国人執事と二人きりで住み、身長1m82cm、マーシャルアーツで鍛えた強靱な肉体、黒い髪、整った顔立ち、鋭い眼差しをもつ。子どものころから天才的頭脳を持ち、各国語を流暢に話す。とくにコンピュータの知識と操作に優れていて、どんなに複雑なコードも解読し、軍事衛星さえもハッキングすることができる。新しい時代の“悪”に対峙するのは、セス・コルトンを中心とする“委員会”。メンバーの5人は、表向きはふつうの実業家や科学者だが、ブッシュ米大統領すら操る圧倒的な穀物メジャーたちに立ち向かう。そこに、ロシアの反動的な軍人グループ、利権をむさぼるアメリカの巨大企業、謎の天才科学者が三つどもえになってパワーゲームを繰り広げていく…。
パウエル米国国務長官の来日中、事件は起こった。「博多発東京行きのぞみ16号を乗っ取りました」-JR新幹線運行本部にかかってきた一本の電話で、史上まれに見る長い一日の幕が開けた。1000人を超える乗客を乗せた新幹線を乗っ取った犯人の要求は、100万ドルの現金と、東京拘置所に勾留中のイラク人大物テロリストとパウエルとのテレビ討論、そしてその模様を全世界放映すること。犯人の不自然な要求と、次々と講じてくる奇策に翻弄される日本警察。人質となった乗員乗客の絶望、勇気、そして愛。そして、テロリストたちが描いていた「夢」。極限状態の人間ドラマが、終章に向かって突き進んでいく。第三回小学館文庫小説賞受賞作。
平成の『魔界転生』ついに誕生!関ヶ原合戦を勝ち抜いた徳川家康は天下を束ねるため、兵法指南役・柳生宗矩に謎の連続惨殺事件の調査を命じていた。槍の名手といわれた高僧・宝蔵院胤栄の怪死、名医・秦宗巴の急病死、「洛中洛外図屏風」「酒伝童子絵巻」を著した大家・狩野家に伝わる戦慄の言い伝え、そして明智光秀の本能寺襲撃にも謎は広がり…。宗矩必死の探索の結果、おぼろげに見えた魔敵の恐るべき正体とは?危うし、宗矩!天下最強の魔敵に、柳生家秘伝の魔斬刀がうなる!!戦国を骨太に描いた書き下ろし本格伝奇時代小説。
人を刺す蚊にもなれないボウフラ、いや、ヤクザにもなれないボンクラ達がいる。何をしてもうまくいかない奴らがいる。カネの匂いを嗅ぎ回って、大阪の裏街をちょろちょろと動き回っている。仁義よりもツレよりも、大切なのは明日の我が身。金は欲しいが苦労はいらん。ここぞというときだって、腹などくくらんー。そんなあかん男たちが巻きおこす、セコくて情けない6つの事件を、優しく、ユーモラスに描いた連作短篇集の誕生。
ニューヨーク市の目の前、ハドソン川に浮かぶかつての移民の島・エリス島に、歴史記念物のパトロールで転勤したアンナ。病の癒えつつある姉の見舞いを兼ねてニューヨークを訪れた彼女は、自由の女神の島で、一人の少女が転落死したのに遭遇する。かつてアンナの恋人だったFBIのフレデリックは姉に心を移し、落ちこんでいた彼女は地下鉄で何者かに命を狙われる。四面楚歌の中で少女の死から、その真相を探ろうとする彼女が見つけた恐るべき犯罪計画とは…。全米で大人気の女流作家のアウトドア・ミステリ最新作。
マジック愛好家の少年・椎橋彬は母親の逮捕を機に家出、上京する。飢えとの戦いのなか、テレビのニュース番組で万引きGメンヘの密着取材を目にしたとき、椎橋は閃いた。マジックのタネを利用すれば、完全無欠の万引き犯になれるのでは。やがて、奇跡のような万引きを成功させる神出鬼没の万引き犯の存在が、小売業者たちを騒然とさせる。万引き稼業ひと筋で財をなすまでになった椎橋。防犯カメラをも欺く彼の「ショービジネス」に疑いを持ったのは、かつて天才少女・里見沙希からマジックの手ほどきを受けた、舛城捜査二課警部補だった…。少年が犯罪を引き起こす複雑な深層心理のからくりと、少年法の在り方を世に問いながら、巧妙なトリックの連続と息もつかせぬスピード感で一気に読ませる、ヒューマン・サスペンス・ノベルの感動作。
葉沢里美16歳。女子高生。もとい女子高専生。成績不良。やる気なし。彼氏なし。『プログラミング基礎』の授業に疲れきって今日も二限目は保健室。そこにロボット工学の担当教官・図師からの呼び出しが-放課後図師の部屋に行くと、お前には愛がないとなじられる。図師はいう「このロボットには、愛がない」。そして課題のロボットを作り直す代わりに迫られたのは、あの「高専ロボコン」への出場だった。振られた役目はドライバー(操縦士)。試合は明後日。チームメイトの男子3人は全員変なヤツ。無理だよ、無理!絶対無理!友情、根性、努力のまるで似合わない4人の熱い青春が、いま始まった。ぼくたちに足りない部品はなんだろう?チームワーク最低の落ちこぼれ4人組が、「ロボコン」=ロボットコンテストに挑む理数系の青春。同名映画ノベライズ。
『世界の中心で、愛をさけぶ』につながる〔3つの愛の物語〕。 「もしわたしが口を噤んでしまえば、わたしたちのあいだには何もなかったことになる。でもそれは確かに起こった。あの年の夏、わたしたちのあいだに起こったことを、きみにも知っておいてもらいたいんだ。」 余命いくばくもないママの病室に突如あらわれた見慣れない中年男性。彼は、ためらいながらも、やがてママとのことを話しはじめた。30年かけて、その夏はようやく終わりを迎えようとしていたー。 〈実現しなかった思いほど、美しいものはない〉。 『世界の中心で、愛をさけぶ』で奏でられたそんな切ないまでの思いが、作者の内的音楽が、耳を澄ませばここでも聴こえてくる。
嶽本野ばらが夭折の天才画家と紡ぐ恋愛小説。 デビュー以降、“乙女”を描き続けてきた嶽本野ばらの最新作は、「月刊IKKI」という青年マンガ誌に連載されたため、男性にも親しみやすい内容となっている。優柔不断な僕と、記憶をなくした彼女が織りなす恋愛風景。それを、夭折した天才画家・田仲容子の遺作を一章ごとのモチーフとして、親交の深かった著者が綴った恋愛小説全6章。巻頭では目次として、モチーフとなった作品をギャラリー風に紹介し、カラーで楽しめる。さらに、田仲氏をめぐる人々の不思議な真実を書き下ろした26ページに及ぶ「あとがき」も収録。「本編」と「あとがき」、この両者を併せて、初めてこの作品は完結する。
平成の耽美派人気作家が描く、戦慄の美肌ホラー小説! げに恐ろしきは鱗の病ー美貌の娘・楼子(たかこ)を初潮とともに襲った「鱗病」。その忌まわしき病を伝える龍鳥(たつお)家の秘密とは? 自慢の肌を冒す病の恐怖に脅える楼子は、やがて凄惨な治療法を発見するが…。澁澤龍彦に顕現した「魔道継承にこころざす異端の魂が絶えることはないのだ、と実証するかのよう」(本書解説より)と評された、平成の耽美派・嶽本野ばらの異色の美肌ホラー、待望の文庫版。
ロンドンの法律事務所の書類金庫の中からある日、外遊中のはずだった顧客スモールボーン氏の遺体が発見された。事務所で煙たがられる存在だった共同管財人の彼を、なぜ、いつ、誰が、ただでさえ人目に付く事務所の中で、それも開閉に多くの鍵を必要とする面倒きわまりない金庫に、どうやって詰め込んだのか?チャンドラーの法律顧問でもあった英国の弁護士作家が、さりげないユーモアを込めて描き出した人間パズル。二十世紀ミステリの黄金時代を代表する正統的本格派ミステリの本邦初訳登場。
南フランスで軍用ヘリコプターの設計図翻訳の仕事にありついたゲオルクは、たまたま知り合ったフランソワーズと共に幸せな日々を送る。偶然翻訳事務所を引き継いで運が向いてきたと思った彼は、ある日、想像もしなかったフランソワーズの行動を発見して動転する。不審な男たちに設計図を強奪された彼は、忽然と消息を絶ったフランソワーズの残した唯一の手がかりを追って、単身ニューヨークに飛ぶ。だがそこで彼を待っていたのは、複雑に絡み合う巨大企業と国家の影の暗闇だった!『朗読者』『ゼルプ三部作』の作家が満を持して放つ異色の現代ドイツ・サスペンス小説の傑作。グラウザー賞受賞。
警視庁捜査一課へ次々と送られてきた謎の白骨、誰が?何のために?十津川の推理が冴え渡る表題作「ある女への挽歌」。さらに、西村京太郎ワールドのもう一人の「名探偵」アメリカ帰りの“自称ハードボイルド探偵”左文字進の活躍を描く「三人目の女」「依頼人は死者」を所収。
不良少年のグループからやくざの使い走りになった貧しいイタリア移民の末裔、リコ。彼はギャングの一人として現金強奪で名をあげ、暗黒社会の中で知られた顔になる。力と策謀で仲間を出し抜き、追い落とし、ついには縄張りを握ってその頂点に立つが…。無名だったエドワード・G・ロビンソンを一躍大スターにした映画『犯罪王リコ』の原作であり、ジェイムズ・エルロイやジム・トンプソンに大きな影響を与えたクライム・ノヴェルの古典的名作。
私を衝き動かしてきた、私の生きる原動力となってきたものを、今となっては正直に告白しなければなりますまい。それは神、つまりは天主への憎しみ。この世界を創造し、摂理を生み出した全能の天主なるものが事実存在するならば、私はそのものに復讐を企てる為だけに心血を注いできたのです。神をも畏れぬ衝撃の解釈で、日本キリシタン史最大の悲劇を描いた、第16回三島由紀夫賞候補作家の書き下ろし最新作。