出版社 : 岩波書店
小説の改良を高らかに宣言した坪内逍遥。言文一致体をあみ出した二葉亭四迷。明治文学に重要な転回をもたらした二人に焦点をあてた作品集。逍遥の「細君」「春風情話」、二葉亭の「浮雲」ほか全四篇を収録。
「おれはもうおじさんではなく、おじいさんだ」--様々な思いをおきざりにして生きてきた長坂誠、65歳。その運命の歯車が或る姉弟との出会いから動き出す。おきざりにされた者など、いない。生きていくかぎり、ささやかでも希望が生まれ、その旅は続いてゆくから。吉田拓郎の名曲にのせて贈る、昭和の香り漂う令和の物語。
繊細複雑な文章と、その長大さで文学史にそびえ立つ『失われた時を求めて』。本書は、その中から最もプルースト的な文章を、岩波文庫版十四巻を全訳した編訳者が選び抜いたもの。生と死/愛と性/認識と忘却など、八つのテーマに分類した名文は、あらすじを知らずとも、どの頁からでも、気軽に楽しめる。登場人物の心理分析、人生と芸術をめぐる省察、比喩を駆使した描写を神髄とするプルーストの珠玉の文章には、世界の見方を一新することばが煌めく。
「この車に乗ったら最後、お前の身体は、一から十まで作り変えられる」。師に見出され殺しの道を歩みはじめた彼女は、死と隣り合わせの最終訓練に臨む。人を破壊する術を身につけることは、人として、女としての「普通」の一生を粉々にすることー。伝説の殺し屋誕生を濃密に描き出す、戦慄と陶酔ほとばしる『破果』外伝。
一九八四年、台北。駆け出しの画家、阿政のもとに奇妙な依頼が持ち込まれた。古い絵画の修復の仕事だが、作者は明かせないという。阿政が新聞記者の方燕と調査に乗り出すと、戦後長い間歴史から抹消されていた画家・陳澄波の存在が浮かびあがり…。日本統治時代に生まれ、台湾近代美術の先駆者となった画家の生涯をたどる歴史小説。第3回台湾歴史小説賞大賞受賞。
「わたしの家も、この街も、置いていけばゴミになるの?」 「ゴミ」「星」「林檎」……戦争の体験は人が言葉に抱く意味を変えてしまった。ウクライナを代表する詩人が避難者の証言を聴き取り、77の単語と物語で構成した文芸ドキュメント。ロバート キャンベルが現地を訪ねて思索した手記とともに、自ら翻訳して紹介。 旅立ちの前に ロバートキャンベル 戦争語彙集ーーオスタップ・スリヴィンスキー作/ロバートキャンベル訳 序 バス スモモの木 おばあちゃん 痛み 稲妻 妊娠 バスタブ 熊 結婚式 通り キノコ 雷 呼出音 「遠い」と「近い」 我が家 シャワー 住宅 生 土 星 歯 身の上話 食べもの ココア カレンダー カナリア アヒルの子 入場券 部屋 猫 鍵 色彩 お馬さん 恋愛 きれいなもの チョーク 血 銃弾 ランプ 手紙 愛 マドレーヌ 焼き網 都会 お祈り 空 ニュース 脚 ナンバープレート 洞窟 地下室 プラハ お別れ ラジオ 悦び 魚 自由 倉庫 ゴミ 夢 スイーツ 太陽 歌 記事 立て看板 禁句 戦車 動物 テトリス 沈黙 身体 パン生地 ケーキ 遺体 しっぽ 数 林檎 戦争のなかの言葉への旅ーーロバートキャンベル 一 列車から、プラットフォームに降り立つーー行き交う人々と言葉 二 人形劇場の舞台袖で、身をすくめるーー言葉の意味が変わるとき 三 階段教室で、文学をめぐる話を聞くーー断片としての言葉 四 ブチャの団地で、屋上から見えたものーー引き裂かれたランドスケープ 五 シェルターのなか、日々をおくるーーとどまる空間で、結び合う人々 六 あかるい部屋で、壁に立てかけられた絵を見るーー破壊と花作り 環のまわるが如く ロバートキャンベル 「戦争語彙集」原書謝辞